防災教育の経験をベトナムで活かす−日本という国から一歩外に出ることで得られるもの−[後編]

【写真】山内 隆和さん愛媛県西条市危機管理課
山内 隆和さん

平成16年の台風災害により、大きな被害を受けた西条市は、その教訓から「災害に強いまちづくり」を目指し、様々な取り組みをしてきた経験から、平成23年4月からベトナム・フエ市との間で「フエ市防災教育支援事業」として、草の根技術協力を実施しています。仕事を通してフエ市と関わり、国際協力の実践者となった西条市危機管理課の山内隆和さんに、事業に携わるようになってからのご自身の変化や今後の展望についてお話を伺いました。

これまでの同事業を振り返って、ご自身にどのような変化がありましたか?

ファン・サオ・ナム中学校訪問

チュー・バン・アン中学校訪問

英語が苦手なことから、閉ざしてきた世界が広がり、今では時間のある時には、昼休みに英語のCDを聞きながら、市役所の周りの御堀を散歩しています。ベトナムへ行く際には通訳の方もいらっしゃいますが、次行く時にまでに、少しでも英語を話せるようになろう、自分でコミュニケーションを図ってみようという向上心が湧いてきて、学生の時に感じていた英語に対する壁や苦労を感じなくなりました。伝えようとする意思が、自分のコミュニケーション能力を高めているのかもしれません。

 また、日本以外の世界を見ることで、自分たちが如何に時間に追われて仕事をしているかというのを感じるようになりました。ベトナムの人々は、何よりも家族との団欒の時間を大切にして、一昔前の古き良き日本の風景を見ているようで懐かしくなりました。経済発展と共に、日本は大切なものを失ってきたのではないか、日本の幸せっていったいなんだろうか、経済的には裕福ではなくても、彼らベトナム人の方が幸せなのではないだろうかと自分に問いかけるようになりました。

西条市にとってのメリットは?

フエ市洪水記録柱にて

この事業は、フエ市の子ども達に防災教育を支援する活動を進めていますが、西条市内の小学校の教員も巻き込み、フエ市に派遣をしているため、この活動を通して反対に西条市の子ども達へ、フエ市の子ども達の様子や生活の知恵など、伝えることも数多くあります。
また、海外で事業を進めることで、西条市の12歳教育を進化させ、国内外のいろいろな地域へ適用・普及する能力が養われることになると思います。
 さらに双方の教師や行政職員の交流を通じて幅広い地域間の交流へと発展が期待されます。西条市にとっても、メリットのある事業だと感じています。

地方自治体の国際協力の可能性をお聞かせください。

自治体は国際協力に手を伸ばす程、裕福ではありません。しかし、このJICAの草の根技術協力事業を通じて、JICAから財政的なサポートがあり、JICAが持つ現地のネットワークやネームバリュー、ノウハウなどを共有してもらい、この事業が成り立っています。自治体だけでは、展開が難しい事業ですが、そこにJICAがあり、事業の後押しをしてくれています。自治体には農林水産や保健福祉、生活衛生など様々な部署があり、様々な事業を実施しているので、日本の外でも様々な可能性があると思います。自治体の枠から一歩、日本という国から一歩外に出ることで得られるものは大きく、外から自治体を見つめ直すこともできます。マイナスの経験など一つもないので、他の自治体もどんどんチャレンジしてほしいと思います。

今後の展望をお聞かせください。

日本は自然に恵まれ、美しい地形を持っていますが、同時に災害の多い地形です。両者と上手く付き合って行かなければならない環境にある私たちの暮らしから生まれた知恵や技術が、開発途上国でも役立てられることを誇りに思います。国際協力というと大きなことをしているように思われがちですが、私たちが実施している事業は、国家間で実施しているというよりは、フエ市と西条市の人と人との信頼関係で成り立っている事業です。小さな協力ですが、それは日本国内でも、世界のどこでも変わらず大切なことだと思います。特別なことではなく、また互いに尋ねたい、協力し合いたいと思う関係を深めていきたいと思います。