北澤豪 南米に挑む(2006年2月)(4/4ページ)

2006年2月8日(水曜)

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エドガード・パラシオス文化財団音楽学校のみなさんの演奏で、北澤さんも子どもたちと一緒にダンス

柏木素直隊員(職種・音楽)が活動するエドガード・パラシオス文化財団音楽学校を訪問しました。キトにある柏木隊員の配属先では幼児から30代までの知的、視覚などさまざまな障害を持つ人たちが学んでいます。この学校はオーケストラを編成しており、柏木さんは彼らに音楽指導などをしています。オーケストラの生徒たちは北澤さんの前でエクアドルの民族音楽などを、舞踊とともに披露してくれました。

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赤道記念碑の前に立つ北澤さん

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「やった。卵が立った!」

午後から行われるサッカー教室の会場は、赤道記念碑の近くにあるサンアントニオスタジアムです。エクアドルは、スペイン語で「赤道」の意味をもつ、赤道の通る国の1つです。サッカー教室が始まる前、赤道記念碑、そして赤道直下の文化博物館を見学しました。

この博物館で北澤さんは貴重な体験をしました。ここは赤道直下であるため、地球の遠心力の影響で、重力が南北均等に働くため、さまざまな不思議な体験ができるといわれています。そんな1つが、釘の上に卵が立つこと。ただし、すべての人ができるわけではありません。しかし、北澤さんは見事成功!その成果を表して、同博物館から証明書をもらいました。実はこの後、まだ余談があります。たまたま撮影に来ていた韓国のテレビ局、KBSのクルーが北澤さんだとわかり、取材を開始したのです。「JICAのオフィシャルサポーターとして、エクアドルの日本の協力の視察に来ています」。北澤さんは韓国の人たちにもしっかりPRしてくれました。

そして、いよいよサッカー教室の開始です。ここでは地元の複数の少年サッカーチームを対象に、コーンを使ってドリブルなどの基本練習を行いました。折をみて、一人ひとりに北澤さんはアドバイスも与えています。

ここではサッカーチームのコーチたちが熱心にメモを取る姿が見られました。コーチの1人はこういいます。「標高の高いキトは高山病になる人もいるほどで、ここでのサッカーの国際試合は外国人にはデメリット。そんな環境を生かして今回のW杯に出場するようなもので、わが国のサッカーの基礎はあまりないと思います。W杯に3回連続して出場する日本のすばらしさは、北澤さんの練習を通して実感しました。ぜひ日本にサッカーの指導者向けの勉強会などをしてもらいたい」。そんな言葉を反映するかのように、サッカー教室の後、北澤さんはコーチたちに囲まれて質問攻めにあっていました。また、このサッカー教室の運営には佐藤敏幸隊員、増田稔隊員、中井律彰隊員、森高紘介隊員、浅沼直沙隊員が手伝ってくれました。

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サンアントニオスタジアムのサッカー教室に参加した子どもたちと

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パラグアイだけでなく、エクアドルでも北澤さんは現地の多くのメディアから取材を受けた

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サッカー教室の後、コーチたちからサッカーの指導に関する質問を受ける北澤さん

2006年2月9日(木曜)

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「JICACUP」の優勝校、ホセミゲル・サラサール小学校のみなさんと北澤さん、そして同校で活動する佐藤敏幸隊員(左)

マチャチ市のマチャチスタジアムで、JICA主催のサッカー大会「JICACUP」を開催しました。マチャチ市近郊で小学校教諭として活動する佐藤敏幸隊員、佐藤陽子隊員、森高紘介隊員、山崎綾子隊員の配属先の小学校から8チーム出場がしました。接戦と熱戦が繰り広げられた末、ホセミゲル・サラサール小学校が優勝しました。

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野澤征夫専門家からスライス盤について説明を受ける北澤さん

その後、キトで実施されている技術協力プロジェクト「職業訓練改善」を北澤さんは視察しました。このプロジェクトは、工業分野の人材育成強化を図るため、職業訓練校へ実習教材や機材整備などの協力を行っています。職業訓練校で、電気・電子、機械加工などの機材を見ながら、北澤さんは阪堂宗孝チーフアドバイザーらに積極的に質問していました。「読売クラブ(現東京ヴェルディ1969)の前に、本田技研工業のサッカー部にいたので、新入社員のころはここにあるような機材を使った研修も受けました。懐かしいなあ」と感慨深い表情でした。

2004 年からオフィシャルサポーターになった北澤さんは、これまでにアフリカ・ザンビア、中東・シリアでJICA事業の視察とともに、現地の子どもたちを対象にサッカー教室を行ってきました。しかし、今回のように1回の視察で、2カ国で活動したのは初めてです。「南米の多様な自然環境などを知ることができました。また、サッカー大陸ともいえる南米で、自分のサッカーがどこまで通じるか、挑戦でもありました」と北澤さん。そして、「手ごたえは十分でしたか?」の問いに力強くうなずいてくれました。