持続可能な明るい未来をつくるために〜私の取り組み〜

コンサルタント会社勤務
田岡真由美さん

 田岡さんは高知県出身。愛媛大学農学部を卒業後、青年海外協力隊員 (職種:植林)としてタイに2年10ヶ月間赴任。その後、今度は短期ボランティア(村落開発普及員)として再びタイで活動。日本に帰国後は高知市にある総合コンサルタント会社の(株)相愛で地域活性化のプロジェクトに携わっています。高知工科大学大学院起業家コース修了。

高知県で地域を元気にする活動に取り組んでいる田岡真由美さんに協力隊の経験が現在の活動にどのように活かされているのか、お話を伺いました。

Q.田岡さんが行っている地域活性化の取り組みを教えてください。

A.建設業や地域づくりに関するコンサルタント会社に勤めています。今は新規事業の立ち上げのプロジェクトリーダーをしていますが、現在、本業の建設業は非常に厳しい状況にあります。そのため、新規事業には会社の存続が掛かっていると言っても過言ではありません。
 
 そんな厳しい状況の中で、新規事業を考えるときの一番のポイントは、そのプロジェクトが時流にのっていること、さらには時流にのった上で地域が良い方向に向かうように方向付けができるかという点かと思います。そして、構想するプロジェクトに、どれだけの人が参画できるかについては、そのコンセプトが重要になってきます。コンセプトを理解してもらうためには、自分たちが考えていることや思いをどうやって表現し伝えていくかが、鍵を握っています。

いずれにしても、新しいものを提案して、皆がそれを理解し、それぞれがその役割を認識して、進んでいくことができればそこにイノベーションを起こすことができるのです。

Q.具体的な事業はどのようなものがありますか。

A.私が関わっている事業に森エネルギー事業とジオパーク事業があります。
新規事業といってもゼロの状態から考えていくわけではないです。どこの地域でも人々が生活していく上でどうしても「困った、どうしよう」ということが存在します。この「どうしよう」を解決する手段が、新規事業の立ち上げに繋がります。つまり、どの分野でもそうですがニーズがあり、プロジェクトになりうるのです。先ほど時流の話をしましたが、小さな会社が新規事業を実施するためには活動資金を調達してくる必要性があります。さらに、当然ながら企業という立場でプロジェクトを行う以上は収益も考えなくてはいけません。

 森エネルギー事業は「農家の燃料代が大変で、今後も農業を続けていきたいけれどどうすればよいのか」という視点から始まりました。この事業は近年高騰が続いている化石燃料を使い続けるよりも、余っている木材などの資源をエネルギーとして活用し、持続可能な地域づくりを目指そうというものです。
最近の動きとしては、高知バイオマスファームという農事組合法人の立ち上げに関わりました。そこでは木質ペレットと呼ばれる木材を燃料として活用し、低炭素施設園芸農業を行っています。以前はピーマン30gを作るのに化石燃料(重油)80gが必要だったそうですが、今は木質燃料で様々な野菜や花を生産しに二酸化炭素も削減しています。

 当初、農家の人たちを説得するには、大変な労力を要しました。しかし、思いが伝わり、将来性のある事業であることを理解してもらってからは、事業がどんどん進むようになりました。しかし、一方で変わったことや今までと違う取り組みをするようになった農家のグループと他の農家とのズレが生じるなど、農家さんの方でも色々な苦労があるようで、事業の推進は一筋縄ではいかないと実感しています。
 しかし、そんな農家さんの活動が昨年の“ストップ温暖化一村一品大作戦”という全国大会で銀賞(全国第3位)を受賞するという快挙を成し遂げました。苦労も多いのですが、一般の方から認められることは、頑張る農家さんの自信と誇りにつながり、私たちも頑張ってやってきて良かったという確信を持つことができました。
また、さらに今年と来年にかけては環境省の自主参加型排出量取引制度での取り組みを進めています。農業部門では初めて採択ということで、農家さんが今年頑張って削減した二酸化炭素を売買することが出来る日もすぐ、という段階にきています。
 昔のコンサルタントというのは調査と提言までだったのですが、今はそれだけでは仕事になりません。私たちは調査から提言、そして実現のところまで関わっています。

 もう一つは、ジオパーク事業という地質資源を活かした地域づくりのプロジェクトです。今まであまり注目されていなかった地質という資源を中心にして、地域の様々な資源を見直し、それを教育や観光と結び付けて、地元に人を呼び込み、地域を活性化していこうという取り組みです。
 これは元々「地域が衰退している。どうすれば地域に人が集まるのか。」という視点から始まりました。地元自治体なども巻き込んでいったのですが、今では自治体のほうが盛り上がっています。

 どんなプロジェクトもそうですが、プロジェクトを始めるときにはまず1枚の紙に絵を描くようにしています。それはそのプロジェクトによって関わる人や地域が将来どうなるのかを一目で分かるように描いたプロジェクトの全体図で、それを見た人は自分がプロジェクトのどこに位置するのかがすぐに分かるようになっています。
 そして、関わる皆さんに賛同し動いてもらうためには、提案するビジョンを関係者といかに共有するかがポイントになってきます。プロジェクトを実現するためには地域やNPO、企業、大学ひいては社内などいろいろな人の協力が必要で、まずはコミュニケーションを図り、納得してもらわなければなりません。当然ながら熱意を持って説得にあたりますが、それだけでは不十分です。大事なのは関わってくれる人々に「成功のイメージ」や「将来、自分がどのようなライフスタイルになるのか」を持ってもらうことだと思います。そのためにできるだけ、具体的なビジョンを示すようにしています。例えば「収入を何%upさせる」「観光客を何万人入れる」とか、わかり易いものを考えます。そして何度も何度も関わり話し合っていくうちに、ビジョンを共通理解できた人と確実に手をつないでいけるようになり、皆が役割を持って動いていけるようになるのです。根気だけでなく、あきらめない事が大事になってきます。

 実は今、私がやっていることはタイのときと変わりません。協力隊としてタイで活動していたときと同じ気持ちで仕事をしています。違うのは国と言葉だけなのです。

Q.地域活性化に取り組むようになったのはなぜですか。

A.もともと、興味はありましたが、本当に文字通り紙1枚からプロジェクトを始める経験をさせてもらったことが一番大きいです。最初に描いた絵はプロジェクトの立ち上げ前に、皆さんを説得して回った時から何年も何度も使い見直しています。今後も、持続可能な地球に住む私たちが幸せに暮らせるプロジェクトを作りたいです。
 そうはいっても、順風満帆ではありません。予期せぬ失敗はどうしてもあります。小さな失敗ももちろんあります。でも、あまり悩まないようにしています。自分で解決できないときは周りの人から解決方法を学べばよいと考えています。失敗から何か生まれることもありますから。私はこけてもただじゃ起きないよう心がけています。
 また、最近では少し年もとり、1スタッフからプロジェクトリーダーという立場に立つようになりました。その中で、わかってきたことがいろいろあります。それは一緒に仕事をしていく上で大事な存在はどういう人かということです。色々な人がいますが、前向きな考え方ができるポジティブな人、あきらめずに物事を進めることができる粘り強い人、私も随分助けられました。また、自分もそうありたいな、と思っています。そういった人が、今のチームには何人もいて、一緒に仕事をしていても大変心強く、同志と思っています。協力隊時代でも同じ志を持つ人が多く、そんな場面が何度もあったことを記憶しています。

 今でこそこのような感じですが、私にもコンプレックスの塊のような時代があり、うじうじ悩むようなところがありました。そんな自分にとってタイという社会を経験できたことは非常に有難かったです。タイという国はいろいろなことに寛容な国で、様々な価値観が共存する社会でした。そこで多様な価値観に触れ、たくさんの経験をすることによって吹っ切れました。私はタイを経験することによりいろいろなことにチャレンジできるようになったと思っています。

 タイから帰国して、就職活動中に人材登録センターの紹介で、今の会社に出会いました。決め手は会社の方針が私の考えていることと近かったことです。ただ、入社当初は総務や営業など、希望の部署での仕事ではありませんでした。しかし、そんな会社での経験が、着実に今の自分の糧となっていることがわかります。
 いずれにしても、もともと私は環境に関する活動に関心がありました。高校生のときに環境問題が大きく取り上げられ、自然との関わりについて考えるようになりました。それで大学は農学部を選び、卒業後は海外に行きたかったので、せっかくだから大学で学んだことを活かそうと思い、植林という職種がある協力隊に参加することになりました。しかし、海外で働くことは子どものときからの夢で、小学校の文集にも書いていたくらいです。まさにその思いを協力隊で実現できたということになるかと思います。

Q.最後に

A.そんな私も現在は、2児(4歳と2歳の男の子)の母となり、ワークライフバランスの難しさに頭を痛める日々を送っています。夫婦だけでは手が足らず両親を巻き込んだ慌しい子育てで、母親としての評価にはかなり疑問符が打たれそうな状況なのですが・・。日々の生活の中で、子どもに夢を持たせることの重要性を感じています。夢、特に子どものときの夢というのは本当に大事だと思っています。子ども達もすぐ大きくなるのですが、成長していく中で子どものときに感じた思いをいつも大切にして欲しいと考えています。それが将来に繋がっていくのですから。

【画像】

タイで活動していたころの田岡さん

【画像】

現地の人と植林に取り組む

【画像】

オフィスでの田岡さん

【画像】

皆で提案するワークショップ

【画像】

田岡さんが勤める環境循環型のオフィス

【画像】

高知大学の国際協力論で講演