「給水プロジェクトを通じて見たタジキスタン」松田 和美さん vol.3

2019年1月31日

【画像】

ハマドニ行政郡の水道メーター設置工事では水道の蛇口が日本製のものに交換された(2018年6月8日撮影)

前回は松田さんの携わる給水プロジェクトについてお話を伺いましたが、最終回となる今回は、プロジェクトのこれから、また国際的な課題SDGsの水道分野における取り組みについてもお話を伺っていきます。
最後に松田さんから、将来国際協力に携わりたいと考えている日本の若者や学生に向けてのメッセージも頂きました!

グッド・プラクティスの普及を目指して

-今回の技術協力「ピアンジ県・ハマドニ県上下水道公社給水事業運営能力強化プロジェクト」(2017年4月~2020年4月)を通して、今後ピアンジ・ハマドニ両上下水道公社には何を期待されていますか?

【画像】

ハマドニ行政郡で業務を行う現地コンサルタントのファクリディンさん(左から3番目)(2017年8月22日撮影)

現在、JICA及び日本政府は、タジキスタンに対して給水分野を支援の重点分野として位置づけています。JICAは、ピアンジ行政郡の給水施設のように、ハード面での良いモデルとなる施設を実際に建設するのに加えて、本プロジェクトを通じて、水道事業の運営管理に係る最適なモデル(各種業務管理ツール)を構築する、ソフト面での技術移転の支援も行っています。

例えば、前回話したような、ピアンジ行政郡・ハマドニ行政郡の一部地域で行われている水道料金の従量料金制導入、また、両上下水道公社の会計の国際基準化といった新しい試みが、経営者、そして上層部にフィードバックされ、タジキスタン全域の上下水道公社にも普及されることが期待されます。

今後はこのようなハード面及びソフト面での水道事業のグッド・プラクティスが全国に普及されていくと見込んでいます。

タジキスタンにおける民間投資のチャンス

-タジキスタンでの水インフラ事業においては、今後どんな投資ができると考えていますか?

タジキスタンは内陸国であるため、インフラ建設資材を輸入しようとすると内陸輸送をしなければならず、多額の輸送費が必要です。特に水道施設を建設するに当っては、その主要資材である配管材(水道管)を輸入するための輸送費が莫大になります。配管材は中空なので、空気を運んでいるようなものですが、輸送費は容積あるいは重量のうち大きい方で費用がかかるため、配管材は軽くても容積をとるので、多額の輸送費が必要になってきます。

鉄製の配管材をこの国で作るのは難しいですが、塩ビ管やポリエチレン管のようなプラスチック系の配管材は、原材料を輸入してタジキスタン国内で成形・製造することで、将来の給水施設の整備費を大きく抑制できる可能性があるのではないかと思っています。

プラスチック系の配管材を製造するためには、大きな設備や高度な技術を必要としないため、日系企業の技術支援と投資で、当地に配管製造の現地法人を立ち上げるなどのビジネスが考えられます。

ミレニアム開発目標(MDGs(注))から持続可能な開発目標(SDGs)へ

-持続可能な開発目標(SDGs)を水インフラ分野において達成するためには、何が必要なのでしょうか?

【画像】

ピアンジ上下水道公社では、現地コンサルタントがオペレーターに高架水槽の運転指導を行っている(2017年8月9日撮影)

例えば、水道分野において、「施設を作って、水道の普及率をあげましょう」というような目標は、MDGsからSDGsにそのまま引き継がれています。しかし、SDGsでは、「いわゆる“モノ”だけ作ってもだめでしょ、それがきちんと動かないと意味がない」という、サステナビリティ、いわゆる持続性に関する項目が新しく加わっています。

SDGsにおいては「Sustainable Coverage」(持続可能な普及率)という指標があります。これを給水プロジェクトの観点から例えると、「10万人に給水できたので、これだけ給水率が上がりました」というのではなく、「持続的に給水施設の運転管理を行っています」というのが今日では問われています。

前回の無償資金協力プロジェクト「ハトロン州ピアンジ県給水改善計画」(2014年6月~2016年12月)では、ピアンジ行政郡にて給水施設を作りました。しかしそれでおしまいだと、その運営に関わる上下水道公社の職員らは、きちんと給水施設を運営できないかもしれませんよね。今回の技術協力プロジェクトのように、水道事業として継続できる能力と技術の習得に向けた支援を行う技術協力が必要不可欠であると考えています。

特に水道分野に関しては、日本は優れた技術をもっているので、JICAが積極的に支援していかなければいけない分野だと思っています。

(注)MDGsとは、SDGsの前身として2000年に国連により掲げられたミレニアム開発目標のことです。MDGsは開発途上国の貧困削減を掲げ、2015年を達成期限としています。2015年からは新たに持続可能な開発目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)が国連の目標として設定されました。

関連リンク:

中央アジアの中でも高いポテンシャルの人々

-今後、タジキスタンはどんな国になっていくと考えていますか?

【画像】

松田さんとJICA職員によるハマドニ上下水道公社訪問(2017年8月23日撮影)

タジキスタンは旧ソ連時代、連邦内の水平分業により農業国に位置づけられました。ですから、現在でも灌漑施設はすごく整っています。ただ、それ以外の分野の知識や経験が乏しく、独立はしたものの、特にインフラの整備や維持管理に必要な知識や技術、経験が圧倒的に不足しています。

旧ソ連時代は連邦内の他の地域から技術者がタジキスタンに来て、道路や橋を建設するための指導をしていました。しかし1991年に旧ソ連が崩壊し、タジキスタンが独立国になった直後に内戦が発生した為、国づくりに関わるインフラ整備の知識を有する技術者が国に帰ってしまったんですよね。

ただ、タジキスタンの人たちは能力が高いので、良い手本を示せば自分たちで上手くやっていけるのではないかと思っています。だから、JICAを含め、国際機関やドナー国が各分野において手本となるような支援を行うことで、この国は、必ずしや援助から独立できる国になると確信しています。

-タジキスタンの方々の能力ポテンシャルは高いんですね。

非常に高いですね。

一番心を開いて付き合える人たち

-タジキスタンへの個人的な思い入れがあればお聞かせください。

【画像】

エイト日本技術開発社員らとJICA職員らによるピアンジ行政郡訪問時(2018年2月6日撮影)

この6年間にわたり、タジキスタンでの業務を通じてたくさんの人たちと出会ってきました。僭越ですが、この国のことを知れば知るほど、支援したいと思うようになります。

今までいろんな国で仕事をしてきましたが、特にこの国の人たちはとっつきやすく、心を開いて付き合えると思います。一緒にお酒を飲んだりという経験があるからかもしれませんね。(笑)

また、すごく純粋で素朴な人が多いと思います。言葉の壁はありますが、心を通わせることができる、という意味ではすごく仕事がしやすいですね。

繰り返しになりますが、ここは旧ソ連間の水平分業で割り振られた農業を主要産業としていた国ですが、国造りのためのいろんなノウハウを自分達でできるようになったら、更にいろいろ吸収してもっと良い国になると思います。

若者や学生に向けてのメッセージ

-最後に、将来国際協力に関わる仕事に就きたいと考えている若者や学生に向けて、一言メッセージをお願いします。

【画像】

現地コンサルタントのジュラベックさんと一緒に業務をすすめる松田さん(ボフタール市の事務所にて)

国際協力関係の仕事に就きたいとの意志は非常に崇高なものだと思います。しかし、海外に行くと、「あなたはこの国のために何ができますか」と、専門性を常に問われます。

日本国内であれば、たとえば会社の先輩が仕事を教えてくれたりしますが、海外に行くと一人で仕事をすることも多く、それなりの仕事のスキルとか技術力を求められます。だから、自分自身を研鑽しながら頑張れる人でないと、なかなか海外で国際協力業務を通じて実績を上げていくのは難しいですね。もちろん、若い人は最初は知識も技術もないので、それをずっと頑張れる人が必要なんです。

つまり、自分の技術やスキル向上を目指す不断の努力を厭わない人材が、国際協力の舞台では求められます。

-本日は貴重なお話をありがとうございました!

終わりに

タジキスタンでご活躍されている松田さんへのインタビューを、3回に亘ってお届けしましたが、いかがでしたでしょうか?

取材にあたり、松田さん含めスタッフの方々が業務を行っているボフタール市のプロジェクト事務所にお邪魔したのですが、業務中にも関わらず快く取材に応じてくださいました。

このインタビューを通して、タジキスタンという国について、また、国際協力に取り組んでいる方々の想いを少しでも伝えることができれば幸いです。

プロフィール

開発コンサルタント
松田 和美さん(株式会社エイト日本技術開発 国際事業本部 水インフラ部)

大学卒業後、エイト日本技術開発に入社し、約35年間世界各国での水道関連のODAプロジェクトに携わっている。タジキスタンでの業務には2013年から約6年間従事している。

聞き手
松田 実樹
JICAタジキスタン事務所による大阪大学との連携に基づく学生インターン。
活動期間2018年10月~2019年1月