2004年2月3日(水曜)
北澤さんはよくメモをとります。今回の旅では多くの人に出会う機会がありましたが、訪問する先々で北澤さんはその人々の声に耳を傾け、そして真剣にメモをとっていました。聞いたところによると、北澤さんはそのメモを、ホテルに帰ったあとで整理しているとのこと。与えられた責務に真摯(しんし)に取り組むその姿勢に、アスリートとして一流であるばかりではない北澤さんの一面を、うかがい知ることができました。
訪問したプロジェクトでは、数ある候補地から選定されたパイロット(実験)地区で、住民参加を最大限に引き出しながら、保健教育と環境衛生改善のための活動を実施しています。このプロジェクトの最大の特徴は、地域住民を巻き込んだ活動の運営にあります。最終的に住民たちだけの力で、活動を継続させることが、プロジェクトの大きな目標の一つになっています。
今回訪れた「ジョージ居住区」では、予防接種の様子や寸劇による啓蒙活動が行われていました。また、プロジェクトで活動する女性たちが北澤さんの訪問を熱烈な歌と踊りで歓迎してくれました。
2004年2月3日(水曜)
サッカー教室は「ギンガギガ」に照りつける太陽の下で行われました。ルサカ市でサッカーを教える山田亮隊員の生徒も交えた子供たち75名に対し、コミュニケーションに重点を置いたパスワーク、ワンタッチでのボール回し、ゲーム形式での実戦など本格的な指導が3時間繰り広げられました。
指導の途中、右足でしかボールを蹴らない少年を近くに呼んで北澤さんは言いました。
「君の素質は素晴らしい。これで左足を使うことができれば、君のプレーの可能性はもっと広がるよ」
後で聞いたところ、その少年は帰り道で「明日からは左足しか使わない!」と高らかに宣言していたそうです。
7日間でザンビアを往復するという過密な日程を、北澤さんは現役時代と同じ豊富な運動量で精力的にこなしました。成田空港での別れ際に、北澤さんはこう言ってくださいました。
「JICAでサッカーチームを作って、世界中を回りましょう。また声をかけてください」
北澤さん、本当にありがとうございました!
2004年2月7日(土曜)
ザンビアから帰国して40時間後、北澤さんはJICA横浜で開催されたシンポジウム「ピース・トーク・マラソン」のゲストとして舞台上に立っていました。現役時代のタフな体力は今も健在です。
シンポジウムでは、ザンビアで視察したJICAの活動やサッカー教室での子供たちとの触れ合いなど、まさに経験したての多くの情報を、市民の皆さんの前で披露してくださいました。
当日ご来場された方々からは、「北澤さんのように、何か自分にできることで社会貢献をしてみたいと思った」というようなご意見をたくさんいただきました。