【開発教育支援事業】2021年度 開発教育指導者研修(オンライン)を実施しました

2022年3月2日

2021年2月19日、オンラインにて「JICA東北・2021年度開発教育指導者研修」を実施しました。今回は「学校『外』とのつながりが生む学び」と題し、校外連携活動によって得られる学びの意義とより良い連携を実現するために重要となる要素について、事例を踏まえて考える内容となりました。

東北の先生方による「校外連携」の事例

星野先生(柏崎小学校)による基調講演

  研修前半では基調講演および実践紹介を通し、学校や先生の連携・協働のあり方について、学びを深めました。
 「人生を楽しむ力を身に付けるためのプロデュース教育」と題した基調講演では、講師の星野達郎先生(八戸市立柏崎小学校教諭)が複数の活動を通して試みたこと・学んだことを紹介くださいました。校外に向けた社会貢献活動によって子どもが「比較できない自己肯定感」を得た経験を通し、継続的に学校が社会とつながる仕組みを考えるに至り、現在は先生自身も学び手の一人としてオンラインコミュニティ「戦う職員室」の運営に当たっています。
 校外の様々な人と関わることにより、子どもが自分を表現できる環境・比較できない自己肯定感を得る教育のプロデュースにつながり、「大変なことも仲間と創意工夫して、自分の力で世界をハッピーにする」力=星野先生の定義する「人生を楽しむ力」を身に付けた子どもを育てることが可能になります。星野先生からは最後に「先生たちにはぜひ校外へ飛び出して欲しい」というメッセージが投げかけられました。

一迫商業高等学校による事例紹介

 事例紹介「部活動を通した地域住民・行政・企業との連携による栗原市のSDGs×地域活性化」においては、栗原市の特産品「ふさすぐり」の活用を、宮城県一迫商業高等学校商業研究部の活動を通して展開した事例が紹介されました。講師の佐藤潤平先生・青木翔平先生(同校教諭)には、今回連携パートナーとなった門間直美さん(宮城県栗原農業改良普及センター技術次長)とともに、連携活動のきっかけや成果をお話し頂きました。近江商人の「三方よし」を学校(自分)、連携パートナー(相手)、地域—栗原市(世間)に置き換え、生徒が地域課題から学びを得る×地域の農業課題を解決する×地域経済が活性化する=Win-Win-Winを実現したこの事例において、学校・連携パートナーは互いのスケジュール感や人材の強み・持続可能性を念頭に置いて活動を行っていたことが伝えられました。
 後半では、高齢化・人口減少に関する問題も示唆されました。地方を中心に増加する人口減少地域を「課題先進地域」として捉え直すことで、地域と連携した教育活動に新たな価値が加わり、先駆的な実践として研究する意義を見出すことができるのではないか、という問いかけで締めくくられました。

事例を参考に、自校でのアクションを考える

考えの共有はグループ→全体で

 研修の後半は、阿部眞理子さん(認定NPO法人IVY 理事)によるファシリテーションで進行しました。まずは研修前半の所感や疑問点をグループに分かれて共有し合い、全体に持ち寄りました。パネルトーク形式で講師の皆さんへ新たな問いを投げかけてみると、そこからさらに考えが膨らみます。「校外の人たちは”学校とつながる”ことのどの点にメリットを見出すのか?」「学校や先生は地域の中心・つなぎ役として機能できるのではないか?」「こうした活動は必ずしも成功体験・ハッピーエンドでなければならないのか?」…
 その後のグループ意見交換は、自校で取り組めること・取り組むべきことの検討になりました。校外連携により子どもが多様な社会・価値観に触れるメリットは大きいものの、組み立てが大変であることも事実です。「学年で足並みを揃える必要がある状況で、自分だけ校外連携を試みてもいいものなの?」「新しい取組に周囲を巻き込むには、まずは自分がお膳立てをして成功体験だけを味わってもらうことで、周囲を”その気”にさせることが有効なのでは?」…など、様々な発想が生まれた時間となりました。

 3時間以上にもわたるプログラムで非常に長丁場でしたが、多様な考え方に触れ合い、多くの学びを頂いた一日になりました。研修にご参加いただいた先生方、そして講師をお引き受け頂きました星野先生、佐藤先生、青木先生、門間様、阿部様、誠にありがとうございました!

(JICA東北 市民参加協力課)