ホニアラ交通マスタープラン調査プロジェクト:インターロッキング舗装パイロットプロジェクトの紹介

2021年3月23日

2019年5月から実施中のホニアラ交通マスタープラン調査プロジェクトにおいて、パイロットプロジェクトとして、インターロッキングブロック舗装(Inter Locking Brock Pavement:ILBP)を2020年12月に竣工しましたので紹介します。

1.ILBPについて

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あらかじめ作成したプレキャスト無筋コンクリート製のブロックを、相互にかみ合わせて道路舗装の一番上の表層に用いる道路です。日本では、街路や商店街などの比較的交通量が少なく、重い車両が通行しない道路に使われているのを目にすることが多いと思いますが、港湾や空港で大きな荷重がかかる特殊な場所で使われたり、諸外国では大型車が行き来する主要な道路の舗装として採用されていたりして、大きな荷重にも耐える設計にも適用できる舗装です。

ソロモン諸島国では、港湾公社(SIPA)がPNGからブロックを輸入して、コンテナヤードの舗装や事務所の駐車場の舗装に採用しています。しかし、道路では採用されておらず、需要もないことからブロックを製造できる業者もおりません。

2.期待されるソロモン諸島国での導入効果

ソロモン諸島国では、日本の支援で整備したククム幹線道路のほかは、瀝青舗装(Double Bituminous Surface Treatment:DBST)や簡易なコンクリート舗装が一般的です。こうした舗装は、建設会社により舗装整備、維持管理が行われていますが、材料の品質管理の課題、施工技術不足などにより劣悪な状況下にあることが多く、適切な補修が行われているとは言いがたい状況です。一方、汎用的な建材を用いて工場など特定の場所でコンクリートブロックを製造するILBPでは、表層の品質、強度の確保が容易なため、舗装状態を改善することが期待できます。また、ブロック一つ一つは、人が運ぶことができるため、大型の機械を必要とせず、地元の労働力を活用することが可能で、いろいろな地域で同時に工事をすることが可能になります。完成したブロックを敷設するので、コンクリートの養生が必要なく、工事後すぐに使用することができます。道路を整備するそれぞれの地域で資材と労働力を調達することで、地域経済への裨益効果を高くすることができます。

かみ合わせにより段差が生じるため、道路表面の平坦性が高いとは言えませんが、長距離を移動する必要があまりない島嶼国では、高速での走行よりも、舗装状態のよい道路が年間を通して利用できる効果が高く、効果は大きいと考えます。

3.パイロットプロジェクトの概要

ソロモン諸島国で、ILBPの道路を建設するのは初めてです。当工法は人力集約型施工、品質管理が容易、補修が容易、比較的安価、現地調達材料で施工可能といった特徴がありソロモン諸島国への適用性に優れています。現地業者に技術指導を行いながら工事を実施することにより、十分な強度のブロックを製造することの可否、現地施工業者の適応性、施工品質の良否、竣工後の利用状況の観測を目的としました。

4.工事概要

施工場所:ホニアラ市内中心部、Mendana Ave.とHibiscus Ave.の間の道路 約100メートル区間

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道路諸元:幅員4メートルの車道、幅1メートルの歩道および道路側溝
仕様:軽交通
道路横断面構成:下図参照
設計/施工監理:ホニアラ交通MP調査団
施工:EMCO Pacific SI Ltd.
施工期間:2020年9月~2020年12月(4ヶ月)
主要数量:インターロッキングブロック製作16,000個、インターロッキングブロック舗装470平方メートル、プレキャスト排水溝製作

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図 標準道路横断構成

5.工事の経緯

設計とTerms of Reference(TOR)は調査団が作成し、入札と契約交渉を経て2020年2月にEMCO Pacific SI Ltd.と工事契約を結びました。その後、COVID-19による渡航規制等のために渡航できずにおり、日本人専門家がリモートでEMCOへの指導を行い、現地スタッフがモニタリングしての施工となりました。

ブロックの製作方法は、プラスチック型枠を使用する方法などを検討しましたが、EMCOの意向を踏まえ、インターロッキングブロック製作用の型枠を中国から輸入することにしました。しかし新型コロナの影響により調達は大幅に遅れ、ホニアラ港に到着したのは7月末となりました。試験製作、強度確認、試験施工を経て、8月末から本格的にブロック製作を開始し、約16,000個のブロックを製作しました。住民説明を行った後、9月末に着工しましたが、上下水道・電話線・電線の設備更新等を先に行うこととなり、工程を延期することになりました。2020年12月16日に無事竣工、12月18日にカウンターパートであるインフラ開発省の竣工検査に合格しました。

6.成果と今後の展開

技術支援のもとで一定の施工品質を確保出来ることが確認できました。ホニアラ市は例年11月~4月が雨季であり、その間の道路状況を観測し技術課題を確認します。同時に、ユーザーから使い心地などを聞き取り調査します。先述した通り、当工法は瀝青材舗装や簡易なコンクリート舗装と比べて当国の社会・環境条件に適しています。全国に普及することによって持続可能な開発につながることが期待できますが、そのためには、標準工法として確立することが必要です。今回は、比較的交通量が少なく平坦で、傾斜や排水の問題があまりない場所での施工でしたが、そうした課題がある場所での施工には、適切な対処が必要です。また、ブロックの品質管理と製造体制、適切な施工指導員の育成方法を確立することで、高い品質の道路建設が可能となります。

一般的に、舗装の状態が悪化する原因は、表層の問題だけでなく、路盤の支持力不足、排水対策の不備などによることが多く、これらは他の舗装タイプにも共通する課題です。道路舗装技術全体の向上の必要性をMIDと共有し、ソロモン諸島国の交通環境が改善されるように支援を続けていきたいと考えています。

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施工前状況

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路盤整備、敷砂後

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ブロック敷設

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完成(始点側)

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完成(終点側)

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完成検査