同じ国!?理学療法士が見た州格差!

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青年海外協力隊 24年度3次隊 理学療法士
愛甲 聡史

現在、理学療法士として首都ハルツームの中心的な政府管轄病院で日々勤務しています。首都であるハルツーム州の人口はおよそ600万人、人口規模を考慮して配属先病院の質を考えると、リハビリテーション科はまだまだ途上段階です。しかし今回、人口170万人を抱えるエリトリア国境付近のスーダン東部カッサラ州の中心的政府管轄病院に訪問し調査を始めると、首都ハルツームとの人口比と同じような規模の技術格差が見られ、改めてハルツームがスーダンの中心的位置にいることが認識できました。

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理学療法科の建物:茶色の部分のみがリハビリテーション科

ハルツーム教育病院リハビリテーション科(以下リハ科)では、アシスタントではありますが15名近くのスタッフが常時勤務しています。処置内容は患部を温めたりする電気療法と、患者さんと一緒に運動する運動療法です。しかし、カッサラ教育病院ではアシスタント3名のみで対応しているとのことで、人数の差が大きいのが現状です。理学療法士養成大学がハルツームにしか存在していないのも要因のひとつかもしれません。

理学療法を考えるうえで、病院敷地内における患者さんのリハ科への利便性は重要です。ハルツーム教育病院リハ科は院内の隅に位置していますが、そこまでの道路は舗装されています。それに比べカッサラ教育病院のリハ科は、敷地内の隅に位置していることに加え、たどり着くには舗装されていない通路を通らなければなりません。足等に障害を負った患者にとっては、大変不便な環境です。

患者の疾患状況も異なり、ハルツーム教育病院では交通事故、転倒による骨折、慢性疼痛疾患、中枢性疾患(脳卒中)、拳銃等により負傷した方(他州よりの来院が多数)などがいます。カッサラ教育病院ではポリオ、中枢性疾患、地雷の被害者、栄養失調などが多いようです。カッサラでは貧困や以前の内戦の影響がいまだに問題になっているといえます。

例えば、脳神経外科では手術を行っていないというように、カッサラ教育病院で処置が難しい場合、ハルツーム教育病院に搬送になる場合があります。改めてハルツームのスーダン内での重要性や、カッサラとの医療格差を感じました。しかしながら実際、カッサラからハルツームまでは車で8時間程度かかるので、緊急搬送は現実的とは言えないと思います。リハビリに関しても、貧困問題にも直面している患者がハルツームまで負担する金額や移動距離を考慮すると、やむを得ずその選択を断念せざるを得ないことが多々あると考えられます。これらのカッサラ州の現状を勘案すると、障害者への対応はかなり遅れており、彼らへの配慮を向上させることもまた、難しいと考えられます。

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理学療法室内:面積およそ3メートル四方と思われ備品はベッドが2台のみ

しかし、カッサラ教育病院のメリットとしては田舎で小規模であるがゆえに、他部門とのコミュニケーションが取りやすいのではないかと判断できます。つまり、各科と連携して、外来患者のみではなく入院患者をリハビリの対象にすることなどが十分可能であると考えられるのです。もちろん、理学療法士が州内にいないことから実施は簡単ではないとは思います。しかし、ハルツームからの距離を考えると入院患者へのリハビリの需要は高く、また、この小さなコミュニティーだからこそ職員への教育・指導が根付きやすいのではないでしょうか。カッサラ教育病院がスーダンを代表するリハビリ病院として機能することも夢ではないと思います。

スーダンという国を日本からみるとかなり不安定な要素を含む国に見えてしまいますが、国民性は日本と同じで、おもてなしの心を大切にする精神が強く、優しさを大いに感じます。カッサラの人々は生活が厳しい中でも前向きに現実と対峙し、ハルツームではスーダンの中心としての責任を感じながら人々が発展に向け努力しているように感じます。このように立ち位置が大きく異なる二つの町で、地域の発展・向上に少しでも関わり、そこに暮らす人々が豊かな生活を送るための助力となれることを願っています。