「日本と私-タジキスタン人の日本企業現地駐在員として-」ハムロエフ・アスラムさん vol.2

2019年2月13日

前回は、アスラムさんが日本語を学ぶことになったきっかけや日本での生活体験ついてお話を伺いました。今回は、アスラムさんが業務を通じて考えたこと、ご本人のキャリアパスに関してもお話を伺っていきます。

最後にはアスラムさんから、日本語を学ぶタジキスタンの若者や日本の同世代の若者に向けてのメッセージも頂きました!

関連リンク:

曖昧な表現の日本語の難しさ

-アスラムさんは業務の中で、日本語とタジク語の通訳をされる機会が多いかと思います。通訳の技術はどのように習得しましたか?

通訳の技術は大学ではほとんど勉強する機会がなく、社会人になってから独学で学びました。プロの通訳者のビデオを見たり、通訳者の本を読んで勉強し、実際に現場で活用しながら自分の通訳技術を確かめることを通じて、徐々に理解を深め技術が向上してきました。

-そうなんですね。通訳で苦労されていることはありますか?

やはり曖昧な日本語の通訳が難しいですね。なんといっても微妙な表現が多いですから、話し手によっては通訳の時に非常に困ります。

-例えば、ビジネスの場合で、「それは難しいと思います。」や「厳しいですね。」という日本語がありますよね。それはつまり「できない」という意味ですが、外国人からしたら非常に分かりにくい表現だと思います。このような分かりにくい日本語のニュアンスは、どうやって通訳していますか?

まずは自分自身でどういう風に通訳をすればいいのかを考えるのですが、微妙なときは、「こうやって通訳したいんですけど、どうしたらいいんですか」と、必ず話し手に聞くようにしています。

-日本人はYes/Noがはっきり言えないですもんね。

欧米圏の人たちははっきりものを言いますが、ロシア語圏の人たちも物事に白黒をつけたがります。日本人の場合はちょっと曖昧ですから…。(笑)

-タジク人は白黒はっきり発言するのですか?

はい。タジク人もはっきりしています。

実は、「できません」と言う場面でも、「はい、できます」と言ってしまうんですよ。なので、それで誤解を招くのではないかと心配の種の一つでもあります。

-それは業務を進める上でも大変ですね。

例えば、仕事においても「明日行けます。10時に待っています。」とはっきり言うんですけど、その当日になっても相手はやって来ない、という場合が多々あります。

-それではアスラムさんが1番困りますよね。

そうなんですよ。できなくても、タジク人は「できる」と言ってしまうところが、ちょっと困りますね。
でも最近では、タジク人と日本人とのやりとりを上手く通訳できるようになってきていると思います。要は慣れかもしれませんね。

タジキスンと日本では異なる文化・価値観

-アスラムさんは通訳以外でも、日本とタジキスタン間の異なる文化・価値観に基づく考え方の違いを説明する等、日本人とタジク人の間の橋渡し役を担うことが多いと思います。その点で難しく感じることはありますか?また、どのようなことに留意されていますか?

ご存知かもしれませんが、タジク人は冗談が大好きです。仕事上でも仲良くなると、同僚同士で冗談を言ったりするんですが、これが日本人相手だと少し困る時があるんですよね。業務中にタジク人の同僚に冗談を言われて、最後に「通訳しないでね」と言われると、何も言えないんですよ。そうすると、日本人の方には「アスラムはちゃんと日本語を理解しているのかなあ」と思われるのではないかと心配になります。

仕事を始めた時は、このことに関しては、とても困っていました。でも、最近では自分でいろいろ考え、「通訳は通訳ですから、どんなことでも通訳しますよ」と決めました。

-自分でルールを決めたんですね。

はい。で、悪口もちゃんと通訳します(笑)。

-もし同僚の人が冗談を言っていたら、そのまま通訳するんですか?

はい。いつも言います。自分が言ったことではないので。言葉をそのまま通訳して、何か言われたら、「直訳です」と言います(笑)。

-なかなか難しいですね。日本人は、冗談をあまり言わないですよね。

そうですね。海外によく行かれる日本人の方は、外国人のジョークにも慣れています。しかし、海外にあまり行かれていない方々は、本当に日本人そのものですから、外国人の性格とか、習慣とかあんまり分からないんですよ。そのときはちょっと困ったりしますね。

-また、日本人は「きっちりと時間を守る」とよく言われますが、この点で苦労される点はありますか?

そうですね。ここの人はあまり時間を守らないんですよ。もちろんほかの国もそうだと思いますが…。

打ち合わせのアポの時間を調整する時も、10分前にしようかな…、もしくは、10分後にした方が良いかな…と、よく考えなければいけません。

学んだ日本語をキャリアに活かすために

-アスラムさんは留学から帰国後はどう過ごされたのですか?

私は留学から帰国後、タジキスタン言語大学で残りの1年を過ごし、22歳のときに言語大学を卒業しました。大学を卒業する1ヶ月前に、現在働いている会社から、まずはアルバイトとしての仕事を得ました。アルバイト契約が終わってからは、日本で就活を始めました。

-日本の就活のように、説明会に行かれたのですか?

いいえ。いろいろご縁があり、3社と面談をして、その中から現在の会社に決まりました。就活をサポートしてくださった方々、それから社内研修で指導してくださった方には非常に感謝し、今後は会社の発展に貢献できるよう全力で活躍して参ります。

自分自身を見つめ直すことが大事

-大学で日本語を学んでも、残念ながら現状では、タジキスタンで日本語を使える仕事や職場は極めて限られています。アスラムさんは現在の職業に就くために何をしてきましたか?特に学生時代のうちにやっておくべきことは何でしょうか?

【画像】

留学当時のアスラムさん(新潟大学にて)

まず夢を持つことですね。夢がないと、何もしようとしません。そしてその夢を目的に変えることですね。その目的を得るために、計画を立て、一歩ずつその夢と目的に向けて勉強することが大事だと思います。もちろん、最初は言語をマスターすることが必要なので、最初は真剣に勉強してください。

また言語だけではなく、通訳者の技術も必ず勉強してください。日系企業に就職する、もしくは日本に関係のある仕事をする際には、必ず通訳や翻訳をする機会が出てきます。

-言語の勉強の他にするべきことはありますか??

性格や考え方について自分自身を見つめ直すことが非常に重要だと思います。日系企業で活躍するためには、自分の考え方を日本人の考え方に合わせて業務を遂行していく必要があります。その中でも、日本人に信用してもらえるように努力することが一番大事ですね。自分の考え方に固執するやり方から、柔軟に対応できるようになるというのは、つまり、成長するということですよね。そこまで行けば、信用を獲得できるようになると思います。

先ほど申し上げた曖昧な日本語に関しても、「なんでこの人はこんな風に曖昧な日本語を使ってるんだろう?」ということまで読み取ることができれば、大体相手の考え方が分かると思います。

-学生当時、アスラムさんにとっての夢は、日本に行きたいということでしたか?

【画像】

新潟大学の学長(左から2番目)を囲んでの学友ら(両端)とアスラムさん(右から2番目)

最初は、この言語を学ぶという夢だったんですよね。私の場合は、日本語を勉強し、何をしたいかということを学生時代によく考えました。まずは計画を立てて、じゃあ、日本語を学んでから何がしたいですか。仕事したいです。どこですか。日本か、タジキスタンか。タジキスタンの場合も日本の場合も、まずは日本語ができないといけないですよね。日本語を勉強するのに、もちろんここでは基礎が1番大事ですね。基礎を学んで、やっぱりどんな言語でも、その国に行かないと、勉強することができないじゃないですか。なので留学を決めました。

-まずひとつ夢を持ったら、目的を細かくしていくことが大事なんですね。

そうですね。少しずつ目的を増やして、具体的に近づいていくことが重要だと思います。 そして、真剣に勉強することに加え、人脈を増やすこと、それから、ネットワークを作ってください。

-言語大学の日本語専攻同士のネットワーク、また日本に留学した先輩の知り合いを増やすということですか?

そうですね。それから、現地にいらっしゃる日本人の方々とのやりとりも大事ですよね。

メッセージ

-現在日本語を学んでいる言語大学の後輩の方へのメッセージをお願いします。

繰り返しになりますが、夢を持ってください。日本語を学んでも、就活先がありませんとか、日本に留学をしようとしても、留学にいけません、という考え方を忘れたほうがいいです。積極的に言語を学んで、留学できる道を検討したほうが良いと思います。どんな言語を学ぶにしても、その国に行って留学しなければいけないと私は考えています。

-留学したことが、アスラムさんにとっては選択肢を大いに広げることになったんですね。

そうですね。留学は、1年間の短い期間ですが、自分の人生の中でも特別な1年間でした。その1年間が、これまでの自分の人生、つまり運命に影響をすごく与えています。日本へ留学した1年間の経験が、これまでの自分を守ってくれていると感じています。だから、日本に留学してとても良かったと思っています。

-日本人の同世代の若者へのメッセージをお願いします。

留学時に知り合った日本人の友人の中に、JICA関連の仕事で外国に行っている人たちが何人かいるんですよ。そういった方々に向けてのメッセージなんですけど、海外でもたくさん学んで、日本をさらに発展させるなど、母国に貢献できるような人材になってほしいです。

-アスラムさん、本日は貴重なお話をありがとうございました!

終わりに

タジキスタンでご活躍されているアスラムさんへのインタビューを、2回に亘ってお届けしましたが、いかがでしたでしょうか?

取材にあたり、アスラムさんが普段業務を行っている事務所にお邪魔したのですが、業務中にも関わらず快く取材に応じてくださいました。

このインタビューを通して、タジキスタンという国について、また、国際協力に携わる方の想いを少しでも伝えることができれば幸いです。

プロフィール

ハムロエフ・アスラムさん
タジキスタン国立言語大学日本語専攻を卒業後、アジア共同設計コンサルタントに入社。現在は日本からコンサルタントとしてタジキスタンに駐在し、JICAの変電所プロジェクトに携わっている。趣味はフットサル。ぺンジケント出身。

聞き手
松田 実樹
JICAタジキスタン事務所による大阪大学との連携に基づく学生インターン。
活動期間2018年10月~2019年1月