スーダンにおける平和構築支援への第一歩として−講演会「日本の平和構築における経験」を開催しました!−

2013年9月10日

【画像】

9月10日、ハルツーム大学が、講演会「日本の平和構築における経験」をJICAと共催で開催しました。2012年のJICA研修「紛争被害者支援」に参加したスーダン人研修員が、もっと多くのスーダンの人々と日本の国造りや平和構築のプロセスを学び、スーダンの平和構築に役立てたいという熱意で、篠田英朗教授(東京外国語大学)を招きこの講演会を実現させました。当日は日本、スーダン両国の政府関係者、NGO、報道関係者が参加し、活発な議論が行われました。

日本からスーダンに伝えられること〜日本は平和な国だったのか?〜

【画像】

冒頭で教授は、"日本は平和な国だったのか?"という問いを投げかけ、歴史的に日本も数多くの内戦を経験し、それらを乗り越えて今の平和を会得したことを強調しました。

まず明治維新について、当時の政府が直面していた国内の分裂と植民地支配という海外からの脅威に対し、産業開発や農地改革などを通じて、国家の不安定要素となりうる人々(旧武家や貧しい農家)をスムーズに新しい国家システムに組み込むことで、近代国家を築くことに成功したと説明しました。

同様に第二次世界大戦後の平和構築について、民主化の促進と国家権力の分散、メディアや教育による平和文化の定着、そして地方経済の発展など、国家システムの大規模な改革と努力の末、貧困と飢餓に喘ぐ敗戦後の日本を、現在の平和で豊かな国家に造りあげてきたと紹介しました。

平和で豊かな国家を目指し、外国の干渉や内乱といった困難を克服し、粘り強く努力を続け、平和を手にした日本の事例は、平和と発展を希求しながらも、紛争と貧困から抜け出せないスーダンにとって示唆に富むものでした。参加者からは自らの文化と比較しつつ、スーダンに適した平和構築の道程を考えたいとのコメントが数多く投げかけられました。特にスーダンの民族多様性や宗教の重要性など、日本との異なる点を踏まえて、いかにしてスーダンに平和を築くのか、参加者全員が考えさせられる内容となりました。

「日本=平和で豊かな国」という図式も、歴史を紐解いていけば、かつては「日本=紛争と貧困に喘ぐ国」という図式が存在し、それは現在スーダンが直面している現実と共通する部分が数多くあるということが、今回の講演会で伝えられました。また当時の日本政府が、統一された平和で豊かな国を造るという目標を設定し、その目標達成に向けて様々な政策を画策し、打ち立てていった努力の歴史は、日本からスーダンに向けて胸を張って伝えていけることなのではないでしょうか。

講演会の最後で篠田教授は、「自分は今すぐスーダンで平和を実現させるような模範解答は持っていない」と延べ、型通りの理論が通用しにくい平和構築の分野において、一度同じ道を経験した日本も「スーダンの平和構築」に貢献できる可能性があるとの期待をふくらませながら、講演会は幕を閉じました。

日本の経験から学ぶ

昨年の研修員の一人、国立地雷対策センターで地雷被害者支援を行うモザミル・アブデラさんは今回の講演会が、改めて研修員同士そしてJICAとの連携を強める機会となり、大変実り多いものになったと高く評価しています。特に様々な教育機関、政府関係者、NGOと新たなネットワークが築けたこと、そして多くの方々と日本の平和構築における経験を共有できたことは、今後スーダンで平和構築を推進していく中で、大変有意義になるだろうと語りました。またNGO「MAMAN」の代表を務めるオスマン・ハッサンさんは、スーダンにおける平和構築はまだまだ経験が浅いため、日本の事例をさらに多くの人々に知ってもらい、平和構築について共に考える機会を増やしていきたいと語ってくれました。

(記 JICAインターン 田中友実)

JICAによる本邦研修コース:「紛争被害者のための支援システムの開発」

この研修は昨年度JICAスーダンが89名のスーダン人の方々に提供した本邦研修のひとつで、昨年は3カ国から計10名(ネパールから2名、コロンビアから3名、スーダンから5名)の研修員に対し、11月から12月までの約一ヶ月間、「被害者学」に関する研修が提供されました。研修は「被害者学」の基礎理論の習得、そこで得た知識をもとに各国の直面している問題に対して、研修員が活動計画を作成・実施することを目的としています。昨年スーダンから参加した5名はそれぞれ国内の大学、NGO、政府機関で紛争被害者支援に携わっており、帰国後はスーダン国内の紛争被害者支援分野で彼らの更なる活躍が期待されています。