「道路プロジェクトを通じて見たタジキスタン」三田 博司さん vol.2

2019年2月6日

前回は、タジキスタンの道路プロジェクトに携わる三田さんから、ご本人が国際協力に携わるようになった経緯や、タジキスタン滞在中の経験についてお話を伺いましたが、今回は、主に三田さんが携わるプロジェクトについて詳しくお話を伺います。

関連リンク:

道路補修の指導だけではない、災害のマネージメントにまで取り組む

-今回の技術協力「道路災害管理能力向上プロジェクト」(2017年4月~2020年7月)では、どのような活動を行っているのでしょうか?

前回の技術協力「道路維持管理改善プロジェクト」(2013年10月~2016年11月)では、タジキスタンの運輸省と、その傘下にある道路管理局に対して、道路の維持管理に必要な道路の補修や舗装点検の仕方を指導しました。

今回の「道路災害管理能力向上プロジェクト」では、カウンターパート機関である運輸省と道路管理局への技術移転として、新たに「災害管理」をテーマに設定しました。この災害管理というのは、毎回同じ場所で災害が起こり、それに伴う復旧をその都度何度も繰り返し行うのであれば、同じような災害が起こる前に前もって予防保守を行うというものです。

【画像】

2018年7月に発生した地滑り災害(アイニ地区)

災害管理にあたっては、まず初めにハザード評価という作業を行います。これは、地形を観察分析してその危険度を数値化し、評価する作業のことです。また、ハザード評価の結果をパソコンを使ってデータベース化し、災害管理に必要な制度の整備に向けた技術指導を行っています。

そして今回のプロジェクトの新しい挑戦は、災害管理に関わる項目を運輸省の予算に組み込んでもらうという取り組みです。

前回の「道路維持管理改善プロジェクト」では、運輸省の舗装点検と舗装補修の技術力強化だけが目標だったのですが、今回のプロジェクトは現場指導だけでなく、一段階上の、組織の強化と予算編成能力向上まで踏み込んでいます。

-革新的かつ困難なプロジェクトですね。

現在の一番の目標は、2021年度の運輸省の会計予算に、災害管理に関わる予算を計上してもらうことです。

関連リンク:

それぞれのニーズに合った指導法を

-三田さんがプロジェクトの実施において工夫していることがあれば教えてください。

私はプロジェクトを進める際、「人材育成」の視点を重要視しており、そのためには、カウンターパートのレベルと経験値を十分に理解することが大事だと考えています。

例えば、先ほど触れたように、このプロジェクトではパソコンを使って、災害管理に必要なデータベースの作成に取り組んでいます。しかし、旧ソ連末期から内戦終了を経て、現在に至るまでの間にパソコンの導入が大きく遅れたため、運輸省の中でもいまだ年配の方々は、パソコンの扱いが出来ず、手書きにこだわっています。逆に、若い人々はパソコンやスマートフォンといったツールを積極的に使おうとしています。

また、最近は学校でロシア語教育の時間が国策により減ってきて、タジキスタン国内でもロシア語を充分に話せない若者が増えてきています。この国で使われている主な技術系の教本は、基本的にロシア語で書かれているのですが、学校でロシア語教育を充分に受けていない人たちは、これらの教本を読むことができないという問題があります。そういった背景をふまえて、彼らにはどんな指導法が適しているのかを考えています。

-それぞれの年代にあった指導法を考えているんですね。

そうですね。年代によって、関心を持ちやすい項目に焦点を当てることが大事だと思います。

前回の「道路維持管理改善プロジェクト」でも、カウンターパート機関の若いスタッフの方々が関心を持ちやすかったのは、やっぱりパソコンを使って作業をするということでした。例えば、パソコンを使うことにより道路の舗装点検を省力化することができるのですが、「道路のデコボコ度合いが分かる」というようなことを目に見える形でわかりやすくする作業が、若い人たちにとっては新鮮で、受け入れやすかったのかもしれません。

逆に、年配のスタッフの方々は、コンピューターを使っての省力化よりも、新たに供与された舗装補修に使われる機材の動かし方を学習し、舗装補修を効率的に行いたい、ということで、そちらに焦点を当てて指導を行うことにしました。

-個々人の関心に合わせて指導を行ったのがよかったかもしれませんね。

そうですね。たとえ国が違っても、人対人であることには変わりませんから。

組織内の改革を全力でサポートしたい

-今回の「道路災害管理能力向上プロジェクト」では、今後どんな成果が期待されていますか?

今回のプロジェクトが開始されてから、ちょうど中間点(20ヶ月)が過ぎたばかりですが、すでにカウンターパートに関して思った以上の成果が出ています。運輸省の道路災害管理体制が強化されることが今回のプロジェクトの目標の一つですが、既に組織内において、職員らが「自分たちが当事者である」とか、「もっと(災害管理のための)制度を整えるべきだ」と発言するようになっているんです。

組織内で改革マインドに目覚めたこのような人々に対して、我々は全力サポートしていくべきだと思っています。

-すでにカウンターパート機関の中から、意識が変わり始めた人々が出てきているということですね。

私たちがタジキスタンに滞在する期間は決まっています。我々の帰国後からは、運輸省の職員らが実際に自ら活動していく必要があるのですが、もう彼ら自身で積極的に話し合いを行う段階にまで来ているんですよね。

組織全体を動かすには具体的なデータで裏付けをしないといけない面もありますが、「じゃあそのデータはどうやって作成しようか」などといった話し合いも既にカウンターパート組織の内部で行われています。

記憶はないけど踊っていた…?

-プロジェクトに関する裏話があれば教えてください。

前回の「道路維持管理改善プロジェクト」での滞在中、中央アジアの伝統的なお祭りとして、3月春分の日に行われるノウルーズ(タジキスタンの正月)のお祝いに呼ばれたことがありました。私はそのとき、運輸省職員らと一緒にウォッカを囲んで楽しく時を過ごしました。日本にいればウォッカなんて飲む機会が全くないんですけどね。

その後は職員らと一緒に地元の踊りを踊りに踊りました。でも、あんまり記憶にないようです。それから、2日間寝込んでしまったんですよね。(笑)

私が踊っているのを見た運輸省の職員は、「日本人でもあんな愉快なことをするんだな」と思って心を開くきっかけになったと信じています。

-信頼関係を築くためには、そのように相手の文化に飛び込むことが大事かもしれませんね。

私は世界各国で仕事をしてきましたが、誠心誠意相手と話して、自分の意思をきちんと説明すること、そして相手の意見や文化を尊重することが大事だと思います。それはタジキスタンにおいても同じだと考えています。

今回は、主に三田さんの携わるプロジェクトの事業内容についてお話を伺いましたが、次回も引き続きプロジェクトに関する三田さん独自の取り組みや、ご本人のタジキスタンへの想い、また、日本の道路インフラ支援に関して詳しくお話を伺います。

関連リンク:

プロフィール

三田 博司さん
大学卒業後、ゼネコン関連の会社に入社し、2010年に建設技研インターナショナルに転職。専門家として様々なODAのプロジェクトに携わっており、タジキスタンでの業務には2013年から6年間従事している。

聞き手
松田 実樹
JICAタジキスタン事務所による大阪大学との連携に基づく学生インターン。
活動期間2018年10月~2019年1月