【岩手県】2019年度JICA東北・JICA二本松教師海外研修に参加した先生による授業実践が岩手県立不来方高等学校で行われました

2020年1月9日

岩手県立不来方高等学校の小野寺明美教諭が、11月27日(水)同校2年生に対してタンザニアに関する授業を行いました。

前の時間では、非識字の状態を体験するワークショップ(具合の悪いお母さんのために、近くの薬屋さんに子どもが薬を買いに行くが、文字が読めずに、薬らしき瓶を持ち帰ってお母さんに飲ませる、という劇)を実施したとのことで、仮定法「もし~だったら、~だっただろうに」という、文法の確認から授業が始まりました。

If she could have read letters, she would not have drunk poison water.

「もし文字が読めたなら、毒(農薬)の入った水を飲まなかっただろうに(でも実際は文字が読めないために飲んでしまった)」という文章はとてもショッキングで、仮定法によって、「後悔」という気持ちが表現されている、と感じました。生徒たちも先週の学びを思い出し、懸命に小野寺先生の後に続いてフレーズを繰り返していました。

実践授業当日の目標は、

You can tell your idea about making the world better.
世界をよりよくするためのアイディアについて伝えよう、でした。

授業の冒頭、2枚の写真が映し出されました。隣同士でペアになり、一人が顔を伏せ、もう一人が何の写真か英語で説明します。当たったら、顔をあげて写真を見ることができます。一生懸命に説明する生徒たち。1枚目の写真は、緑がかったバナナです。

「日本とタンザニア、どちらの写真だと思う?」という小野寺先生の問いに、「タンザニア」と迷わず答える生徒たち。ズームアップされていた写真が徐々にズームアウトしていき、表示されたのは、学校のそばにあるスーパーの名前。
そう、緑のバナナの写真は、すぐそばで撮られたものでした。生徒たちから驚きの声が上がります。

2枚目の写真は、akemiと書かれたお店の看板。これを英語で説明するのは、ちょっと難しかったようですが、、、。
小野寺先生のファーストネーム、「明美」がアルファベットで書かれているので、生徒たちは大盛り上がり。
タンザニア研修の際、移動中のバスの中からこの看板を見た小野寺先生が思わずシャッターを切ったエピソードが披露されました。

次に、生徒たちには英語の文章が書かれた、12枚の小さいカードが配られます。英語を読み取って、「日本」と「タンザニア」どちらのことが書かれたカードか分類するように指示が出されました。

12枚のカードに書かれた英文は、以下です。
①I do not have to get up early, because my mother drives me to school in the morning.
②I like school, but I do not like studying very much.
③My father is a nurse, my mother works at a bank and my older sister studies at university in a big city.
④I go to see the movies in the movie theater with friends.
⑤When I am hungry at school, I eat some snacks, and drink juice or tea.
⑥Cell phones spread widely, and we can use it for payment without cash.
⑦Many cars caused traffic jam here.
⑧I often watch movies on the internet.
⑨I go to school early to clean my school.
⑩I want to study at university, but it is difficult for me to study for entrance exams.
⑪I like school, but I sometimes cannot go to school to help my family.
⑫I do not eat lunch at school, because we do not have time for lunch.

実はこのカード、元々は日本とタンザニアの教室の様子を撮った2枚の写真の裏、白い面に書かれていた文章でした。ちゃんと6枚ずつに分けることができれば、それぞれ写真が完成する、という仕組みです。しかし、ほとんどのグループは写真が完成しませんでした。ということは、間違っていた、つまり、日本だと思ったカードがタンザニアだった(もしくはその逆)ということになります。

小野寺先生が、正解を発表しながらタンザニアを紹介していきます。

⑦のカードは、日本に分類するグループが多かったですが、、、正解はタンザニア。高いビルや渋滞している車がスクリーンに映し出されると、驚きの声が上がりました。「車はトヨタが人気。〇〇温泉って書いてある車もあった。日本から中古で送られた車が現地で役に立っていました。」と紹介がありました。

⑥⑧のカードは日本に分類している生徒も多かったですが、正解はタンザニアのことが書かれたカードでした。小野寺先生は、携帯電話から送金の手続きができるお店を紹介。携帯電話を持っている人も多く、送金するために多くの人がこういったお店を訪れていた、と紹介していました。また、学校を訪れた時に、「インターネットで日本の映画を見ているんだけど、『やくざ』って何?」と聞かれて、とてもびっくりした、という話をしていました。

⑨については、タンザニアに分類しているグループが多かったものの、学校で使う水(花への水やり、掃除など)を川から汲むために早起きしている生徒の映像が紹介されると、「大変そう」という言葉が漏れていました。また、教室をほうきで掃除している様子の写真が写され、掃除していない人もいるのを見ると、「日本と同じだ」と少し笑っていました。

③のカードについては、お父さんが看護師、という言葉に疑問を感じた生徒に、他の生徒が、「看護師は男の人もできるんだよ!」と教え、「えっ、そうなの」と驚いている場面もあり、タンザニアと日本の違いを学ぶと同時に、ジェンダーについても学ぶ機会となっていたようでした。

授業の最後の時間は、以前に学校で小野寺先生がとったアンケート結果と、タンザニアでのアンケート結果の違いが紹介されました。

Do you like school? という質問に…
不来方高校:yes 84%(no 16%)
タンザニアの学校:yes 100%

Do you like stydying? という質問に…
不来方高校:yes 35%(no 65%)
タンザニアの学校:yes 100%

Are you satisfied with your life? という質問に…
不来方高校:yes 62%(no 38%)
タンザニアの学校:yes 100%

Are you proud of yourself? という質問に…
不来方高校:yes 45%(no 55%)
タンザニアの学校:yes 100%

「これを見て、あなたは何を感じますか?タンザニアでは、学校が大好きで勉強が大好きで、誇りを持ってみんな生きている。また、医者、先生、技術者など、みんな夢を持って生きている。でも、水くみの映像のように、苦しい生活をしているのも事実です。」と小野寺先生。

さらに、世界で起きている紛争や、難民の写真を紹介し、「世界にはまだまだハッピーじゃない人がいる。みんなに何かできることはないだろうか。」と問いかけます。

中心に「to make the world better」と書かれたワークシート(word map)に、自分ができることを書き出し、グループごとに英語で発言します。司会を一人決め、一人2文ずつで交代するよう促します。身振り手振りで、考えを紹介する姿はとても立派に見えました。


タンザニアを訪問して、「今まで培ってきた価値観がガラガラと崩れる体験をした、生徒たちにも間接的にその体験をしてほしかった」という小野寺先生の、思いがたくさん詰め込まれた授業。生徒たちもその思いを全身で感じていたように見えました。
   

(報告:市民参加協力課 清水)