JICAボランティア ソロモン日記(40)

2020年1月8日

青年海外協力隊・杦山 良子(理科教育)

2018年度1次隊、理科教育隊員の杦山良子です。私は京都府の公立中学校における5年間の教員生活を経て、現職教員参加制度を利用してソロモンに赴任しました。配属先はマライタ州にあるアリゲゲオ中高校を拠点としており、ここでは日本の中学校1年生~高校3年生の学年にあたる生徒が在学しています。生徒の7割は学校敷地内の寮で暮らしていて、私自身も学校内のスタッフハウスで暮らし、授業開始の8時から夜10時の消灯時間までを、生徒達と一緒に過ごしています。主な活動内容は、日々、子どもたちと理科の授業をしつつ、他の理科教師に実験を取り入れた授業を広めていくといったものです。

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顕微鏡を使った観察の授業

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中学2年生の理科の授業

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赴任当時の理科室

この学校の理科室には生徒用の机や椅子はなく、水道もガスバーナーも窓ガラスもカーテンもありません。一方で、10年ほど前に日本の支援で寄贈された顕微鏡は3台ほどあるほか、ビーカーやフラスコも数個あります。また、他に実験に使える材料として街にはストローもビニール袋も空き缶も石灰も溢れる程あります。マッチや懐中電灯などは、みんな毎晩使っているので、日本に居た頃より身近に感じます。お湯も学校のキッチンで沸かして準備できます。木々は豊富ですから、工夫次第で木材を使ったような実験もできるのです。しかし、実験を取り入れた授業は残念ながらこの国では全く実施されていません。これまでものが「無いこと」が当たり前だったこの国では、理科の授業に身の回りの物を使うという発想がまだ芽生えてはいないのです。

この国で活動しながら、私自身がこれまで自然に感じていた「生徒にいろんなものをみせたい」「実験を通して、考える機会をつくりたい」というような教員としての思いが、日本という、物に恵まれた環境だったからこそ抱けたもので、まだ、世界中では決して当たり前)ではないことに改めて気づかされました。それからは、普段の学校での授業の合間に、教員向けの実験動画作成をしたり、大学の教育学部に出向いて「学習効果を高めるための実験の取り入れ方」について講義をしたり、理科の教員向けに活動することも多くなりました。

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大学の教育医学部での講座

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教員向け実験動画

さて、そんなソロモンの学校生活は、毎日が刺激的です。昼食時、スプーンを失くした生徒は手でご飯をたべます。「日本はチョップスティック使うけどね、俺らはフィンガースティック使うんだよ♪」と指をなめながら陽気に笑う生徒たち。「お箸の使い方教えて!」と言って、自ら木を削って作ったお箸をもってきてくれた生徒。生活の至る所で、「あることが当たり前だった日本での生活」と「無いことが当たり前のソロモンでの生活」の違いに気付かされる出来事がたくさんあります。雨が降るたび「やった!レインタンクに水が貯まる!」と喜べる今の自分は、とっても幸せ者なんじゃないか?と感じています。ソロモンには、私の故郷にはなかったものもたくさんあります。毎晩のように天の川が広がる満点の星空。色鮮やかなサンゴ。きれいな空気。甘くておいしい雨水。互いに知らなくても挨拶し合う人たち。やたらと使える言葉「ノーワリ(心配ないさ)」「ヘム、オーライ(いいよ!大丈夫!)」から伝わるおおらかさ。気づけば大好きなものばかりです。

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家からみえる朝日

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ソーラン節のダンスチーム

世界には、自分の知らない幸せや価値観に気付かせてくれる国が、きっともっといっぱいある。そんな地球に生きていると思うと、ワクワクする!素直にそう思える気持ちや、日々の生活の楽しい発見、辛い経験からの学びなど、日本の生徒達に伝えたい事は書ききれないほど沢山あります。どのように伝えることができるか、考えるだけで胸が高鳴ります。ソロモンでの任期を全うして日本の教育現場に戻ったときに、あらゆるものの見え方が変わるのかもしれない、と期待しています。ここに来て改めて感じた日本の教育のすばらしさと、ソロモンでの発見や学びを上手く混ぜながら、2年間の経験を自分なりの方法で発信していけるように、残りの任期も大切に過ごそうと思います。

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学校行事の準備風景

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昼食のようす