JICAボランティア ソロモン日記(29)

2019年7月31日

青年海外協力隊・柳田 一樹(バイオテクノロジー)

私は首都ホニアラの農業・畜産省で活動をしています。活動の内容は病害虫対策です。
ソロモン諸島は赤道の近くにあり、日々暑く、日差しが強いです。このような環境の中、植物は農産物から雑草までとても力強く成長します。マーケットでは色々な農産物を見ることができますが、その中でもココナッツはソロモン人の生活に大きく関わっています。冷やしたココナッツウォーターは飲み物として売られていますし、内部を削って水分を絞ったものは食事を作るときにも使われます。また油脂が得られるコプラ(ココナッツの胚乳を乾燥させたもの)は大切な輸出品です。しかし今、ソロモン諸島だけではなく大洋州の国々で、ヤシ類を食べるカブトムシが蔓延し、木を枯らしています。このカブトムシは、かつては天敵ウィルスを用いた防除が有効だったのですが、2000年代になってからウィルス耐性を持つタイプが現れ、新たな対策が必要となっています。ソロモン諸島には2015年に侵入が報告されています。活動先ではこの問題に対して、新たなタイプに有効なウィルスの検討と、カビを用いた対策の検討を行っています。

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問題になっているココナッツライノサウルスビートル。サイのようにツノが短いので、サイカブトとも呼ばれる。

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被害に遭って葉がなくなったココヤシ。

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耐性種にウィルスを与える実験の様子。

また、農産物の病気の対応も大切です。例えば隣国のパプアニューギニアはとても近く、船で人が行き来しているので、病気が入ってくることがあります。一旦病気が広がってしまうと被害が大きくなってしまうため、病気を診断できることが早期対策に繋がります。しかしここではPCR(ポリメラーゼ連鎖反応、DNA断片を増幅させる方法)などのDNA関連技術はまだまだ普及しているとは言えず、自国で診断することが難しい状況です。大学でもバイオテクノロジー関係は実習を行うことができず、身につけるには海外で学ぶしかないようです。このような状況の中、簡単で使いやすい検査方法の導入を検討し、自国で診断ができるようになるようお手伝いをしています。

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バナナの葉の黄化病診断のためのサンプル。

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検査方法ワークショップの様子。

ソロモン諸島は自然が豊かな国です。しかし今は温暖化やグローバル化などの変化が訪れており、農産物に新たな病気や害虫被害が広がりやすい環境です。将来現地の職員が自分たち自身でこれらの課題に対応できるよう、少しでも力になれればと思います。