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【画像】小澤 大成 准教授

国立大学法人 鳴門教育大学 教員教育国際協力国際協力センター
小澤 大成 准教授

 小澤大成(オザワ ヒロアキ)准教授は、JICA四国と鳴門教育大学が海外の理数科教師・教育省担当者を招いて行なっている授業改善・教員指導技術向上の研修コースの運営・指導で活躍されています。研修の授業時間外にもコンピュータのサポートを行うなど、研修員の鳴門教育大学滞在中のヘルプデスク的存在でもあります。
 もともと岩石学がご専門ですが、南アフリカ共和国、アフガニスタン、カメルーンへもJICA専門家として派遣された経験を持ち、エチオピア、モザンビーク、中東地域諸国、仏語圏アフリカ諸国等の研修コースを担当してきました。近年は国際理解教育にも取り組んで国際協力の経験を伝えています。

Q:海外の教育協力に携わるようになったきっかけは?

 大学院では地質学を専攻し、海洋地域の火山体深部のマグマだまりについて研究していました。1億5千万年前に日本列島に付加した地質帯を対象に野外調査を行い、採取した岩石を顕微鏡で観察したり、岩石の化学組成を分析したりしていました。
 1993年に鳴門教育大学に来てからは地学分野の理科教育を教えていましたが、大学が南アフリカ共和国理数科教員の研修受入および技術協力プロジェクトに1998年より参加したのをきっかけに私も国際教育協力に関わることになりました。

Q:初めての海外の教育現場での異文化体験は、どのようなものでしたか?

 南アの教育現場での初めての体験は、物理および地学関連の教材紹介ワークショップ支援を目的とした専門家派遣です。
 現職教員向けに“ピンホールカメラ”や“レンズ”などを紹介しました。その理論は理解されているのかもしれませんが、実際にレンズを操作したり、科学的な原理を図示化して考察したり、それを使って1時間の授業を組み立てる、といったことについては経験が薄いようで、教材の紹介ではすぐに授業改善にはつながらないことに、日本の現職教員相手の研修との大きなギャップを感じました。

Q:研修コースはどのように企画するのですか?

 研修員それぞれの今までの経験や現在の役職によって、研修で学びたい内容が異なるため、それらを把握し、準備するのに苦労しています。
 可能な限り研修実施前に現地の教育事情を視察したり、JICA在外事務所の研修員派遣担当者との連絡を密にして事前情報を収集したりしながら、研修の焦点を絞るようにしています。
 近年は、生徒中心型授業を教える現職教員研修システムへのニーズが高いです。大学での講義の他、徳島県教育委員会と連携し、学校の授業や総合教育センターでの教員研修の視察を通じて、研修員には現地に適応可能な改善計画を作ってもらいます。

Q:これまでのJICA研修事業とのかかわりの中で、特に思い出に残っているエピソードは?

 2008年度に仏語圏アフリカ諸国を対象に研究授業視察、授業検討会の視察を通じて、「校内研修」を体験的に学んでもらいました。
 カメルーンから参加した教育省担当者が帰国後、研修で学んだ内容を踏まえ初等学校での授業研究をパイロット事業として実施しました。私もJICA四国からの派遣で、実際に現地に赴き授業研究会に参加する機会を得ました。研修で伝えた内容に忠実にしたがって授業研究会が運営されていて現地で教育の質向上に貢献し始めている様を実際に見ることができ、やって本当によかったなと思いました。

Q:海外の教育関係者・教員の方々を受け入れる際に心がけている点は?

 日本の教育システムや教授法を学んでもらい、自らの国の状況にあったところを取り入れてもらおうとしています。日本の教育システムは、日本の歴史や文化等の環境の中で機能しているもので、そのままの形で現地に適用できるわけではありません。例えば日本の教育現場で実施されている学校間の人事異動は、途上国ではそのシステム自体がないところも多いです。

Q:大学での本業である教員養成での指導において、研修事業の経験がいかされている点とは?

 鳴門教育大学では、大学院に多くの現職教員を受け入れて再研修を行っていますが、同じ成人相手の研修ということでJICA研修事業の経験が役立っています。また研修コースで研修員が模擬授業をする際には、出来る限り学部学生や大学院生も生徒役として参加させ、日本にいながら海外の授業を体験する機会を設け、教職という専門を通じた異文化とのふれ合いの機会としています。 
 教育という営みには国境がないこと、また日本で体験したあるいは実施している教育と比較して双方の優れた点/学ぶべき点を知ることにより、客観的に日本の教育を見ることができました。現職教員あるいは教員志望の学生にとって貴重な機会となっています。

Q:海外の教育現場の研究や指導など、今後の先生ご自身やセンター事業の広がりについて教えてください。

 途上国における教育の質の向上、特に授業改善に貢献していきたいと考えています。日本の学校現場で広く実践されている授業研究といった教員同士の学び合いを紹介しながら、その国にあった教育改善のあり方を現地の教育関係者と一緒に開発していきたいです。

 鳴門教育大学が持つ豊富な国際協力経験を社会に還元することを目的とした「教員教育国際協力センター」が2005年に設立されてからは、海外教育協力経験をもとにシンポジウム・ワークショップを実施しています。今後日本はますます海外との文化的経済的結びつきを強めていくことが想定され、子供たちは将来異文化を持った人々と共生する事が求められています。教員への働きかけを通じて、異なる考え方を持っている人々の考えに耳を傾け、また自分たちの考えを伝えることができる子供を育てるにはどうしたらよいか、考えていきたいです。

 鳴門教育大学「教員教育国際協力センター」は、国内外での国際教育のご経験をいかし、毎年“国際教育オープンフォーラム”を実施しています。今年度は、【国際理解教育】をキーワードとして、教員や教員養成大学、国際協力実施団体、地域NGOなどさまざまな立場で国際理解教育を実践している方を迎えてのパネルディスカッションを予定しています。ぜひご参加ください。

関連リンク
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南アフリカ共和国の研修員と、鳴門教育大学近くの露頭での地質学の実習。

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文部省「国際協力イニシアティブ」事業の一環で、ウガンダの初等学校における授業研究を支援。研究授業後の授業検討会の一こま。手前2人が授業を実施した教員。

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JICAカウンターパート研修の実施前に行ったエチオピア国オロミア州の教育事情調査。オロミア州教育局にて。

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仏語圏アフリカ研修のフォローアップを目的としたカメルーンへの専門家派遣。初等学校における研究授業の観察と研修教材用ビデオを収録。

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仏語圏アフリカ研修のフォローアップを目的としたカメルーンへの専門家派遣。研究授業後の授業検討会の一こま。

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南アフリカ共和国対象研修の一こま。現地理科授業(地学分野)における課題を議論。

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センター主催でJICAシニア海外ボランティアOB/OG(教育分野)を迎えてのパネルディスカッションを実施。司会進行役を担当。(右端が小澤准教授)