ゲンバの風/PLAYERS

第8回PLAYERS
村の女性とともに無農薬野菜に願いを込めて

カンボジア・スバイリエン州の女性たちとともに、 野菜の共同生産・出荷に取り組む認定NPO法人国際ボランティアセンター山形。 村の「女性組合」の運営を通して、収入向上と農村振興を目指している。

女性主体の村づくりを目指して

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村で栽培した無農薬野菜をかごいっぱいに入れ、市場に売りに行く

「村の女性が栽培した無農薬野菜はいかがですか」

町の市場の一角で、みずみずしいキュウリや空芯菜を売る女性たち。“安全でおいしい”が売りの野菜は、少し値が張るものの、見る見るうちに売れていく。

野菜を売るのは、カンボジア南東部スバイリエン州スバイチュルン郡に住む女性たち。各村の女性で構成される「女性組合」のメンバーでもある。この日は、村の家庭菜園で栽培した野菜を集め、村外の市場に売りにやって来た。

そんな彼女たちを10年にわたり支援するのが、認定NPO法人国際ボランティアセンター山形(通称IVY)。東北地方ならではの農業のノウハウを生かし、1999年からスバイリエン州の女性のエンパワーメント(能力向上)、農業振興を通じた貧困削減を支援している。

IVYが“女性”にフォーカスした支援を行うのには理由がある。国内でも貧困層が多い同州では、男性の多くが都市に出稼ぎに行ってしまう。大半の家庭が農業を収入源とする中で、その仕事を担うのは女性たち。しかし、農業に関するノウハウが不足し、世帯間の連携が取れていないことなどから、自分たちが消費するコメの自給さえ厳しいのが現状だ。

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家庭菜園を持つ女性たちは、定期的に会合を開き、野菜の栽培方法などについて議論する

そこでIVYは、地域開発の主体を女性に置き、村の女性同士のコミュニケーションを活発化するため「女性組合」の設立を提案。IVY事務局長の安達三千代さんは「ポル・ポト時代は、密告を奨励する風習がありました。その後遺症で人々は疑心暗鬼となり、共同体が破壊され、隣の人と話さえしたことない人もいたぐらい。ましてや、女性同士が協力して何かをするという意識は、ほとんどありませんでした」と話す。

しかし、次第に、女性組合の輪が各村に広がり始めた。「今では定期的にワークショップや勉強会を開き、村の発展のため、何ができるかをみんなで考えています」。村の選挙で選ばれたメンバーが中心となり、米銀行や家畜銀行、行事での食器の貸し出し、小学校建設まで、女性ならではの視点でさまざまな村づくりに取り組んでいる。

野菜の共同出荷を通じて村の発展を

女性組合の活動が活発化するにつれて、村がより活気づくためには、やはり持続的な収入源が必要という問題意識が生まれた。そこで2007年からは、JICA東北の草の根技術協力を通じて、女性組合を活用した農業振興に取り組むことに。各家庭の菜園で、無農薬野菜の栽培への挑戦が始まった。

各村を回りながら、種の入手、苗床やたい肥の作り方から、販売時のディスプレイまで、IVYのスタッフはきめ細やかに指導を続ける。「“売れる”ためには、野菜が一番おいしい時期を、サイズや色で見分けて出荷することが重要です」と安達さん。さらに、長ささげ豆なら同じサイズのものを束ねたり、サニーレタスなら竹かごに盛って“みずみずしさ”を強調するために霧吹きで水をかけたり―。さまざまな工夫を凝らしている。

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プノンペン市内のスーパーを視察する女性組合のメンバー。初めて見る光景に驚きの連続だった

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ホテルに出荷する野菜をトラックに積み込んでいく

各家庭から集めた野菜は、女性組合の野菜販売員が村外の市場に自転車で売りに行く。安達さんは、「今は、需要に供給が追い付いていない状態。輸入野菜は危険と考える人も多く、少し高くても、無農薬野菜は人気が高い。トマトやニンジンなど、需要の高いほかの野菜の栽培にも挑戦していきたい」と意欲を語る。

昨年2月、現地プロジェクトマネージャーの松浦あゆみさんは、女性組合のメンバー12人を引き連れて、首都プノンペンに視察旅行へ。市内の市場やスーパーマーケットの見学、JICAカンボジア事務所や現地NGOで野菜の試験販売を行った。メンバーの中には、首都に行くのはもちろん、村を出るのが初めてという人も。この経験は、大いに刺激になったようだ。

そして12月、村の女性たちに驚きのニュースが届いた。ベトナム国境地帯にある経済特別区のホテルから、彼女たちの野菜を買いたいという申し出があったのだ。第1回目は、今年2月に4つの村から200キロの野菜を集めて出荷。ホテル側も彼女たちの野菜の質を高く評価しているという。松浦さんは、「ほかの野菜と同じにされては困る。いかに無農薬野菜を良い値段で売るかが重要です」と強調する。

そしてもう一つうれしいニュースが。今年から、女性組合のメンバーだった現地の女性がIVYのスタッフとなったのだ。村の発展を担う人材が育っている証しだ。家庭菜園から生まれた野菜が、今日も彼女たちのパワーの源となっている。