【研修事業】仙台市の協力で下水道アセットマネジメントを学ぶ研修をオンラインで実施しました

2021年1月7日

2018年度の来日研修の様子

JICA東北は、既に下水道インフラがある程度整備されている途上国を対象に、老朽化した下水道施設の状態評価や更新が必要な施設の選定、自然災害に考慮した施設管理などができるよう、下水道アセットマネジメントにかかる知識や技術を習得する研修を実施しています。2020年度はエチオピア、コートジボワール、キューバ等から、下水道施設の管理、計画等を担当する中央又は地方政府の行政官ら12名が参加しました。新型コロナウイルスの影響で来日が難しい状況の中、研修員たちは2020年10月27日~12月16日までの約1か月半、自国から動画配信システムを通して講義を受講しました。

研修の内容と目的

宮城県は2011年の東日本大震災を始め、多くの地震や災害を経験しています。また、日本では高度経済成長期以降に布設した管きょが続々と耐用年数を超過しており、各地で老朽化対策が進められています。こうした中で仙台市下水道事業は、2014年に全国に先駆けてISO55001を取得しています。ISO55001とは、インフラ資産を効果的かつ効率的に維持管理するために取り組むべき事項をとりまとめた、資産管理に関する国際規格です。

オンラインで講師らと各国から接続。時差が大きい研修員は夜中でも熱心に参加しました。

社会インフラの機能を持続可能なものにするためにリスク管理としての資産管理方法を確立した仙台市の先駆的な経験が、その後他の自治体にも波及するに至っています。これらの手法は、同様に災害リスクや施設の老朽化といった問題を抱える開発途上国にとって極めて有用なものですが、開発途上国はそれらの技術、知見を有していないことから、本研修の実施を通して施設管理手法の導入支援を行うことを研修の目的としています。
今回の遠隔研修では、仙台市建設局の職員が主な講師となり、下水道台帳の記載情報や管路施設の点検・状態把握手法、リスク評価手法などについて、講義動画が提供されました。研修員たちは、自国の抱える課題に対するヒントを得るため、繰り返し講義動画を熱心に視聴していました。

総括としてオンラインで情報交換会を開催

自国の下水道分野が抱える課題について発表し、講師らよりアドバイスをもらいました。

12月16日には、総括としてオンラインで各国と接続し、情報交換会を開催しました。仙台市建設局の講師や東北大学の先生方にもご参加頂き、研修員たちは自国の課題を解決するための質問や講義で学んだ内容について発表しました。コートジボワールから参加した衛生排水国立事務局の業務マネージャーであるパコム・アーナウドさんは「首都のアビジャン市には下水道と排水網を管理するための地理情報システム(GIS)がない。これによって劣化やメンテナンス作業の予測が難しくなっており、大部分は異常が発生してから復旧のための介入を行っている。今回の仙台市のアセットマネジメントシステムやリスク評価手法の講義は自国の課題解決を考えるうえで非常に有益だった。解決には時間がかかるが、自国の衛生インフラを改善するために取り組んでいきたい。」と振り返りました。

今回、研修に参加した研修員たちはコロナウイルス収束後に来日し、仙台や関東で下水道施設の視察や学生らとのディスカッション等を行うことが予定されています。日本が積み上げてきた知見について、直接学ぶ日を今から心待ちにしています。(報告:総務課 井澤)