衝突を乗り越え「平和と結束」願う 南スーダンで、第2回全国スポーツ大会を開催

2017年3月22日

2017年2月5日、南スーダンの首都ジュバ市で第2回全国スポーツ大会の閉会式が行われた。閉会式でタバン・デン・ガイ第一副大統領は、大会が平和に行われたことを称えるとともに、国立競技場に集まった観客1万5千人に「平和を支持し、紛争を終わりによう」と呼びかけた。2016年7月に大規模な衝突が発生してから約7か月。一時は大会の開催が危ぶまれたが、9日間にわたる熱戦は平和裏に幕を閉じた。

「平和と結束」願う大会

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開会式の模様

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開会式の模様

文化・青年・スポーツ省(通称、スポーツ省)が主催、JICAが共催した第2回全国スポーツ大会は、2017年1月28日〜2月5日、南スーダンの首都ジュバ市で行われ、全国12都市から約500人の若い選手が参加した。2016年1月に行われた第1回大会に続き、今回も大会テーマは「Peace and Unity(平和と結束)」とした。

「平和と結束」は国民にとっての悲願だ。南スーダンは北部にあるスーダンとの紛争の末、独立を問う住民投票を経て、2011年7月に独立を果たした。しかし、2013年12月、ディンカ族のキール大統領とヌエル族のマシャール元第一副大統領の権力闘争が発端となって、戦闘が全国各地に拡大。2015年8月に和解が成立し、異なる民族や政党による暫定政府が発足して国の再建を始めたものの、2016年7月、再び政府軍と反政府軍による大規模な衝突が発生した。

衝突の発生、そして、退避

昨年7月9日、JICA南スーダン事務所でスポーツ協力を担当する山中菜奈穂所員は、スポーツ省でエドワード・スポーツ担当局長らと打合せを行っていた。しかし、打合せ中、山中所員はエドワード局長から一刻も早く帰るよう促され、スポーツ省を後にする。事務所で銃声が聞こえ始めたのは、山中所員が事務所に戻った約1時間後だった。

そして7月13日、JICAの日本人所員及び邦人関係者は南スーダンから退避した。退避する直前、山中所員はチャーター機を待つ空港からエドワード局長に電話をし、退避することを伝えた。山中所員は「もういつ会えるかわからないと思った。エドワード局長から繰り返し『ありがとう』と言われた」と当時を振り返る。

大会を諦めなかったスポーツ省

退避後、JICAの日本人所員は東京で、その後南スーダンの隣国ウガンダに拠点を移して遠隔で事業を継続することになった。スポーツ省とは、電話やメール、テレビ会議を通じて大会開催に向け協議を再開。エドワード局長は「JICAの日本人が退避したときは、第2回大会はできないかもしれないと思った。でも協議を重ねる中で、大会を開催できると確信した」と振り返る。

しかし、大会を開催するには様々な課題があった。大勢の人が集まることは治安リスクを高めることになる。また、地方の治安が不安定な中、全国各地から参加する選手やコーチの移動の安全をどのように確保するのか。「平和と結束」を推進するための大会で死傷者が出る事態は絶対にあってはならず、関係者は、万全の安全対策がとれないのであれば、大会を中止せざるを得ないと考えていた。

しかし、スポーツ省は諦めなかった。大会に参加する全12都市のスポーツ省職員が集まり、選手や観客の安全をどのように確保するか徹底的に議論した。その結果、地方から参加する選手やコーチは陸路ではなく、飛行機で移動することにし、全試合会場及び選手らの宿舎には警察官を配置して警備を強化することにした。

選手が呼びかけた「平和と結束」

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陸上競技

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陸上競技

こうして1月28日、第2回全国スポーツ大会の開催にこぎつけた。タバン・デン・ガイ第一副大統領の他、現職大臣3名や在南スーダン日本国大使が出席して行われた開会式の模様は、「平和と結束」のメッセージとともに、テレビやラジオを通じ全国に届けられた。翌29日からはジュバ市の5つの会場で、サッカーの予選会と陸上競技が始まった。大会運営の中心的存在だったウィリアム・スポーツ省職員は「毎日、どの試合会場も大勢の市民が観戦に訪れ、全国のラジオ局が試合結果と『平和と結束』を呼びかけた。前回大会よりもたくさんの人が集まり、まさに国全体のイベントになった」と話す。

2回目ということもあって大会運営も改善し、選手の選定や登録、ルールの設定がより公平・明確になった。選手には大会意義を説明し、サッカーの試合の前には、各チームのキャプテンがフェアプレイを誓い、観客に平和に観戦するよう呼びかけた。

今回参加した選手の中には、これまで自分の生まれた町を出たことがなく、自分と異なる民族との交流がない若者もいた。そこでスポーツ省は、民族や出身地域の異なる選手が一緒に寝泊まりするよう宿舎の部屋割りを工夫した。大会中日には、民族や出身地域の異なる選手がチームを組み、力を合わせて行う綱引き大会も企画した。こうした取り組みが功を奏してか、「どの試合でも勝っても負けても選手は互いに健闘を称えあい、宿舎に戻れば寝食を共にしていた。今年はレッドカードが一枚も出なかった」と、ウィリアム職員は満足げに語った。

南スーダン人全員の勝利

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スタンドを埋める観客

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サッカー決勝戦

大会最終日、国立競技場はサッカーの決勝戦を観ようと訪れた市民で満員となった。今年の対戦カードは、ルンベック市対アウェイル市。結果は、2対0でルンベック市が勝利した。

国立競技場でルンベック市を応援していた観客の一人、マジョックさんは「優勝カップはルンベックのものではなく、平和を求める南スーダン人全員のもの。選手たちが見せたフェアプレイは、若者が民族や支持政党を乗り越えられることを証明した」と話した。一方、負けたアウェイル市を応援していたマクールさんは「ルンベックに負けて悔しいとは思わない。なぜなら我々全員が国としての結束を勝ち取った勝者だから」と語った。

第3回大会に向けて

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サッカー決勝戦

大会を終えたスポーツ省は、既に第3回大会の開催に向け動き出している。今大会は女性選手の参加が全体の5分の1に留まったため、女性の競技人口が多いバレーボール等のスポーツを取り入れたいと考えている。また、今回参加した12都市だけでなく、全国の有望な若者が参加できる仕組み作りも必要だ。更には、2020年東京オリンピックに向けて、選手を育成したいとの思いもある。

いずれも、治安や経済に多くの課題を抱える南スーダンにおいて容易なことではない。それでもエドワード局長は「全国スポーツ大会は、国民を一つにする力がある。これからも続けていかなくてはならない」と話す。国民に「平和と結束」を呼びかける全国スポーツ大会を毎年開催していくスポーツ省の決意は固い。