【宮城県】2019年度JICA東北・JICA二本松教師海外研修に参加した先生による授業実践が尚絅学院高等学校で行われました

2019年12月3日

【画像】尚絅学院高等学校の及川英恵教諭が、10月29日(火)同校2学年27名に対してタンザニアに関する授業を行いました。

世界と自分との“つながり”を意識し、自身の生活や考え方を見直すとともに、主体的にSDGs達成に向けて行動できる生徒を育てることを目標に、6月から異文化理解講座を実施してきた及川先生。
2030年には社会を支える存在となる生徒たちに、世界の状況を正しく理解し、世界全体でのSDGs達成に向けて関わっていく必要性を伝えたいと考えています。

難民の現状、教育を受ける権利、アフリカとのつながり、という授業を経て、前の時間には実際に及川先生が現地で撮影したタンザニアの写真や映像を通して「ちがいのちがい」を考えた生徒たち。
日本とタンザニアは、もちろんたくさんの「ちがい」がありますが、その違いを「あってもいい違い」と「あってはいけない違い」に分けて考えました。

当日は、前の授業で生徒から出た質問、感想、について整理してタンザニアを紹介するという内容でした。

ウォーミングアップ

「あなたの宝物は何ですか?理由は?」という問いに対し、グループごとに話し合い、結果を共有します。家族、ライブの時に飛んできたテープ、友達などが出ました。

及川先生は、タンザニアで農作業に使う鍬をチャイムとして使う映像、黒板消しがないから使い古しの靴下を使っている写真、太鼓を叩くのにサンダルの底をくり抜いて使っている写真などを紹介し、「確かに物はない。でも、むしろ、エコですよね?」と解説します。
ちなみに、タンザニアの人に『宝物』を聞いたら、「教育」だったそうです。理由は貧しさから抜け出すための方法とのこと。

あってはいけない違いランキング、達成すべきSDGs

次に、前の授業で生徒たちが考えた、タンザニアと日本の「ちがい」のうち「あってはいけない違い」に分類された「ちがい」トップ5を紹介しました。

5位は「女の子が坊主であること」。タンザニアも女の子は髪を伸ばしたいようですが、伸ばすと体罰されるし、髪質がアジア人とは違うのでうまく扱えず、髪の毛をまとめるには美容院で整髪剤を使ってなでつけないとなりません。大人になって経済的余裕が出来たら伸ばすそうです。

4位は「電気がない(暗い)こと」。パソコンが支援団体から25台寄贈されたけれど使われていない写真を紹介。電気がないのも問題ですが、使えない支援物資が送られてくる現実があります。

3位は「トイレ周りがよくないこと」。トイレも足りない、ナプキンがないから生理中は学校にいけず、その結果テストが受けられなくて落第する生徒もいるそうです。ただ、、、トイレにはペーパーホルダーがありますが、設置しても、そもそも使わない人もいるとのこと。本当に必要な援助は何なのか考えさせられます。

2位は「学習環境が悪いこと」。机とつながっている横長の椅子に6人で座っている、教室が暗く窓がない、、、様々な課題があります。実際にタンザニアではどのくらいのサイズの机を使っているのか、この大きさで勉強ができるのか、その窮屈さをビニールテープで再現しました。
 
そして1位は「川で水くみをしなければならないこと」でした。家から学校まで、遠い距離を通い、授業の前に水くみをしている映像が紹介されました。

及川先生が、タンザニアの人に、達成すべきSDGsを聞いたところ、3.健康と福祉、4.質の高い教育、9.産業と技術革新、12.つくる責任つかう責任、だったそうです。

タンザニアの幸せと、私たちの幸せ

続いて生徒たちは、「みんなの友達は幸せなのか?どうして?」について考えました。(友達、というのは手紙を交換したタンザニアの子どもたちのことです。)生徒たちは、「おそらく幸せだろう」と答えていました。「最初から不幸と決めつけて、先進国の私たちに何ができる?と考えるのはおかしい。かわいそうと思う方がかわいそう。貧しいけど不幸ではない。」という現地で活躍する青年海外協力隊の方々の言葉を生徒たちに紹介し、「幸せとは何か」についてみんなで考えました。

みんなは幸せ?当てはまるところに手を挙げる

【画像】今の幸せ度を、5段階で評価し、思うところに手を挙げました。一番多いのは3段階目。数人の生徒は、4段階目で手を挙げました。理由を聞くと、「最高ではない。伸びしろを残しておきたい」。最高の5段階目で手を挙げた生徒、その理由は「やりたいことが出来ていて、学校に行けて、ごはんを食べられて、夢があるから」だそうです。

世界幸福度

さて、ここで、世界幸福度ランキングが発表されました。日本は、寛容さが92位(全156か国中)。結構低いですね。そして、タンザニアの人について、及川先生はこんな風に紹介していました。

「彼らは<今を全力で生きている>。視線、言葉を交わす。自他に愛を捧ぐ。目の前のものを大事にし、ちがいに寛容。人間関係が濃く、与えられた命をどう生きるかに迷いがない。お互い様の精神で生きている。それは幸せだと言えるでしょう。でも。。。」

ここで8月半ばに起きた、タンクローリー事故を紹介しました。タンザニアのモロゴロで、タンクローリーから石油が漏れ出す事故が起こり、現地の人たちは漏れ出した石油を集めようと集まり、大爆発が起こり、たくさんの方がなくなりました。

「日本では?起きないですね。どうしてですか?そう、危険だと知っているからですね。どうですか?タンザニアの人は確かに『幸せ』だけど、今が幸せなら、私たちは何もしなくていいですか?守れる命を守れないのは幸せではないと、私は思います。」と。

答えの出ない難しい問題ですが、生徒たちはそれぞれに真剣に、先生の問いに耳を傾けていました。

次の授業のテーマは、『相手の幸せを実現する支援とは?』について。生徒たちがどんな支援を考えるのか、楽しみです。

(報告:市民参加協力課 清水)