カッサラで見つけた最高の調味料

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青年海外協力隊 25年度1次隊 家政
瀬戸山 倫代

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グラーサを焼く女性たち

カッサラの乾いた陽射を和らげる木陰。その下で頂くフトゥール(朝ごはん)は今まで食べたどのスーダン料理よりも美味しく、暑さで失っていた食欲をいつの間にか私の体に呼び戻してくれました。木陰に用意された椅子とテーブルは男性客で満席。グラーサ(スーダンの主食の一つ、甘くないホットケーキのような味)を焼く女性たちの手は休まりません。グラーサにかけるソースを売る女性はてきぱきと注文を取り、忙しいながらもなんだか嬉しそう。満席でもなお客は引かず、料理を盛るお皿が追いついていませんでした。洗い場を確認しながら忙しく配膳する空気をよそに、友人や同僚と語らいながらゆっくりと食事をするお客さん。この食堂の活気の秘密とは…なぜこんなにここの料理はおいしいの…?私はその答えを食堂を運営する女性たちの中に見つけました。

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注文を取りながらソースを注ぐリーダー

この食堂はカッサラ州農業省傘下にある女性グループが運営しています。運営メンバーはリーダーを筆頭に、調理担当の女性が2名、配膳係りの男性2名の計5名です。その活動を支援しているのは、農業省所属の女性グループ担当女性職員とJICAのカッサラ州基本行政サービス向上による復興支援プロジェクト(K-TOPプロジェクト)農業セクターの日本人専門家です。スーダン共和国はイスラム教の国です。イスラム圏では、女性1人での外出や屋外での仕事を控える傾向があります。元は女性を守るというイスラムの教えに基いていますが、現在ではそれが女性の社会進出の妨げになっている現状があります。この国の首都ハルツームにおいては女性の社会進出は珍しくありませんが、首都から500キロ程度離れたカッサラ地方では、その現状が色濃く残り、女性たち自身で新しいことに挑戦するのはとても勇気がいることなのです。今は繁盛している食堂ですが、開店当時は赤字を出し、運営メンバーのやる気を維持できる状態ではなかったと聞きました。経営の苦しさや、女性が運営する難しさなど、多くのハードルがあったようです。しかし彼女たちは苦しいながらも辛抱強く食堂を続け、現在ではクチコミで評判となり、町のはずれに位置しているにも関わらず、わざわざ車でお客さんがやって来るほどの繁盛店になりました。

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食堂の提供メニューの数々

女性たちに人気メニューや食堂の運営について伺ったところ、「どれも人気だから全部食べてみてね。この人数では運営するのは大変なのよ。」と言いながらソースの材料や価格を教えてくれました。ちなみに直径約20センチのグラーサ1枚とソース1種類で7スーダンポンド(日本円で120円程度)。トマトペーストをベースにして、肉や豆、魚、野菜などをそれぞれ煮込んだいくつかの種類があります。売上の一部を積み立てながら、食堂にひさしを設置したり2号店の出店を計画したりと順調のようでした。お皿に盛られたグラーサにソースをかけつつ、他の注文を聞きながら、お金の計算まで、リーダーはとても忙しそうでした。しかしそんな彼女の横顔にはおいしい料理を提供できている自信と、この食堂を守っていくという心地良い緊張感が見えました。繁盛店を日々切り盛りする彼女たちの喜びと、そんな彼女たちから発せられる女性のパワーが食堂の雰囲気を明るくし、料理の味をもっと美味しくしていることに気づきました。最高の調味料ここにあり!

次のステップとして、食材原価意識や効率的な食材購入など今後の改善が期待されています。各月の損益や食材購入履歴などのエビデンスを残していくことで将来、この食堂が自立を目指す女性たちの背中を押すモデルケースとなれるよう、私も何かお手伝い出来たらと思います。この食堂の商売繁盛とカッサラの女性パワーの盛り上がりを祈っています。