地方行政の能力強化を通じて平和の定着を促進

2011年5月25日

1月に実施された住民投票で、7月に南部が国家として独立することが確定したスーダン。独立する南部はもちろん、北部スーダンにも取り組むべき開発課題が山積している。特に、今も政府と反政府勢力との間で紛争が続くダルフール地域や、南北の境界に位置する暫定統治地域の安定が平和の定着には欠かせない。しかし、これらの地域では、長期間にわたる紛争によって基本的なインフラが荒廃しており、また、行政サービスが皆無に等しいため、住民の行政に対する信頼は薄い。スーダン全体の安定のためには、地域住民のニーズに合った行政サービスを充実させながら、行政に対する住民の信頼を取り戻し、両者が力を合わせて復興、開発を進めていくことが必要である。

広島で行政サービスを学ぶ

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東広島市職員から、人事制度についての講義を受ける研修員

JICAは、2009年6月から実施中している「ダルフールおよび暫定統治三地域人材育成プロジェクト」の研修事業として、2月21日から3月4日までの2週間、スーダン政府国際協力省及び地方分権最高評議会から3人、暫定統治地域のうち青ナイル州地方自治省及び労働省と南コルドファン州地方自治省から5人を日本に招いた。研修員は、JICAのプロジェクトを運営・モニタリングしていく重要なカウンターパート(協力相手先機関職員)で、研修の目的は、地方行政のあり方、行政と住民のかかわり方、保健や職業訓練、給水などの分野の人材育成について理解を深めることだ。

研修員は、原爆による悲惨な戦禍を乗り越えて復興を果たした広島県に10日間滞在。講義いただいた広島県庁や東広島市役所の職員から、地方行政のあり方について「住民のニーズに耳を傾けることが何より重要」と強調された。これを受けて、研修員は、スーダンでは一つの自治体のなかでも民族によってニーズが異なるため、それらに平等に対応していくにはどうしたらよいかというテーマについて熱心に議論した。

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東広島市では、乳児健診の現場も視察した

さらに、行政サービスの現場を知るため、生後3、4ヵ月の乳児を対象に実施されている健診を東広島市で視察した。スーダン国保健省の統計では、5歳未満の乳幼児死亡率は1000人中112人となっており(注)、10人に1人以上が5歳まで生きられない状況だ。研修員からは「栄養面や発育状況に問題のある乳児に対して、市はどのようなフォローアップを行っているのか」「この健診は住民からの要望で始まったのか、それとも市のイニシアチブによって始まったのか」といった質問が相次いだ。また、広島県立技術短期大学校や広島県立広島高等技術専門校も訪問し、日本の職業訓練の歴史や市場のニーズを踏まえた人材育成のあり方について説明を受けるとともに、施設や機材を視察した。

(注)Sudan Household Health Survey, Federal Ministry of Health, Khartoum, Republic of Sudan, 2006

南北スーダンの発展に向けて

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講義の後、行動計画作成に向けて議論する研修員

視察や講義を通じて、研修員は「行政サービスの向上には連邦政府と州政府とが十分にコミュニケーション取ってうまく連携し、役割分担などについて調整することが重要だ」(地方分権最高評議会調査局のサラーハアッディーン・バビキール次官)という認識を新たにした。最終日にJICA本部(東京都千代田区)で行われた研修成果の発表会では、日常の業務で取り組むべき具体活動計画が発表された。

プロジェクトのチーフアドバイザーで、スーダンから研修に同行した井堂有子JICA専門家は「研修員のみなさんは、本国では政策決定者クラス。普段なかなか顔を合わせる機会のない彼らが、同じ場所で集中的に議論できただけでも非常に意義深いことです。帰国後、この研修で提案された調整メカニズムを実施できるよう、サポートしていきたい」と語った。

発表会に続いて行われた閉講式では、押山和範JICAアフリカ部長が「広島で得た経験をそれぞれの地域で役立ててほしい」とスーダンの発展に向けた激励のメッセージを送った。南部の独立によって今後、平和な国づくりが進められるスーダンで、連邦政府と州政府が連携を図りながら、住民のニーズをくみ取った、地域格差を生まない開発の推進が期待される。