地方障害者・理学療法事情−地域を知り、触れ合うことで、できること−

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青年海外協力隊 24年度 短期 理学療法士
磯部 由美

私は現在、ハルツーム国立義肢・装具支援機構の理学療法士隊員として活動を行っています。

今回の調査では、私が活動を行っている首都ハルツームから遠く離れた、地方都市の障害者及び理学療法事情について調査することを目的に、各地域の障害者及び理学療法を必要とする患者について、ガダーレフ(ハサバラ、マンスーラ地区)、カッサラ、ギルバ、ワドエルヘレウにてインタビューを行いました。

途上国の障害者問題は、開発事業から置き去りにされていることが多いのですが、世界保健機構(WHO)の推計によれば、世界の全人口の10パーセントは障害者であり、うち80パーセントが開発途上国に居住し、事故、紛争、災害、一部の慣習などにより障害者の数は先進国よりも多いと言われています。

どの地域でも、リハビリテーションや理学療法に関しての認知度は低く、多くの情報を得ることは困難でした。ガダーレフでは昼食をごちそうになったお宅にたくさんの女性が集まってくれていましたので、「障害を持つ子どもや女性はいませんか」「彼女達は膝の痛みや腰痛を持っていませんか」と聞いたところ、「生まれつき障害のあるお子さんを見たことがある」、また、「村の女性達は膝や腰の痛みはない」という返答がかえってきました。

カッサラでは、州の中核病院に理学療法科があり、そこにいる3名の理学療法士助手が患者さんに理学療法を提供しています。その3名が州唯一の理学療法実施者で、マッサージや電気治療、関節を動かす運動を提供しているとのことでした。主な患者の症状は、脳卒中や頭部外傷による麻痺、先天的な麻痺、先天性の手足の変形などのようです。

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カッサラサテライト義肢装具センターの理学療法室

カッサラの都市部では糖尿病も多く、義肢装具センターを訪れた際には、糖尿病による足切断患者や先天性の手足の変形に対し装具が必要な患者がいることがわかりました。さらに、カッサラでは、内戦時に使用された地雷がまだ残っており、地雷が原因で切断に至ることもあるとのことでした。ガダーレフやカッサラではマイストーマという土に存在する菌が原因で足を切断する方も多くいるようです。義肢装具センターには立派な理学療法室がありますが、理学療法士がいないという状況でした。

ギルバでは、骨折後のリハビリテーションが十分でないため、骨が変形したまま固まってしまったケースが多くあるとのことでした。また、ここでも糖尿病患者が多いということがわかりました。糖尿病はきちんとした血糖のコントロールができないと、小さな傷から足が腐り、切断をしなければならなくなります。数名の障害者の方も見つけました。生まれつき足がとても短い人、車椅子を使用している人、片腕を切断した人、両方の杖を使用して何とか歩いている高齢者、1時間程度の訪問中に実に多くの身体に障害を持った方々を見かけましたが、彼らが地域に入りこんで生活している様子を目の当たりにし、喜ばしく思いました。小学校を訪問した際には、足に障害のある数名の子ども達が普通校で学んでいるものの、視覚や聴覚に障害を抱える子ども達は、カッサラ中心部にある特別学校に行くと聞きました。しかし、この地域からは遠く、通うことができないので、現実問題として障害を持つ子ども達が教育を受けるのは難しいのではないかと感じました。

ワドエルヘレウでは、生まれつき体が不自由であったり、感染により熱を出す人たちが多いと聞きました。感染による高熱を放っておくと脳に障害がでたり、手足に麻痺が残ったりすることもあります。

医療従事者や施設が少ない地域では、日本のようなリハビリをそのまま提供することは難しいですが、すでに行われている健康に関連した啓発でも障害の一部を減らせます。また、今回の調査より、すでに地域で活動している障害を持つ方々がいることがわかりました。その方々と協力することで、障害を持つ方やその家族により良い生活をしてもらえるのではないかと感じました。今後は、これら地方で同僚とさらに詳しい調査を行い、「どのような障害者・理学療法支援ができるのか」を各地域、ニーズに合わせて検討し、暗いイメージではなく、ポジティブな障害者支援を考えて行きたいと思います。