JICAボランティア ソロモン日記(39)

2019年12月16日

青年海外協力隊・蝦名 雄三(林業・森林保全)

青森県庁林業職員の元気「森×森」活動記

ウェスタン州ムンダにある森林研究省の地方事務所に派遣されている蝦名雄三です。大学卒業後は青森県庁の林業職員として満7年間従事した後、現職参加制度を適用して、2018年6月27日~2020年3月30日までの約1年9か月の期間をソロモン諸島で活動することになりました。林業普及指導員として、配属先スタッフらとともに、持続的森林資源管理の促進に向けた各種活動を展開中です!!

丸太輸出に係る関税や海外企業のライセンス料などが国家歳入の約3割を占めているソロモン諸島では、森林資源は外貨獲得において必要不可欠な存在です。しかし、近年は伐採面積の増加による自然環境への負荷や単一経済構造からの脱却が課題となっています。

このため、1.商業伐採地域のモニタリング、2.森林伐採後の再造林、3.木材等の加工を促進するとともに、未利用小径木を有効利用した「4.キノコ試験生産・技術普及」などに取り組んでいます。

1.商業伐採地域のモニタリング

国家財源として、かつ地域住民の貴重な収入となっている森林伐採・丸太輸出が適切になされているのか、各種調査やモニタリングを実施しています。輸出する丸太は「10%材積検査」と呼ばれる、輸出総量の約10%以上の丸太を抽出検査することとしており、大きな丸太の断面や長さを一本一本計測していきます。また、当初契約とは異なったエリアで伐採することにより、伐採企業と地域住民との間でトラブルが発生することがあるため、我々が現地調査を行うこともあります。

2.森林伐採後の再造林

伐採後の森林再生のためには、天然更新と呼ばれるように自然復旧を促す場合もありますが、早急且つ有用な森林を造成するためには人工的に苗木を植えることが必要です。配属先はソロモン諸島国内における林業用種苗の生産・管理拠点となっており、世界三大銘木とも評されるチークとマホガニーのほか、ユーカリプタスといった熱帯地域における主要造林木の種子確保・供給、発芽後の苗木生産・配布を継続し、適切な再造林を推進しています。また、近年では農業と林業が融合した産業であるアグロフォレストリーの一環として、コーヒーの試験生産にも取り組んでいます。

3.木材等の加工

丸太輸出などの単一経済構造に依存しているソロモン諸島では、製材加工による輸出産品の高付加価値化が急務となっています。そこで今年度から、生産丸太総量のうち8%の製材加工義務を伐採企業に対して課しているほか、地域住民レベルでの製材加工を促進するためのワークショップの開催や、必要な機材などの調整を手掛けています。また、オーストラリア政府研究機関との協同により、2000年代以降に積極的な造林がなされてきたチーク造林地に対象を絞り、コンパクトなポータブル製材機を活用した製材加工実証プロジェクトにも取り組んでいます。

4.キノコ試験生産・技術普及

配属先の通常業務以外でも、個別に取り組んでいる活動を紹介します。地域住民による持続的な森林資源管理促進の一助とするために、未利用小径木の活用方法を考案しています。中でも特用林産物加工に注目し、「キノコ生産試験・技術普及」と題して、日本産のシイタケ種菌の植菌、ソロモン諸島国内で採取可能な食用フクロタケの培養・植菌、バナナの木を活用したヒラタケ生産に挑戦してきました。このほかにも、製材加工時に生成される「おがくず」や、「製材端材」を活用した燃料材・助燃材作りに配属先スタッフと取り組んでいるところです。

5.最後に

第二次世界大戦中の1942年から1943年にかけて、ソロモン諸島では旧日本軍とアメリカ軍による激しい戦闘が繰り広げられましたが、その舞台は首都ホニアラを有するガダルカナル州だけではなく、私の任地ウェスタン州ムンダも該当します。現在のホニアラ国際空港の後、我が家の目の前にあるムンダ空港を最初に建設したのは旧日本軍でした。その後70年以上を経て、ムンダ空港はホニアラ国際空港に次いで国内2番目の国際線が就航する空港となりました。今では毎週土曜日にオーストラリア第3の都市ブリスベンから多くの観光客を乗せた飛行機が着陸します。戦時中とは異なる、新しい時代を切り開く飛行機が平和裏に就航したことが、ソロモン諸島の発展に大きく寄与していくことを祈念しています。

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直径2.5mの大きな丸太!!世界各国へと輸出!!

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幼苗を移植して配布用苗木を作る

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植栽後3年をを経過したコーヒーの若木

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製材加工ワークショップでの講義中

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原木シイタケのホダ木を設置

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配属先スタッフらとの集合写真