キッズテニス イン モンゴル(4/5ページ)

農業分野:複合農牧業プロジェクト

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首都ウランバートルから車に乗ること3時間。モンゴル第3の都市ダルハンで、9月6日、第2回目のキッズテニスが開催されることになっています。1泊2日でダルハンへ移動する、その往路途中に「複合農牧業プロジェクト」を視察しました。

モンゴルでは皆さんもご想像されると思いますが、減ってきているとは言え遊牧民の文化を持つ国ですから、牧畜業が大変盛んで、今も多くの人が行う、国の基幹産業です。

今回視察させていただいたのは、ゾンドイさんが代表を務める農家グループのじゃがいも畑。ゾンドイさんはモンゴルの農家の中では珍しく、牧畜業ではなく野菜、特にじゃがいも栽培が仕事の中心です。肥料や温度の管理をよく行い、近くに流れる大きな川から広い畑にも水やりができることで成功していますが、他の地域では初期投資(水をくみ上げるためディーゼルモーターを入れる等)がかかることもあり、何より経験がある人が少ないことから、挑戦する農家はまだ多くはないとのことでした。

ゾンドイさんはじゃがいもをはじめとする野菜栽培に頼る農業経営を、JICAによる協力で乳牛を飼育し、牛乳や加工乳製品からも現金収入が得られるように奮闘しているところです。「供与された牛を大切にしなければ」と、この時期から牛が健康に冬を越せるよう、小さな牛舎の建築を開始していました。

このプロジェクトに専門家として派遣されている木下さんの説明によれば、プロジェクトはゾンドイさんのような農牧業グループを24選び、それぞれにあった農業経営、技術指導を行なっているとのこと。「ゾンドイさんは成功している方」とのことでしたが、長年牧畜業しか手がけて来なかった農家が、新しい技術に挑戦するのは非常に大変なことであろうと思いました。しかし、モンゴルでも野菜を好む人や、食の安全を懸念する人が増えているそうです。こうした農家の挑戦は、まさにモンゴルの人々のニーズに応えてのものであると実感しました。

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じゃがいも畑で働く人々が休息を取る作業小屋で、ゾンドイさんの奥様たちが、私たちに畑から採れたての野菜、JICAが供与した乳牛の乳から手作りした料理の数々をご馳走してくれました。キュウリやトマトのピクルス、キャベツサラダ、ヨーグルト、アーロール等々。牛乳が苦手の私も「ここは」と思い、アールツというモンゴルバターにチャレンジ。でも、やっぱりゾンドイさん自慢のじゃがいもサラダが一番、美味しかったです。

教育分野:ダルハン職業訓練校

市場経済化以降、依然として失業率の高いモンゴルでは、職業訓練が重要な課題の1つになっています。

今回視察させていただいたダルハン職業訓練校では、シニア海外ボランティアの冨山和彦さんが、調理師として将来的に働きたいと考える人材を対象に料理技術を指導しています。この日はちょうど「天ぷら」の作り方を実技指導しているところ。まさに親方と弟子といったイメージで、モンゴルの生徒たちも熱心に学んでいました。

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日本でも最近、朝青龍や白鵬ら、モンゴル出身の力士たちの活躍で、モンゴルがよくテレビや雑誌に登場するようになりましたが、近年、日本のみならず欧米を中心とした各国から、モンゴルの大草原や乗馬体験、ゲルでの生活や遊牧民等の出会いを目的に観光客が年々増加しているそうです。

特に外国からの観光客のニーズを考えたとき、モンゴルだけの調理技術ではそれに応えることが難しいので、包丁さばきや材料の処理の仕方等、調理技術を教える人たちが必要とされています。そうした技術を身につけた人材ならば、仕事を得ることができると、職業訓練校の先生方の期待も大きいことを感じました。

冨山さんは、単に技術だけでなく、モンゴルで手に入る材料でできる日本料理や、日本人が好む味や盛り付け等も、丁寧にレクチャーしています。まだダルハンに日本料理レストランはないということですが、何年後かには冨山さんの「弟子」たちが、日本食レストランをオープンしているかもしれないですね。

教育分野:オユニーレドゥイー統合学校

職業訓練校と同様、観光や貿易等、年々増え続ける外国人とのコミュニケーションの機会に適応すべく、外国語教育も重要になっています。加えて、とても親日的な国民感情ということもあり、JICAモンゴル事務所のスタッフだけでなく、街を歩いても、お店に入っても、日本語を話す、あるいは日本人と話してみたいと思うモンゴルの人が多いようで、私も話しかけられて驚くことが滞在中、しばしばありました。

今回、訪問させていただいたオユニーレドゥイー統合学校では、青年海外協力隊員の小出知子さんが日本語教師として、子どもたちに日本語を教えていました。

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私は日本の高校生1年生に当たる生徒たちの授業を視察しましたが、この夏、日本に研修に行く機会があったということで、その研修の内容や日本滞在の印象等をスピーチしてくれました。「礼儀正しいところが良いと思いました」「大変暑くて、モンゴル人には厳しい環境でした」など、時にユーモアも交えた発表にとても感心しました。

モンゴルに来て感じたことの1つは、特に女性が言語能力に長けているなあ、ということ。流暢に日本語を話せる人の多さには本当にビックリしました。

今年、2007年は、モンゴルに対して初めて青年海外協力隊が派遣されてから、15年という記念の年だと伺いました。初代派遣隊員にすでに「日本語教師」が含まれていたとのこと。今回は私が視察するということで、小出隊員は生徒が前面に出て、私と話ができるように工夫してくれていましたが、きっとこの日まで生徒たちを指導しながら、一緒に準備をしてくれたのだろうと思います。

日本語を流暢に話すモンゴルの人々の後ろには、きっと大勢の青年海外協力隊の皆さんの力があるのでしょうね。