「だれもが暮らしやすい香川を目指して」

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香川県国際交流協会 職員
谷 祐喜子さん

 谷さんは、高松市一宮町出身。2003年から2005年まで青年海外協力隊員として、タイのカンチャナブリ県にあるラチャパット大学で日本語指導を中心とする活動を行っていました。帰国後は、3年間香川県のJICA国際協力推進員として香川県の市民の国際協力への参加促進の仕事をしました。2009年4月からは香川県国際交流協会で在住外国人に対する日本語支援や多文化共生の問題に関わる業務を担当しています。近年、注目されることが多い多文化共生の問題。香川県でも、在住外国人の数は年々増加しています。香川に暮らす全ての人にとって暮らしやすい環境作りを目指す谷さん。どんな思いで、どんな活動を行っているのか、お話を伺いました。

Q.なぜ現在の仕事に就こうと考えたのですか。

 協力隊に参加する前は海外で日本語を教えたいと考えていましたが、実際にタイで生活する中で、故郷である香川県をふりかえる機会が増え、自分が生まれ育った地域のために役立ちたいという思いが生まれました。JICA国際協力推進員の任期中、NGOやボランティア団体で熱心に活動する人々と出会い、地域を元気にするため、自分にできることをしていきたいという気持ちが一層強くなっていきました。また、香川県在住の外国籍の生徒への学習支援に携わる中で、日本での新しい環境に適応することを求められている外国人の子どもたちの現状を目の当たりにし、在住外国人支援や多文化共生の問題に対して強い関心を持つようになりました。同時に、すぐ身近なところにも、外国の方たちから必要とされる場があることに気づきました。これまでの経験を活かしながら、少しでもそうしたニーズに応えられればという思いで、現在の仕事に就いています。こう思えるようになったのも、協力隊員としての2年間があったからだと思います。

Q.お仕事の内容について教えてください。

 主に在住外国人の日本語支援に関わる事業のコーディネートを行っています。具体的には、日本語講座の企画・運営、「外国人による日本語弁論大会」の開催、「日本語指導ボランティア」の派遣、また、日本語指導ボランティアの方々を対象とした養成講座の実施、といった業務があります。

Q.「日本語指導ボランティア」とはどういうものですか。

 香川県国際交流協会が実施している「通訳等ボランティア派遣制度」の一つで、個人や機関の要請に基づき日本語指導や通訳を行うためのボランティアを派遣するというものです。現在、297人の方にボランティアとしてご登録いただいています(平成22年3月現在)。

Q.仕事上で、現在、特に力を入れていることはありますか。

 今年度は新しい事業が2つあるので、現在はその準備に力を入れています。1つは、日本語支援を必要とする子どもたちを対象とする事業で、夏休みや春休みに集中日本語教室を開講します。在住外国人の数が増えるに伴い、学齢期の子どもの数も増えています。こうした子どもたちが日本の学校の中で必要な教育を受けるには、周囲からのサポートが不可欠です。授業や宿題に必要な日本語など、大人とは異なったニーズがあります。既に在学している子どもはもちろん、春休みや夏休み明けに新たに日本の学校に入る子どもたちの負担も軽減することができればと思っています。
 もう1つの新事業は、「やさしい日本語」普及事業です。外国人と話をするには、外国語ができないと、と考えがちですが、易しくわかりやすい日本語を使うことで、思っているよりずっと多くのことを伝えることができます。実際、私は、初級クラスを含め、日本語講座の受付を日本語で行っています。通訳が必要な場合もありますが、7〜8割は「やさしい日本語」で対応することが可能です。この事業では、「やさしい日本語」の可能性に気づき、実際に使ってみていただく機会を提供するためのセミナーやワークショップを開催する予定です。実は、「やさしい日本語」が役立つのは外国人にとってばかりではありません。行政の文章など、難解な言葉の羅列に頭を悩ませた経験がある方も多いのではないでしょうか。ある病院での受付システムを「やさしい日本語」で表示したところ、高齢者や子どもにもわかりやすいと喜ばれたという例があります。外国人を含め、地域に暮らす全ての人にとってわかりやすい「やさしい日本語」について、より多くの方に知っていただけたらと思っています。

Q.やりがいや喜びを感じるのはどんなときですか。

 外国籍をもつ、あるいは、日本語支援を必要とする子供たちと関わる中で、子どもたちの成長や笑顔に出会えることにやりがいを感じます。子どもたちの支援に関わる責任は大きく、1年、2年という短い期間ではなく、子どもたちの人生を通じて寄り添っていかなければという思いがあります。その分、子どもたちと分かち合える喜びも大きいのだと思います。
 また、コーディネーターとして「人と人とをつなぐ」喜びもあります。以前、ある外国の方が日本語を教えてくれる人を探していたので、日本語指導ボランティアに登録されている方をご紹介しました。後日、その方から、日本語の勉強ができるようになったばかりでなく、日本での生活に関する相談ができる友人が見つかったという嬉しい連絡をいただきました。支援を必要としている人と支援したいという気持ちや必要なスキルを持っている人との「出会い」に関わることができるのも、この仕事の大きな魅力です。

Q.仕事をする上で、悩んでいることや苦労していることはありますか。

 在住外国人にとって「日本語」は大きな問題ですが、必要な支援については十分に理解されているとはいえません。学校現場などで言葉の問題があるときには、すぐに「通訳」が必要と考えられ、「外国語ができる人」が求められがちです。もちろん、通訳が必要な場面はたくさんあります。しかし、支援を受ける人の状況によって、通訳ではなく、日本語学習や教科学習への支援がより重要な場合もあります。「外国語としての日本語」「学校での学習内容を十分に身につけるための日本語」といったものは、まだまだ認識されていません。どんな支援が必要とされているかに周囲が気付き、適切な支援を提供できるような環境を作っていく必要性を強く感じます。
 また、子どもを取り巻く多文化共生の問題については、教育委員会、教師、児童・生徒、保護者、ボランティアなどの関係者がそれぞれの現場で個別に努力していることが多く、関係者間の連携を図りたくても、多くの場合、情報共有さえ十分に行われていない状態です。昨年度、ボランティア団体である日本語サークル「わ」の会が高松市との連携事業で、学校現場にボランティアを派遣し、児童・生徒の日本語支援を行うという実績が生まれました。これは、県内初めての試みであり、この事業によって一部の関係者間につながりが生まれてきているように見受けられます。まだまだ課題は山積みですが、こうした動きをより多くの人に知ってもらい、関係者同士のつながりを強化していくとともに、地域全体の理解を促進していけるよう努力していかなければならないと感じています。

Q.これからの抱負を教えてください。

コーディネーターとしての力を伸ばし、多文化共生の問題に関わる人たちが活動しやすい環境作りに取り組んでいきたいと思っています。そのためには、自分自身のネットワークを広げることが重要なので、今後、いろいろな分野のいろいろな人と積極的に交流していきたいです。

Q.四国の方へのメッセージをお願いします。

日本語の教え方がわからないから、法律などの専門的知識がないから、とボランティアに参加することをためらう方もいらっしゃいますが、多くの在住外国人の方が必要としているのは、日常生活に関するサポートです。買い物の仕方や子育ての悩みなど、日本で生活する社会人として支援を提供できる分野がきっとあるはずです。日本語や自分自身の生活経験を活かして、異なる文化的背景を持つ人々と交流することは、楽しく、生活を豊かにする可能性があるものだと思います。これを機に新たな一歩を踏み出してみませんか。

谷さんは、現在も日本語ボランティアサークル「わ」の会のボランティアの一人として休日を利用して、小学校で日本語支援を行っています。日本語教育に対する情熱とこれまでの経験を活かしながら、人と人、心と心をつなぐコーディネーターとして、今後一層活躍されることを期待しています!

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外国人による日本語弁論大会

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日本語ボランティア養成講座

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日本語講座教師との打ち合わせ

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日本語講座の様子

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アイパル事務室にて