サイエンスキャラバン「PICO FACTORY」−科学のおもしろさをマラウイの子供たちに−

2013年9月30日

【画像】「科学のおもしろさをマラウイの子供たちに」
そんな想いから始まったサイエンスキャラバン「PICO FACTORY」。3年目となった今年の「PICO FACTORY」も、青年海外協力隊隊員の任地を中心に、マラウイ全土を北に南に巡業しました。今年は全17会場、のべ4000人の人々が足を運んでくれました。マラウイで活動中の隊員が中心となったサイエンスキャラバン「PICO FACTORY」について、来島孝太郎さん(平成24年度2次隊/マラウイ/理数科教師/徳島県出身)からレポートが届きました!

サイエンスキャラバン「PICO FACTORY」とは

左からサイ(SCI)、ドクター・ピコ(Dr.PICO)、エンス(ENCE)

サイとエンスは言葉を使わずに実験を披露します

ドクター・ピコはチェワ語で子供たちに実験の解説を行います

「PICO FACTORY」では、理科実験を物語にのせて劇形式で披露します。子供たちに、目の前で起こる不思議な現象を見て面白いと思ってもらいたい。そして、面白いと思ってもらうだけではなくて、それは科学であって理由がちゃんとあるということをも知ってもらうために、公演は「劇パート」と「解説パート」から成り立っています。

2人のキャラクター、サイ(SCI)とエンス(ENCE)が面白おかしく実験を披露する「劇パート」。そして、もう一人のキャラクター、ドクター・ピコ(Dr.PICO)が実験の解説を行う「解説パート」。この2つのパートを交互に繰り返しながら劇は進んでいきます。

ただ、ここで越えなくてはいけない壁があって、それは「言葉」。ここマラウイでは、小学校の高学年から英語を習い始めるのですが、やはりすべての子供たちには英語は通じません。田舎であればなおさらです。だから、「劇パート」は言葉を使わない無声劇で、「解説パート」は英語ではなく、現地語のチェワ語を用って行いました。チェワ語を覚えて、そして伝わるようにしゃべることにはとても苦労しました。でも、伝いたいことが伝わり、子供たちの驚き喜ぶ顔を見ることができると、とてもうれしかったです。

理科実験に対しての反応

開いた口がふさがらない子供も

たくさんの子供達の手が上がります

劇を見るまっすぐな目

「油が水に浮かぶ」
日本だと当たり前のことでも、この国では当たり前ではありません。歓声が上がり、笑いが起き、開いた口がふさがらない。子供たちの反応はとても純粋です。最初はすこし恥ずかしがっていても、盛り上がってきたところで「だれかやってみない?」と聞くと一斉に手が上がる。そんな子供たちの元気な反応を見ることは、劇をやる醍醐味です。

そして大事にしたいことが一つ。それは、小学校や中高等学校の先生達も見に来てくれたこと。劇が終わった後、「あの実験はどうなっているの?」と聞きに来てくれる先生もいます。実験はマラウイの現地で手に入る物を使ってできるように工夫されています。

とはいえ、一度説明を聞いただけでは難しいこともあります。自分達で実験をする手助けのために、必要なものや手順をまとめたリーフレットを作成して配布しました。現地の先生達自身が、自分の手で自分の生徒達に実験をやってあげるようになれば、それはとても素敵なことです。

子供とのやりとりを大切に

子供ができるように、子供の目線でサポート

観客の前で披露。うれしそうです

「PICO FACTORY」で一番大事にしていることのひとつ。それは子供たちとのやりとりです。ステージと観客との間にはほとんど隙間はなく、前列の子供たちは文字通り「目の前」で実験を見ることになります。そして時には、「どっちだと思う?」と子供たちに問いかけ考えを聞きます。

また、実験によっては、子供に前に出てきてもらって一緒に実験をやってみます。前に出てきた子供は、期待と不安の混じった目をしながら真剣にトライします。ここでは黒子役が子供の目線に立って手助けします。そして実験が成功すると、まるでヒーローになったみたいに大きな拍手をもらって照れ笑い。この顔を見ることができると、やっていてうれしくなります。

見るだけではなく、自分の手で実物に触れて感じて考える機会を作ること。観客である子供たちと一緒になって場の空気を作り上げていくことを大切にしました。

会場の準備

ステージの設営は自分達で行います

音響の準備。これも大切な舞台道具です

子供たちの呼び込み。たくさんの子供達が集まってきてくれました

マラウイ全土を北から南に駆け抜けた全17公演でしたが、各任地に住んでいる隊員には、会場の手配から、村の人達への事前のお知らせ、当日の子供たちの呼び込みまでオーガナイザーとして活躍してもらいました。青年海外協力隊の隊員は、そこに住む現地の人々とのつがなりが本当に強いと感じました。各会場100人から多い時で500人くらいの村の人たちが集まってくれたことからも言えると思います。

そして当日のステージ設営は自分達で一から行います。会場ごとに奥行や横幅、窓の位置によって明るさが違うので、ステージはどこにすれば子供たちに一番見やすいのか、ああしよう、こうしようと話しながら素早く準備していきます。机やいすにポールをくくりつけて暗幕を張る。音響のラインをつないでスピーカーからの音を調整する。実験に使うものは微調整した後、机に並べていく。一つ一つの準備すべて、観客である子供の目線になって進めていきます。

ステージ設営と並行して、子供たちの呼び込みも行いにいかなくてはいけません。村をオーガナイザーさんと周って、一人一人に呼びかけて行きます。呼びかけは子供達自身にお願いするのが一番で、最初は照れていても、大きな声で堂々と友達を集めてくれます。村を周って戻る頃には、数十人の子供たちと一緒にわいわい歩くことになることも。
そしてステージ設営が完了し、子供たちが集まると、いよいよ公演開始となります。

見せる工夫を

粉塵爆発の実験は大きな炎が上がり子供達もびっくり

卵乗りの実験。卵に乗った子供はまるでヒーローです

パントマイムでどう伝えるか、試行錯誤です

子供にどうすれば伝わるか?
これは劇を作り上げる上で、とても悩んだ部分です。まずは実験選び。子供たちの興味を引くために、見た目に派手で分かりやすいこと。加えて、子供たちにもなじみの深い現地で手に入る物を使うこと。脚本を作る前の段階で、実験の候補をいくつもリストアップして、実際に手を動かしてやってみる。何度も失敗と改良を繰り返した結果、最終的に劇中で行う実験を選びました。

卵の上に割ることなく乗る「卵乗り」、小麦粉が一気に燃えて大きな炎が上がる「粉塵爆発」、レモンの汁を使って書いた文字が浮かび上がる「あぶり出し」。これらは子供たちに人気が高かった実験です。

そして、「劇パート」は、言葉を使わない無声劇なので、パントマイムによってストーリを表現し、実験の面白さや不思議さを伝えなくてはなりません。どんな動きをすればいいのか、タイミングはどうかというところから、顔の表情に至るまで、役者は試行錯誤の繰り返し。でもその結果、公演が重ねるごとにどんどん良いものになり、大きな笑いと驚きの表情を子供たちからもらいました。

職種を超えての協力

日本で流行っているダンスを子供たちと一緒に

日本の挨拶を子供たちに教えています

「PICO FACTORY」メンバー

昨年度までは主に理数科教師が主体で実施していましたが、今年は特に青少年活動の隊員とも協力して「PICO FACTRORY」を盛り上げました。サイエンスショーの前、日本の紹介を行ってもらいましたが、子供たちを盛り上げるのが本当に上手です。

日本ってどこにあるのか地図を指差してもらう、日本の挨拶を教えて一緒にやる、日本の歌を一緒に歌う。興味津々で子供たちは参加していました。マラウイではおよそ80人が青年海外協力隊のボランティアとして働いていますが、多くのマラウイの人々にとって日本という国はなじみが薄いようです。日本の位置や言葉を少しでも知ってもらい、日本という国を少しでも身近に感じてもらえればうれしく思います。

そして、日本文化紹介やサイエンスショーは、子供たちがその面白さや楽しさを感じ取る力、感性を育むことに通じるのではないかと思います。そういった意味では、理数科教師のみならず、青少年活動の隊員と一緒になり活動できたことは、自分にとっても大きな勉強と経験となりました。

今年の「PICO FACTORY」、色々な職種の隊員が集まりアイデアを出し合ったことで、より多くの子供たちに伝わり、驚かせ楽しませるものが出来上がったのだと思います。

サイエンスキャラバンを終えて

僕らがこの国に対してできることは、ほんの小さなことなのだと思います。ただ、そう思うと同時にこの「PICO FACTORY」が、見にきてくれた子供たちが大人になった時、自分の周りの地域や村を変えていこうとするきっかけになれば、とてもうれしく思います。将来の地域や村を支えるのは、僕たちがかかわった子供達です。地味に地道に、そこに生きている現地の人達とのつながりを大切にする活動をこつこつやっていきたいと思います。


ここで、劇の最後、子供たちに伝えるメッセージの一部を紹介させて下さい。
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Muli ndi luso lokwana.
(君たちになら十分素質がある。)
Muone bwinobwino, lingalirani mozama ndipo yesani.
(よく見て、よく考えて最後までトライし続けること。)
Tsogolo la Malawi lili m’manja mwanu.
(マラウイの将来は君たちにかかっている。)
Akhoza kukhala m’modzi wa inu kapena iwe kumene.
(この中の一人でもいい。君か?いや、君かもしれない。)
Ndikuyembekezera kuona inu mukusinta umoyo mmalawi chifukwa cha sayansi.
(サイエンスの舞台で活躍し、マラウイをより良くしてくれるのを楽しみにしている。)
Zikomo kwambiri chifukwa cha kubwera kwanu.
(今日は来てくれて本当にありがとう。)
Ngati mphatso yomariza, ndikupatsani Malawi a chikhulupiriro.
(僕からの最後の贈り物として、君たちに希望の炎をプレセントしよう。)
Musasokonekere.
(よーく見ておくんだよ。)
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最後の実験「希望の炎」。ライターやマッチを使わずに火を灯します。
【タネあかし】過マンガン酸カリウムの粉末にグリセリンを数滴たらすと、強烈な発熱反応のために火がつきます。カイロが温かくなるのも発熱反応を利用しています。

これは、「PICO FACTORY」が始まった当初からある子供たちへのメッセージです。この思いを形に、来年度以降も継続的にこのサイエンスキャラバン「PICO FACTORY」の活動を行っていきたいと思います。最後に、「PICO FACTORY」に関わったくださったすべてのみなさん、ありがとうございました。

サイエンスキャラバンスケジュール

劇の最後には、一人ずつメンバーを紹介します

【PICO FACTORY 2013】

<中部・北部公演スケジュール>
20th July チンゴンベ(Ching’ombe)
21rd July 移動
22nd July カウリラ(kawulira)
チャンピラ(Champhila)
23rd July ムズズ(Mzuzu)
24th July ルンピ(Rumphi)
25th July エディンゲニ(Edingeni)
26th July エンフェニ(Emfani)
27th July チテゼ(Chitedze)

<中部・南部公演スケジュール>
3rd Aug. ビリラ(Bilila)
4th Aug. ドマシ(Domasi)
5st Aug. ブランタイヤ(Blantyre)
6th Aug. チラズル(Chiradzulu)
7th Aug. ムランジェ(Mulanje)
8th Aug. ンサナマ(Nsanama)
9th Aug. ミトゥンドゥ(Mitundu)
10th Aug. カブドゥラ(Kabudula)
11th Aug. ザレカ(Dzaleka)