スーダンでの活動を振り返ると−隊員生活を振り返って−

2010年8月10日
木下由佳(理学療法士・ハルツーム教育病院)

活動先はハルツーム教育病院の理学療法科、外来の患者さんを対象とした治療室です。

1日に約100名位の利用者を理学療法士アシスタントの同僚が治療します。主な活動は同僚と一緒に診療の補助をしながら技術の向上を目指すことです。また理学療法士実習生も受け入れていて、学生はとても熱心に実習をしてくれます。

活動を始めてすぐ疑問に思ったことは、いったい重度の障害者はどこでリハビリテーションを受けているのだろうということでした。誰もがこの教育病院がリハビリテーションの照会先であり、ここがハルツームでも一番と語ります。それにしては自分で移動可能な利用者ばかりです。

入院患者は手術のための入院なので、次の人にベッドを空けるように平均1週間程度で退院しなければなりません。そのためリハビリテーションの処方が出ない、または入院期間がある程度あってもリハビリテーションの概念が不足しているために処方が出ない状態でした。

ある日、病棟で手術後の脊髄損傷の方にリハビリの処方が出たということを聞き、アシスタントの同僚とベッドサイドに行ってみました。患者さんは、交通事故によって胸から下が麻痺した20代の男性です。同僚は早速、麻痺した足をストレッチしました。しかし、ストレッチを終えると、他にすることはないかのように立ち去ろうとしました。医師からは、車椅子の使用も可、との指示が出ています。この患者さんに対してできることはたくさんあると思った私は、まず寝返りを介助してみました。するとシーツが血液と体液で汚れており、寝返った背中を見るとひどい"褥瘡(じょくそう)"ができていました。医療従事者として患者さんがこんな状態になることは、自分たちの怠慢としてとても恥ずかしいことです。病院関係者が業務時間中だらだらと長い休息時間をとるのと引き換えに、患者さんは病院で新たに作られてしまった、そして防ぐことができたはずの"じょく瘡"に苦しまなければなりません。もちろん本人は麻痺により感覚がないので気がつきません。しかしここから感染症を起こし死に至る場合もあります。ただ、これは担当していた医療従事者の責任だけとも思えません。また、今後歩くことができないこの青年が、障害者の社会参加が不十分なこの国でどう生きていくのだろうかと思うと、とても辛くなりました。そんな現状を身をもって感じてからは、医師の処方を待つよりも回診に参加したり、同僚を医師の診察に加わらせて急性期のリハビリテーションに関心を持ってもらえるよう促したりしました。こうした取り組みが今後少しでも改善につながってほしいと願っています。

1.スーダンでの生活・暮らしぶりは?

本当のスーダンとはどんな感じだろう?実際に住んでみても、なかなか見えてこない現実を少しでも理解したいといつも思っていました。患者さんの家を訪問したり、路上で休憩中の車椅子の障害者や路上生活者のシェルターの前に集まる人々にアラビア語で話しかけ、よく突撃インタビューを行いました。こちらのたどたどしい会話にも"分からない"とは言わずに、誰もがいつも真剣に答えてくれました。私は、スーダン人はコミュニケーション能力の高い人々だと思っています。単に語学ができるということではなく、相手を理解しようとする思いやりが強いということです。

路上で人々と話をするとき、また職場で同僚と話をするとき、孤児についての話になることが多くありました。興味をもった私は、活動先の他にも障害児孤児施設や孤児の自立生活支援の団体などを見学させてもらいました。そのようなところで仕事をする人々はとても前向きでとても熱心に社会の問題を話してくれました。

2.スーダンに来て良かったと思うことは?

友人を通して、スーダンで長い年月活動する人々に会いました。中にはもう10年以上ストリートチルドレンのために活動しているという人もいました。「大きな家に住みたいですか?それとも家のない人のために時間を使いたいですか?」という問いに、理想として安易に後者を語ることはできても、実際に実践している人たちはなんて強いのだろうと思います。スーダンで頑張るみなさん、そしてやさしいスーダン人と一緒に時間を過ごせたことがスーダンに来て良かったと思うことです。

【写真】

1.活動風景。

【写真】

2.モスク

【写真】

3.女性の衣装"トーブ"

【写真】

4.ハルツームでよく見かける車いす

【写真】

5.日常よくたべる"ボシュ"豆を煮たフールとパンを混ぜたもの。