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【山形県】2019年度JICA東北・二本松教師海外研修(タンザニア国)に参加した先生による実践授業が長井市立豊田小学校で行われました。

2020年2月7日

【画像】長井市立豊田小学校の髙橋真江美教諭が、11月20日(水)同校5学年に対してタンザニアに関する授業を行いました。

同市ではタンザニア国と交流を育んでいて、来年開催されるオリンピック・パラリンピックではホストタウンとなることが決まっています。

授業では、タンザニアでの海外研修や長井市での交流を事例にしながら、“あっても良い違いと、あってはならない違い”について、児童に考えてもらう授業が行われました。

髙橋教諭が担当するクラスは単学級の為、5年間ずっと一緒のクラスです。高橋先生は6年生受け持つ度に、彼らが中学校に進学した時に、他の小学校を卒業した同級生たちと仲良くなるのに苦労していると感じていました。そこで、「ちがいを考える」授業を通じて、子どもたちが「人と関わる時に大切なこと」を考えたり「他人を受け入れる力」を養ったりすることで、環境が変わった時、新しい人間関係に適応できるようになって欲しいと考え、今回の授業に臨みました。

色々な違いについて、みんなで考えてみよう

これまでの復習から授業が始まりました。髙橋先生がタンザニアへ行った時の様子や、長井マラソンに参加するためにタンザニアから来日したマラソン選手と子どもたちとの交流を、スライド写真で振り返りました。

写真を見ながら7つの「ちがい」について、「あってよい/当たり前の ちがい」「迷う/どちらとも言えない」「あってはいけない/なくしていきたい ちがい」のどれに当てはまると思うか、3人のグループごとに話し合いながら答えをまとめていきました。

ちがい①:ヒロトくんはサッカーが好きで、ミズホさんは絵を書くことが好き
ちがい②:ソフィさんは神様を大切に思っていて、タクヤくんは仏様を大切に思っている。
ちがい③:ひとしくんは髪の毛をのばしていて、みきさんは髪の毛をとても短くしている。
ちがい④:あつしくんは朝食に御飯とみそ汁を、マイケルくんはバナナスープを食べる。
ちがい⑤:ンワカさんのはだの色は黒で、みゆきさんのはだはうすい茶色と黄色をまぜたような色をしている。
ちがい⑥:アリーさんは学校で使う水を川でくみ、めぐみさんは家でも学校でも水道を使う。
ちがい⑦:Aくんは、Bくんに対しては乱暴な口調で話し、Cくんに対してはおだやかな口調で話す。

【画像】グループごとに話し合った結果を黒板に貼って、それぞれの答えをクラス全体で共有しました。答えが一緒になった「ちがい」もあれば、答えが異なった「ちがい」もありました。

【画像】高橋教諭は「ちがい」をひとつずつ取り上げ、それぞれを選んだ理由を子どもたちに聞いていきました。先生が何番の「ちがい」が迷いましたか?と尋ねたところ、あるグループの子どもは「3番が迷いました」と答えました。どうして迷ったのか、さらに先生が尋ねると「もし本人の意思で髪を伸ばしたり切ったりしたいなら、あってよい違いだと思ったけれど、ひとしくんは誰かのために伸ばしているので…」と答えました。他にも、「あってはならないちがい」として⑥の違いを挙げて、「川の水には飲んではいけないものが入っていて、お腹をこわしたり病気になったりするかもしれないから」と、川で水を汲んだあとのことを想像しながら答えていました。

【画像】一通り「ちがいのちがい」について話し合ったあと、先生は「もし皆さんが、えっどうしよう?と思うような違いに出会ったときに、どうするか考えてみましょう」と、さらに踏み込んだ問いを投げかけました。先生が事例に選んだのは、小学校を訪れたマラソン選手と一緒に昼食を食べたときのことです。そのマラソン選手はみんなと一緒に給食を食べたときに、ほとんど食べられなかったそうです。先生は「マラソン選手にとっては日本の料理とタンザニアの料理は違うもの、文化や習慣も違うものってわかっていたはずだよね。けれども、どうしても箸が付けられなかった。反対に、みんなが別の国に行って、現地の方から美味しいよ!食べてごらん!って言われて、出てきた料理が『えっ』って思うような料理だったらどうする?」と相手の立場に立って考えてみるように子どもたちに促しました。ある子どもは「普段食べないものが出てきたら、美味しいものかどうか分からない…」と素直に答えていました。

最後に「もし、みんながそういう状況にあったときに、どうする?どうしたら良い?頭では分かっていても、実際に行動に移すのは難しいよね」と問いかけました。

【画像】子どもたちからは「そんな時でも自分を見失わないようにする」「正直に自分の気持ちをつたえる」「これ美味しい?って一回聞いて、美味しいって答えたら食べてみる。そうじゃなかったら止める」「食べ辛いものがあったときは、他の人に食べませんか?って聞いてみる」といったような意見が出ました。

最後に先生は、「今までは5年間一緒のメンバーで勉強してきたけれど、これから先小学校を卒業して、中学校、高校と進学を重ねていくと、どんどんいろんな人に会っていくはずです。そんな時に、今みたいに『ちょっとどうする?』と立ち止まって考えられるようになってほしくて、今日の勉強をしました」と思いを伝えました。


授業を通じてちがいに触れる事で、子どもたちは客観的に自分を見つめ直そうとしていました。今後は、今回の一連の授業で学んだことを他の小学校に行って発表したいと考えているそうです。

(報告:JICA山形デスク 小野)