【草の根技術協力事業】フィリピン・台風ヨランダ被災漁村からの研修受入れ:カキ養殖の現地視察(宮城県)

2018年5月24日

JICA草の根技術協力事業「奧松島の技術を活かした台風ヨランダ被災漁村に於ける水産養殖と加工品開発」(提案自治体:東松島市、実施団体:特定非営利活動法人いしのまきNPOセンター)は、「過去に類を見ないほど強烈」と言われフィリピンに甚大な被害をもたらした2013年の台風ヨランダを受け、2016年3月から2019年3月にかけて実施されています。台風ヨランダ被災地域においてカキなどの水産養殖と加工品開発を通じ、住民の生活向上とより良い復興を目指すものです。
2018年3月7日、宮城県東松島市と石巻市で、この事業における本邦研修 (期間:3月5日~3月10日)としてフィリピンからの研修員がカキ養殖の現地視察を行いました。

養殖の様子を説明する奥松島水産の阿部さん

抑制の様子。カキの稚貝が付着したホタテ貝が吊るされている

カキが一気に引き上げられ、撮影する研修員  

佐須浜の抑制棚ではホタテ貝が横向きに並ぶ

《内湾養殖場視察@東松島市・東名浜》
7日朝、東名浜の「奥松島水産」阿部さんを訪れました。フィリピンから来た研修員は漁業従事者、現地業務補助員、カウンターパート(水産資源局)職員の3名です。施設を見学しながら説明を受け、ディスカッションを行い、その後熱々の蒸しガキをご馳走になりました。阿部さんは当プロジェクトのカキ養殖専門家であり、研修員から問題点や悩みを次々と聞き取っていきます。養殖しているカキが台風で海に落ちてしまう、日本と同じ道具や材料が手に入らない、育った牡蠣が窃盗にあうなど、多様な問題が共有されました。
続いては船に乗り込んでカキの抑制の様子とカキ養殖サイトの視察です。抑制とは、海の満ち干を利用してカキが海水に浸かる時間と日光に当たる時間を作ることで、外洋で生き残れる強い種だけを残す作業です。抑制後は、養殖サイトでカキをゆったりとロープに繋いで大きく育てます。「ストレスをかけた後は甘やかすことも必要。カキも人間と一緒ですよ。」と阿部さんは話してくれました。本事業の活動地域(フィリピン)では行われていない作業に、研修員達は興味津々でした。

《外洋養殖場視察@石巻市・佐須浜》
午後は東松島市の隣、石巻市の佐須浜に移動し外洋視察へ。まず船で養殖棚へ向かい、実際にカキを収穫する作業の迫力ある様子を見せて頂きました。船に設置された機械によってカキのロープが巻き取られ、殻から外され水洗いまでされていく様子を、研修員達は食い入るように見つめていました。
続いて向かった抑制の棚では、先に視察した東名浜とは異なり、ホタテ貝が横向きに置かれていました。説明によれば、縦に吊るしている場合、上の方に吊るされているカキと下の方のものとでは海水に浸かっている時間に差が生まれてしまう為、横にすることで時間を均一にするのだそうです。東松島と石巻、地理的にも近い場所、同じ作業でも、試行錯誤を重ねた結果、異なるやり方や工夫に行きついたことが分かります。

研修員らは前日に宮城県水産技術総合センターで講義を受けていました。「講義で学んだ後に、実際に現場に足を運んで自分の目で確かめることができ、大変良い経験になった」と、船の上で目を輝かせて話してくれたことが印象的でした。
佐須浜で説明をしてくれた漁師の須田さんからは、「手本があれば技術は早く進歩するけれども、環境が違うのだから試行錯誤を重ねる必要があります。挑戦して、失敗して、考えて、また挑戦して。この繰り返しです。」という言葉を頂き、現地視察が締めくくられました。

《現地視察を終えて》
この事業では、カキ養殖においてこれまで実施していなかった「抑制」を今年から実施することとなりました。これまでの2年間の試行錯誤からさらに挑戦し、被災した人々の収入の向上を目指し、成果を出したいとのことです。
カキ養殖は根気のいる事業です。しかし試行錯誤するなかで適切な助言や後押しがあれば、きっと良い結果に結びついてくれるものと感じました。
台風等の自然災害はいつ起きるかわかりません。同じ海と関わって生きていく為には、日本もフィリピンも、インフラ等の復興事業だけでなく持続可能な産業基盤が必要になります。今回の東松島市と石巻市の現地視察を通じて、フィリピン被災漁村の生活向上に繋がることを願ってやみません。

(報告者:東松島市地域復興推進員 京野)