ハイチの経験が国際協力の原動力に

【画像】宮本佳子さん

松山赤十字病院 薬剤師
宮本佳子さん

 今年1月12日に死者22万人、被災者は300万人以上の壊滅的な被害をもたらしたハイチ大地震。発生から約7ヵ月後の8月、宮本佳子さんは、日本赤十字社の国際救援・開発協力要員として、約1ヶ月間、ハイチでの地震復興活動に携われました。薬剤師として病院でご勤務されながら、国際協力にも携わる宮本さんのエネルギー溢れる活動についてお話を伺いました。

Q:国際救援・開発協力要員に登録したきっかけは?

 私が青年海外協力隊の薬剤師隊員として、パキスタン・イスラム共和国に赴任したのは、パキスタンのカシミール地方で起こった大地震の約1年半後でした。パキスタンでの自分の活動は直接、地震復興に関わるものではなかったのですが、赴任地が同じであった理学療法士隊員は、地震から1年半経った後も後遺症に苦しむ患者に対するケアを行なっており、地震後の悲惨な現状を目にすることが多くありました。赴任中にも地震や洪水がありましたが、惨状をテレビで目にしても、同じ国にいるのに何も出来ませんでした。自分にも何か出来ないか、と悶々とする時期もあったため、現職に復帰後、日本赤十字社の国際救援・開発協力要員への登録を決意しました。

Q.ハイチで行なった具体的な活動内容を教えてください。

 ハイチに着任した時も、地震から約7ヶ月が経過していましたが、約100万人がテントでの避難生活を強いられていました。現地を見てみると、思っていた以上に衛生状態は悪く、瓦礫も依然山積みで、全く復興は進んでいませんでした。私は震源地に近いカルフールという街にあるドイツ赤十字の病院キャンプで約1ヶ月活動しました。主に、薬局テントで医薬品・外科資材などの管理や調達を行いました。また、薬局スタッフに対し、エクセルでの医薬品管理方法を指導し、キャパシティービルディングにも努めました。
 活動が長期化するつれ、医薬品・外科資材、血液などの不足が大変深刻な状況になり、ハイチ中を廻って医薬品・資材調達や情報収集も行いました。寄贈された大量の医薬品の箱が積み上がった中から、必要な医薬品を捜し出したり、嵐によってテントが水浸しの中、入院患者さんを移動させたりと、様々な困難にも直面しました。しかし、チームワークと、他機関や他国赤十字社との連携を図ることで、乗り切ることが出来ました。そして何よりも、協力隊経験があったからこそ、現地スタッフともすぐに打ち解けることができ、即戦力として動くことが出来たと感じています。

Q.ハイチでの地震復興活動を行う上で、気を付けたのはどんな点ですか?

 現地の人々は、多くの友人や、親族を亡くしています。そのような中、40度を超す暑いテントの中で、頑張って働いていました。まず、彼らの心情を理解し、同じ目線で話をするように心がけました。そして、現地の事は彼らの方がよく知っているので、彼らに意見を聞き、その中でより良い方法を提案し、私の帰国後も彼らだけで活動を持続できるように心がけました。

Q:ハイチでの国際協力活動の中で、特に思い出に残っているエピソードは?

 ハイチの避難民キャンプの若者たちが、病院キャンプ内で、ダンスとアクロバットショーを披露してくれました。壊れかけた体育館で、みな裸足で毎日練習していたそうです。スタッフは、過酷な状況で疲労していましたが、大変いい気分転換になり、また、避難民の若者たちから、エネルギーを貰うことが出来ました。

Q:現在勤務されている病院で、外国籍の方の対応をすることはありますか?その際に心がけている点は?

 大学が近くにあるので、留学生など外国の方も多く来院されます。お薬の効能や飲み方、吸入薬の使い方説明などを行っています。外国で病気になると、大変不安だと思うので、薬以外のことでも、何でも相談してくださいねとお伝えしています。診察に同行したり、館内の案内をしたりすることもあります。また、薬の袋には日本語しか書かれていないので、英語で簡単に用法や効能を書いたりしています。

Q.今後も国際救援・開発協力要員として活動されますか?

 今回初めての派遣でしたが、まだまだ勉強不足であると痛感しました。今後、パキスタン・ハイチに派遣された日赤の薬剤師要員間で、知識と経験の共有をし、講師を招いて勉強会などを開催する予定です。また、職場の協力・理解なしには実現しないことなので、まずは日常業務に励みつつ、今後の派遣に備えたいと思っています。

Q.これからの抱負を教えてください。

 パキスタンでの協力隊経験に加え、ハイチでの赤十字の活動に参加することで、途上国や被災地の現状を知ることができました。毎回、現地の人々から逆に学ぶことが多く、貴重な経験をさせて頂いています。これらの経験を、多くの人に伝えることが出来たらと思っています。また、経験を確かな知識にすべく、勉強したいと思っています。

 これらの経験を多くの人に伝えることが出来たら、とおっしゃる宮本さん。ハイチから戻られ、職場の方々に向けての講演会、子ども達への出前講座の講師なども務めてくださっています。ご多忙かと思いますが、今後のご活躍も期待しています!

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パキスタンの小児病院薬局にて。倉庫管理者と共に、医薬品の在庫数を、ビンカードに記入している。

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パキスタンのカウンターパートの薬剤師達と共に。

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実習を終えた薬学生と共に。病棟におけるケーススタディや、講義などを行った。

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ハイチにて国際赤十字赤新月連盟の倉庫より、医薬品を受領した。連盟のメディカルロジスティシャン、日赤要員、現地スタッフと共に。

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ドイツ赤十字フィールド病院、シニアメディカルオフィサー、ヘッドナースと共に。日赤要員の視察を終えて。

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薬局テント内にて現地スタッフにパソコン指導。受領した医薬品をエクセルに入力している。

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日本でJICA出前講座の講師を行った。