【秋田県】2019年度JICA東北・JICA二本松教師海外研修に参加した先生による授業実践が秋田県立秋田中央高等学校で行われました

2020年1月17日

【画像】秋田県立秋田中央高等学校の浅利絵里子教諭が、11月29日(金)同校1年生に対してタンザニアに関する授業を行いました。

本時のテーマは『様々な状況におかれた人々が、みんな幸せに生きていくにはどうすればよいか考えよう!』です。

前時までの2時間で、体に備わっている免疫機能や、HIVに感染しエイズを発症したらどうなるか、そしてHIV保有者が『社会的偏見』とも闘っていることを学んだ生徒たち。感想では、『偏見をなくしていこう』という意見が多数出たそうです。

世界のHIV/AIDSの状況と対策

本時の冒頭、浅利先生は、世界の新規HIV感染者が減っていること、世界ではアフリカ大陸が最も感染率が高いが、日本を含むアジアがその次に高く、『身近な世界が危なくなっている』と説明しました。一方で、エイズは不治の病ではなく、きちんと治療すれば長く生きられることや出産もできるということもお話しされました。現在は感染者の2人に1人が治療を受けているそうです。

その後、アメリカ・オーストラリア・タイ・ドイツでHIV/AIDSに関してどのような取り組みが行われているか、結果として感染者が減ったことが紹介されました。それぞれの国民性に合わせた対策が取られているという印象を受けました。

感染症について学ぶことの理由を、浅利先生は、『健康で幸せであるため』と説明しました。

衛生環境は収入と関係している!?

次に、ダラーストリート を用いて「衛生環境は収入と関係している」と説明します。

あるものを撮影した写真に「どこの地域で収入はどのくらいか」という情報をつけて、『いったい何を撮影したものか』というクイズを出しました。インド$29、ブルンジ$27、フィリピン$93、だんだんと何の写真か分かってきました。正解は、トイレです。

浅利先生は、「タンザニアでもより収入が高い人は、よりきれいで使いやすいトイレを使っていた。収入の少ない人たちは生活に苦労していて、教育は不十分、衛生状態が悪かった。その一方で、成績の悪い方の生徒でも英語で意見を言えて、衛生状態は悪い分抵抗力があることに驚いた」と現地で感じたことを、生徒たちに伝えていました。

ちがいのちがい

授業の後半は、12枚のカードに書かれた、「タンザニアと日本のちがい」について、あってはいけない違いと、あってもいい違いに分け、理由を考えるワークを行いました。

<カードの内容>
①タンザニアでは連絡しても、交通事故の遺体が2~3日放置されているが、日本では道路にある動物の市街も連絡すれば、すぐに片づけてもらえる。
②将来の夢を聞くと、タンザニアのアリコ君はエンジニアになることだと勢いよく答え、日本のマサシ君は何をすれば良いか悩む。
③タンザニアの病衣音は訪問者が泥のついた靴でICU(集中治療室)に入れるが、日本では手を消毒しマスクをして靴を履き替えて入ることが出来る。
④日本の高校に通うシンゴ君は勉強が嫌いで教科書をよくなくすが、タンザニアの中学校に通うトマムさんは、勉強が大好きだが教科書をもっていない。
⑤タンザニアのトイレにはトイレットペーパーも水もないことが多く、穴から蚊が出てくることもあるが、日本のトイレはトイレットペーパーがあり水も流れ、音も流れる。
⑥日本の病院はミスに厳しく、疲れても人手不足で休みが取りづらいが、タンザニアの病院では働く個人が尊重され、3時間遅刻しても、厳しく怒られない。
⑦お風呂場で、日本のエミさんは湯船につかるが、タンザニアのボーアさんは、たらいに水をためて体を拭く。
⑧タンザニアのキイマさんは、朝5時に起きて、2km先の井戸からバケツ一杯水をくむお手伝いをしてから、7時には3km離れた学校に歩いて登校するが、日本のサトコさんは、お手伝いをせず歩いて10m離れた学校に8時15分に歩いて登校する。
⑨タンザニアのマリー先生は、お金がないと言うが、いつもオーダーメイドの服を着ている。日本のアサリ先生はユニクロのフリースばかり着ている。
⑩「幸せだと感じていますか?」との質問に、タンザニアでは90%の人が「幸せ」と答えたが、日本では52%だった。
⑪ルワンダのフランソワーズさんは、家族から「女の子は学校にいかなくていい」と言われたが、同級生のジョン君は言われたことはない。
⑫シエラレオネのファトマタさんは14歳で結婚させられ中学校を退学したが、日本の中学校のエイコさんは、まだ「結婚しなさい」と言われたことはない。

あってはいけない違いについて、生徒たちに聞いてみると、2つのグループが10番のカードを挙げました。「恵まれているのに、ありがたみを感じてないから」「日本は支援をできる立場なのに、半数にあたる48%は『幸せ』と感じていないため、途上国に援助できない状態だと思われるから」という意見が理由として挙がりました。生徒たちは、同じカードでも、あってはいけない違いに分ける人とあってもいい違いに分ける人がいること、また分け方は同じでも理由が違うことを学んでいました。

浅利先生は、「タンザニアでは、『夢は何?』と聞くとすぐに返ってきて、未来を考えて生きていると感じた。また、日本と比べて病院はミスもあり衛生環境は悪かったけど雰囲気がよかった。現状を見て、『彼らの衛生状態が悪い』と考えてしまったけれど、それはあくまでも私たちの視点であり、彼らはそれで生きている。除菌すればするほど、今度は菌に対する耐性が弱まるというデメリットも確かに存在する。では一体、私たちは何を支援すればいいのだろうか」と生徒たちに投げかけます。

「個人レベル」「日本国内でできること」として、生徒たちができることを考え、次の機会に発表する、というところで授業は終わりました。

授業後の振り返り

【画像】授業後は、参観した先生方で振り返りが行われました。現地で学んだことを生徒たちに伝えようと思うあまり、少し内容が盛りだくさんになっていたものの、「実際に現地に行ってきて集めた素材、内容というのが良かった。思いが伝わってきた」「生徒の意見に対して拍手をしたり、つぶやきも拾ったりと、雰囲気が良かった」「発問が工夫されていて、生徒が集中していた」という感想が出ました。

科学、生物、物理、実習など、専門教科は違っても、このように振り返りが行われていることから、浅利先生には協力してくれる同僚がたくさんいらっしゃると感じました。ぜひ、他教科とも連携し、今後も実践授業を継続して頂くことを期待しています。

(報告:市民参加協力課 清水)