境界線のない問題に、世界中の仲間と共に向かって行く!〜ゼロ・ウェイストで持続可能な社会を目指して〜

【画像】藤井 園苗さん

NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー 事務局長
藤井 園苗さん

 「おばあちゃんが葉っぱを売っている町」と言えば、ご存知の人も多いでしょう。日本料理を美しく彩る季節の葉や花や実を販売する「葉っぱビジネス」で、今や全国から注目を集めている徳島県上勝町。
 その上勝町は持続可能な地域社会の実現を目指して、様々な取り組みを行なっています。この葉っぱビジネスと並んで、上勝町の取り組みで注目されているゴミの34分別。「野焼き」から「34分別」へとゴミ処理を転換し、日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言*を行いました。日本の一般廃棄物のリサイクル率が19%に過ぎないところ、上勝町ではゴミを34種類に分別し、リサイクル率80%を達成しています。
 今回は、中国四川省でゴミ分別の取り組みを支援するため、今年度から3ヵ年の予定でJICA草の根技術協力事業を実施するNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー事務局長の藤井園苗(ふじい そのえ)さんにお話を伺いました。

思いを支えるもの 吉野川にあり

 出身は徳島県藍住町です。大学進学後からはずっと徳島を離れて仕事に就いていましたが、漠然と頭の片隅に「社会貢献する場はないだろうか」という考えがありました。そういうことを考えていた当時はおりしも、地球温暖化・CO2削減(チームマイナス6%)、リサイクル活動など、「環境」をキーワードにメディアでは盛んに取り上げられていました。「自分もこの分野でなら、活動の場を見出すことができるかも」と思ったのが、環境を考える最初のきっかけでした。
 「社会貢献する場」はやはり故郷の徳島県だと。よくよく考えたら、幼い頃自分の生活の一部としてあった吉野川。きれいであることが当たり前の川が自分の目の前にある。都会生活に何か足りないものを感じていたのは、そんな徳島では当たり前にあった、山、川、そして暖かい人たちでした。環境分野で活動の場を、と自然と心が向かっていったのは、そんな故郷の原風景が心の奥底にあったからだと思います。
 前職を退職し、徳島に戻ってからは福祉関係のNPOで働いていました。ある日、広告にゼロ・ウェイストアカデミーの人材募集の記事を見つけました。それが今の事務局長ポストの募集だったわけです。前任にあたる当時の事務局長とも話す機会があり、応募を決め、現在に到っています。

社会が「よくなること」とはどういう状態か

 上勝町には町の人口よりも多くの視察者が訪れます。国内からの視察者は、自治体職員の方や議員の先生方、民間業者の方など様々です。また、海外からの視察者も多いです。(JICAの研修員もお世話になっています!)
 視察にいらっしゃる方には、上勝町のゴミの34分別、ゴミ処理の仕方、ゼロ・ウェイストの取り組み、仕組みがどういうものなのかを説明していますが、このやり方は「上勝町だからできること」なのです。「上勝町に合った取り組みをみんなで協議して作った」といったほうが正しいかもしれません。そもそも人口や人口変動、町の規模が違うのですから。海外であればなおさらです。視察に来られる方も上勝町の取り組みをそのまま“真似”される方はいないと思います。上勝町の取り組みを1つの事例として見ていただき、自分の町の歴史、背景、経緯をちゃんと見つめて、皆で話し合って欲しいと思います。これは私たちが他の地域に呼んでいただいてアドバイスなりコメントなりする時も忘れてはならないことと心に留めていることです。「今の姿」は必ず歴史があり、背景があり、経緯がある。それをきちんと確認することが大事なのです。そういったステップを踏んで、各地でそれぞれのやり方で改善していることを聞くと非常に嬉しく思います。「上勝だからできる」、「うちは無理」では、変わりません。
 ある海外からの視察者とワークショップを行ったときのことです。「上勝町をよりよくするにはどうしたらいいか?」というテーマでグループワークを行いました。「ビルを建てればいい」、「道路を整備すればいい」、「温泉をもっと広くすればいい」といった意見が出されました。彼らにとっては「よくなること」=「開発すること」、「便利になること」なのだと気付きました。「山を切り開くの?」、「田んぼを潰すの?」、「そのコストはどこから調達するの?」。「・・・・・。」確かに開発されると便利かもしれませんが、よりよい社会をつくる方法は、決してそれだけではないはず。今ある資源をどのように活かすか。「上勝にはこれと、これと、これがある。何も壊すことなく、あるものをどう最大限活かすか。」そういった発想をもってほしいな、と思います。
 上勝町に視察に来られたことによって、何かしらの変化をもたらしたのなら嬉しいです。そういった情報もこれから収集し、整理していかなければと思っています。

JICA草の根技術協力事業で訪れた中国・四川省

 今年度から3ヵ年の計画でJICA草の根技術協力事業を実施します。これは2008年5月に中国四川省で起こった大地震の被災地、中国四川省の復興プロジェクトの一環として、2009年5月、上勝町長が「ごみの減量化プロジェクト」開会式で講演を行ったことがきっかけでした。
 2010年11月、そして2011年1月の2回、活動先を訪問しましたが、現地は国家プロジェクトとして復興が急ピッチで進められていました。しかし、プロジェクトは始まったばかりですし、国も違い、事情も違うので「ゴミの分別」という意識まではまだ達していません。「リサイクル」という観念はなく、「売れる物は(個人で)売る」という考えです。
 私たちがJICA草の根技術協力事業として、手始めに取り組むのは、まず「ゴミを集める」ことを促すこと、そして住民の皆さんに対する啓発活動のための教材作成を考えています。行政の住民に対する啓発活動、教育の手法にはまだまだ改善の余地があると感じました。
 日本人である私たちが現地を訪れるとそれだけで宣伝効果は大きいようです。地元が注目されれば、現地の人は嬉しい。それは理解できます。しかし、成果も出す必要があります。先は長いですが、地道な取り組みと行政の積極的な取り組みに期待したいと思います。

ゼロ・ウェイストアカデミーが目指すもの

 分野によって違うと思いますが、各団体が持っている情報やノウハウやスキルを国際協力に活かすことができるということは、非常に誇れることだと思います。自分たちの持っているものが汎用性のあるもの、そして先進であることに誇りを持って世界に出られるのは凄いことですよね。
 上勝町は、ゴミが出た後の対策を考えるのではなく、ゴミそのものを出さない取り組みを続けていきます。目に見えるゴミだけがゴミではなく、空気や水も大気汚染や水質汚濁というゴミが発生しています。そしてこれらの問題は、日本だけにとどまらず、世界をまたにかけています。世界中で考えなくてはならない問題なのです。
 こういったゼロ・ウェイストに取り組む仲間を世界中に作っていく。これがゼロ・ウェイストアカデミーが目指しているものであり、私の仕事でもあります。


*上勝町ゼロ・ウェイスト宣言:未来の子どもたちにきれいな空気やおいしい水、豊かな台地を敬称するため、2020年までに上勝町のごみをゼロにすることを決意し、上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)を宣言。


藤井さん、どうもありがとうございました。
ゼロ・ウェイストアカデミーを訪れる視察者に対しても、また草の根技術協力事業に関わる全ての人々に対しても真摯な態度で向き合う藤井さん。
藤井さんのお話を伺って、世界の環境問題を解決するためには、一人ひとりの小さな積み重ねが大事なことだと感じました。
—いつでも、どこでも、誰でも、自分の生活を見直し、住みやすい社会に変えていくことはできる—
小さな町の大きな取り組みにエネルギーをいただきました。
藤井さんの更なるご活躍に期待しています。

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中国四川省訪問。現地の説明を受ける上勝町関係者(右3名)

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中国四川省復興プロジェクト現地視察。現地ゴミステーション

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職員の皆さん。この小さな事務所から世界に発信