「知ること」から「はじまること」

【写真】渡部 幸さん(愛媛県出身)H16年度3次隊/グアテマラ/環境教育
渡部 幸さん(愛媛県出身)

目を見張るグアテマラの民族衣装

コーヒーで有名な中米・グアテマラ共和国で環境教育活動を行い、価値観の違いに衝撃を受け、ものごとを多面的に捉えることを学んだという渡部さん。その経験を活かし、帰国後は地元・愛媛県の石鎚山とその麓の里山で自然観察ガイドとして活動し、現在は鹿児島県の屋久島でエコツアーガイドとして活躍しています。今自分たちのいる状況についてもっと周りの環境を含めて考え、自然や文化を通して、屋久島に来島した人と地元ををつなげたいという渡部さんにお話を伺いました。

グアテマラでの活動

カリブ海の海底調査

保護地区内での巡回授業

私は、2005年4月から2008年4月までコーヒーで有名な中米・グアテマラ共和国で環境教育活動を行いました。1年目はペット需要のため、生まれて間もない状態のまま密輸されようとしていた野生動物を保護し、自力で生きていけるようになるまで育て、森に返すという活動を行いました。

2〜3年目はカリブ海地域に位置する自然保護区でサンゴやマングローブなどの野生動植物の調査や、保護地区内にある小学校で、そのエリアに生息する生き物と環境がどんなつながりを持っているのか、自然環境を守っていくことがどう生活とつながっていくのかなどを中心とした巡回授業などを行いました。

ひとつの価値観

基本は「使い捨て」!

グアテマラで生活する中でいつも考えさせられていた事は「水」についてです。私が活動していた地域は水がとても貴重な地域でした。ひとつのエピソードにこんなことがあります。

現地入りした当初、リサイクルシステムが確立されていないのに使い捨て容器が当たり前に使われている日常を目の当たりにし、「使い捨てはもったいないから繰り返し使えるものに換えていこうよ」と提案したことがありました。すると「水を食器洗いに使うくらいなら、飲み水にするよ」との答え。

ものすごく衝撃を受けました。

「湯水のように使う」という慣用句もあるように水が豊富な国・日本で育った私は、気がつかないうちに「リサイクルすることこそが正しいことなんだ」という特有の価値観をグアテマラに持ち込んでいたことに「はっ!」としました。

多面的に捉えるということ

外貨を得るために、伐採され炭になるマングローブ

また、グアテマラは失われていく動植物がとても多く、その原因を作っているのが、残念ながらいわゆる先進国といわれる日本や米国、欧州諸国です。

後進国と呼ばれる国の人たちは、自分たちの住む環境を切り売りすることで外貨を得ているという現状を肌で知り、私たちは今自分たちのいる状況についてもっと周りの環境を含めて考えなくてはいけない。そのことを日本に帰って伝えていこうと思いました。

「知ること」から「はじまること」

唐箕(とうみ)で混ざった殻やごみを取り除く

木槌で叩いて蕎麦の穂から実をとる

霧に包まれ幻想的な屋久島の森

帰国後は、地元愛媛に戻り、西日本最高峰を持つ石鎚山とその麓の里山で自然観察ガイドとして活動していました。また、先人たちが何代も受け継いできた暮らしの知恵を多くの人に知ってもらうことが、地域特有の自然・文化を守っていくことにつながっていくと思い、石鎚山周辺で営まれてきた生活文化などもガイド中お話させていただいていました。

その想いの背景にはやはり中米・グアテマラ共和国で過ごした3年間があります。水も電気も十分ではない地域での生活。しかし、彼らはうまく自然と共存し、そこには生きていくために必要な知恵が詰まっていました。もちろんそれは今まで伝承され、そしてこれからも伝承されていくであろう持続可能なものばかりでした。

今は鹿児島県本土の南方約60kmに位置する屋久島で、エコツアーガイドとしての生活をスタートさせたところです。屋久島は日本列島の南に位置しているにもかかわらず、標高約2,000mの山岳を有することから、北の森から南の森までがぎゅっとつめこまれ、まるで「日本の縮図」のような自然が広がっています。

誰もに「一度は行ってみたい」といわれる屋久島。
しかし、「遠くの屋久島」を通して「身近な地元」を見てみると、今まで気にも留めていなかった風景の中にも共通点が隠れていたりします。

今後は、そんな共通点をつなげていきながらも、遠くの世界にも思いを馳せられるようなガイドを目指していきたいと思っています。