持続可能な社会実現のために〜松葉川国際地区民運動会のあゆみ〜(後編)

【写真】山内 桂さん(高知県)国際協力高知県推進員
山内 桂さん(高知県)

高知県に国際協力推進員として着任された山内さんは、その行動力で、様々な国際協力活動の輪を広げてこられました。その一つに松葉川国際地区運動会があります。
山内さんにとって、心に残る活動であった運動会のお話をお聞きしました。

松葉川国際地区民運動会 実行委員会発足!

最初に取り組んだのが留学生と日本人学生とのスポーツ交流です。
日本に留学していながら日本人学生との距離があり、また日本の文化に触れる機会も少ない留学生が多数学内に在籍しており、なんとかしたいという気持ちから、スポーツ交流を開催するための方法を探りました。
開催地や条件を絞り込むうちに県内の高齢化過疎地域の抱える問題にもぶつかりました。人口流出と高齢化により地域での娯楽が少しずつ消えていき、隣の家が年々遠くなっていく過疎集落、かつては地区民運動会で集落全体が盛り上がるイベントが行われていましたが、運営側の高齢化で30年以上開催されていませんでした。ましてや海外とのつながりなど全くない地域です。
「もういちど地域のみなさんに笑い声を届けよう!」というキャッチフレーズで、留学生の課題と地域の課題を同時に解決してしまおうという取り組み「松葉川国際地区民運動会実行委員会」が誕生しました。

松葉川国際地区民運動会、実施にむけて

過疎高齢化に悩む地域は増加の一途

地域住民は普段の生活では外国人と会うこともなく、町には外国の料理店もなく、海外とのつながりはほとんどゼロの状態。一方で留学生は高知にいながら留学生宿舎に暮らし、本当の高知の人々の暮らしを経験したことがなく、また日本の抱える過疎という問題があることを知らない。そして高知大学の学生の中には都会から来た者も多く過疎問題といってもピンとこない。
留学生の日本人への理解を深めるために、留学生は運動会前日に地域の方の家にホームステイをすることにしました。地域の方も外国人だけでは抵抗もあるだろうから留学生を日本人学生とペアにして田舎暮らしを体験してもらいました。
そして2日目の運動会では、ホームステイ家族と地区チームで参加し、お昼ご飯は留学生の出身国の料理を屋台販売し海外の料理を地域の方にご提供するというおもしろい企画が出来上がりました。
ですが、学生たちの思いだけのイベントでは成功しません。このイベントを成功させるには地域の方々と協働が必要になります。まずは会場を貸してくださる七里小学校の校長先生を通してPTAの皆様・及び周辺地区の保育園の園長さんやPTAの方々への説明会を学生たちが開催し、改めて9名の地区長さんに地区民運動会開催の許可とご協力をいただくための説明をしました。
学生たちにとって松葉川地区での説明会は思った以上に大変だったようです。高知市内の大学から車で片道1時間半の距離。月いちの地区の方々との打合せには大学の授業が終わってから出発し、地区の方々との打合せは21時まで続き大学帰着は毎度22時。交通費が出るわけでもなく、バイトもシフトチェンジし、テスト期間中でも打合せをしないといけない日がありました。学生同士のミーティングと打ってかわって無言で話を聞く地区長さんたちの厳格さにおじけづいた日もありました。途中で「なんでウチらがあんな遠くの地域でやらないかんのか?留学生とだけ学内で開催すればいいのに」と弱音が出たこともあります。
しかしそこは乗りかかった船。一度踏み出したら最後まで成し遂げるのが社会人の責任だと地域の方々に励まされ2012年4月にようやく第一回松葉川地区民運動会が開催されることになりました

実施できなかった第1回運動会

運動会中止により急遽出店したアースデーにて

しかし、当時全国で猛威をふるっていたインフルエンザの影響により運動会開催2日前に七里小学校が休校になってしまい、ホームステイ用に準備していた食材150食と出店をお願いしていた留学生の各国料理100食は行き場を失ってしまうことに。なんとかこの食材を活かす場所はないかと駆けずり回り県内各地のイベントを検索し、担当者に熱意の直談判をし、なんとか高知市内で開催されたアースデイの出店にこぎつけることができました。
このアースデイの出店で食材の廃棄は避けられましたが、1年間運動会のために努力を続けてきた学生と地域の皆様の落胆ぶりは想像以上のものでした。悔しくて悔しくて、実行委員として関わった全員が行き場のない気持ちでいっぱいになったのを今でも覚えています。

広がりつつある持続可能な社会の形

念願の第2回松葉川国際地区民運動会リレーの様子

子どもも大人も外国人もみんなが楽しみました。

しばらく全員が落ち込んでいましたが、ここで終わるわけにはいきません。翌年の運動会に向けて新しい実行委員会が結成され、2013年4月には第2回運動会が無事開催されました。参加人数はおよそ200人。全校生徒39人の小学校にたくさんの方々が集まり笑い声が周囲の山にこだましました。
ホームステイに参加した留学生日本人学生は運動会終了後、ホストファミリーと涙の別れ。
たった2日間の滞在が彼らの第二の故郷をつくり、ホストとなった地域の方々は口々に異文化に触れる驚きや学びを楽しそうに語り、最初は受け入れに躊躇していた家族も「来年も絶対やる!」と言ってくれました。
こうした国境を越えた人々の交流で地域に笑顔が戻ってくるきっかけが作れたことは企画した学生にとってとてもうれしいことであると同時にとても大事なことだと実感しました。
地域の人と一体となって何かをつくりあげることで、人とのつながりの大切さと責任感、そして何よりも机上の空論を展開していた学生たちの「何かを成し遂げる」という自信につながったと思っています。

そして学生側は、幻の第1回目からは随分世代交代し、今年も第3回目の運動会が開催されました。
参加人数はなんと350名。屋台の各国料理も売り切れ続出で大好評でした。

この間、国際茶屋は大学の学食で※table for twoを導入しました。アフリカへの給食支援をはじめ、外国人と学生が集えるカフェの運営にも乗り出しました。
3年前には何もなかったところから身近な課題へのアプローチを通じて国際協力の芽が育っています。
これからも持続可能な社会を目指して常に全力投球していってほしいと願っています。

-------------------------------------------------
※table for twoプログラム:
対象となる定食や食品をご購入いただくと、1食につき20円の寄付金が、table for twoを通じて開発途上国の子どもの学校給食になります。