平和の担い手を育む:第4回南スーダン全国スポーツ大会「国民結束の日」

2019年3月20日

平和への期待と結束の必要性

2011年にスーダン共和国から独立を果たし、世界一新しい国として誕生した南スーダン。しかし、2013年12月に政府軍と副大統領支持派武装勢力との間に衝突が起こり、国内の治安が大きく悪化しました。それ以降、400万人以上が国内及び国外で難民・避難民になるなど(UNHCR Feb 2019, IOM Feb 2019)、争いが長期化するとともに、暴力が繰り返される中で、民族及び住民間の不信感・憎悪感が助長されました。争いをやめ、国民一体となって国造りに取り組むべく、2018年9月に「再活性化された紛争解決合意」が結ばれ、現在、平和への期待が高まっています。これからの南スーダンの持続的な平和にとって、全ての民族が、南スーダン国民として互いを認め合い、統一国家として結束することが不可欠となっています。

スポーツを通じた平和促進

このような状況の中、JICAの協力のもと、南スーダン文化・青年・スポーツ省(以下、「スポーツ省」)は、第4回全国スポーツ大会「国民結束の日」(以下、「大会」)を開催しました。大会は、南スーダンの首都ジュバにおいて、2019年1月26日から2月3日の9日間にわたり、「平和と社会的結束」のスローガンのもと開催されました。国民の交流、友好と結束を促進し、市民レベルからの平和と社会的結束を後押しするべく、JICAはこの大会の開催を2016年の第1回大会から継続して協力しています。本大会では、前回に比べて支援の輪が更に広がり、国連機関(UNMISS,UNDP,IOM, UNAIDS)や他国政府(スイス開発協力庁)、民間企業など、12の機関・団体が大会の趣旨に賛同し、資金や物資調達の協力がなされました。

大会には、全国から事前予選及び選考プロセスを経て選抜された、300人を超える20歳以下のアスリートが、男子サッカー・女子バレーボール・男女陸上で、フェアプレーの精神と共に日頃の練習の成果を披露し、熱い試合を繰り広げました。選手の選考に関しては、公平・公正で透明性のある選抜を目指し、同国の治安の影響で制約はあるものの、全国からより包括的に選手が参加し活躍できるよう、スポーツ省と各地方政府とともにプロセスを進めました。

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各地域の代表として開会式で州旗を掲げる選手たち

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女子陸上競技800m決勝の様子

平和の担い手を育成

開会式と閉会式では、若きアスリートたちが平和への祈りや結束の必要性など、それぞれの思いを込めたメッセージボードを掲げて入場行進しました。また大会期間中には、全国から集まった民族背景の違う人たちが交流を深め、信頼を構築するとともに、地元コミュニティに戻った後に「平和の大使」として活躍できるように、平和構築ワークショップやジェンダー・HIV/AIDS関係の啓発活動も行いました。また、コミュニティに平和と結束を呼びかける事前イベントを3回開催し、大会期間中及び前後には、南スーダンの公営テレビ放送やラジオ局を通じて平和へのメッセージを全国に広げました。

選手からは、「スポーツを介してそれぞれの違いを忘れることができ、平和と結束のために共に学ぶことができた」、「民族・部族の違いに関係なく友だちを作れた経験を、地元に帰ってコミュニティで広めたい。それが南スーダンの平和に繋がると信じている」との声が聴かれました。それぞれの地元に戻って、スポーツを通じた平和構築活動を自ら進めたいとの声も多く、大会を通して、アスリートたちの平和と融和に向けた姿勢が育まれました。

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参加アスリートが書いた平和へのメッセージ

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平和構築ワークショップでファシリテーターを務めたUNMISS民政官と選手たち

市民に浸透してきた「国民結束の日」の意味

ラジオ、テレビやSNSで大会の開催を告知すると、多くの市民から歓迎の意が伝えられ、大会と事前イベントを合わせると延べ約5万5千人もの人々が大会会場に詰め掛けました。経済状況の厳しい南スーダンにおいてこのような大規模の全国大会が行われる機会は他にありません。スポーツ省のエドワード担当局長は、「継続して毎年この大会を開いていることで、ジュバや他の地域において国民結束の日の認知度は年々上がってきている。多くの人が、同大会に選手・スタッフもしくは観客として参加し、その体験を自分たちのコミュニティに持ち帰ることで、平和に向けた国民の姿勢を育み、結託し、平和への文化を創り出すことができる」と話します。大会に訪れた観客へのアンケートからも、「この大会は社会的に意味があり、スポーツを通じて平和を促進できる」、「スポーツは文化・民族・性別を超えて共に成長できる大いなる可能性がある」などの、大会の意義を理解する声が多く聞かれました。子どもから大人まで、異なった部族・民族、出身地の人たちが一堂に会し、平和に向け結束した雰囲気のもとスポーツを楽しみました。

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決勝戦には多くの観客が詰めかけた

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「平和と文化デー」では綱引き、踊り、袋飛び競争などで交流した

女性の活躍の場を広げる

スポーツは平和へのメッセージを伝える場になるとともに、ジェンダー主流化を促進する場にもなります。大会では、昨年に引き続きバレーボールや陸上の種目で女性の参加を促しました。南スーダンにおいては、女性が活躍する場は男性に比べて少ないですが、国民的スポーツ大会において、女性アスリートが活躍することによって、社会には「男性だけではなく、女性も参加するもの」という考えを広げることに一役買います。身長や身体能力に恵まれている南スーダンの人々には、スポーツにおいて、男女ともに世界で活躍できる大いなる可能性があります。同大会をきっかけに、女性の競技人口が増えるとともに、世界で活躍する女性アスリートが現れると、南スーダン全土においてさらに女性の活躍の場が広がるでしょう。来年度の大会開催に向けて、スポーツ省はさらに女性の参加人数を増やすことを目標としています。また、女性の活躍及び啓発の場を増やすことにより、性暴力や早期結婚・出産、女性の就学率の低さなどの社会問題の解決に貢献していくこともスポーツ省の目標です。

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多くの女性アスリートが参加し、白熱したバレーの試合

大会のその後

まだ大会を開催してから間もないですが、大会の後に参加アスリートたちからいくつか嬉しい報告が届いています。まずは、陸上競技に参加した陸上選手4人が、ジブチ、ウガンダやタンザニアなど他のアフリカの国で行われる国際大会に招待されました。大会が平和と結束を促進するものであるとともに、才能のあるアスリートたちが世界に羽ばたくきっかけとなってきています。南スーダン選手が2020年東京オリンピックに参加する可能性もあり、平和への期待と共にオリンピックムーブメントの高まりも感じられます。また、大会で得た繋がりを元に、UNMISS保護下のジュバの避難民保護区域(以下「保護区域」)に暮らす若者が、保護区域を出て地元のサッカーチームに加わったりと、民族や出自に関わらず、異なった背景を持つ人々と共に同じチームでスポーツを楽しむようになりました。今後も多数の関係者と共に、これらの大会の良い影響をさらに全国に浸透させるべく、大会及びスポーツを通じた平和促進事業の改善に向け、スポーツ省と共に取り組んでいきます。

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大会期間中に親交を深めた選手たち、地元に戻って平和の大使として活躍する