市民視線の警察づくり:「インドネシア警察行政比較セミナー」(その1)

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横断歩道の渡り方を指導してみせるサクティアディ交通課長

2歳、3歳の幼児でも知っている童謡の定番、「犬のおまわりさん」。何気なく使っていることばですが、大人も子供もひとしく「お巡りさん」という親しみをこめた愛称で警察官を呼ぶような国は、日本の他にはなかなか見られないのではないでしょうか。

また、歌の中で警察官が親身になって迷子に対応し、周りの住民(スズメやカラスですが)に迷子の家のありかをたずねているのも、警察が地域に溶け込んでいる日本ならではでしょう。童謡などを通じて子供の頃からお巡りさんに慣れ親しんでいることが、警察を身近で頼りになる存在と感じるもとになっているのかも知れません。来日する外国人の多くがおどろく日本の治安の良さも、市民生活と密着した警察の存在が支えになっているのです。

交番や駐在所で道をたずねたり、落し物を届けたりといった経験はだれしも持っていると思います。住民と警察との接点になる交番は、色々な国で注目されていて、交番制度をはじめ日本の警察を見習って自分の国の警察を変えてゆこうという国がいくつもあります。

そんな国のひとつ、インドネシアでは独立以来国家の治安維持は軍隊が担ってきていて、ずっと警察というものがありませんでした。この国の民主化が進み、警察が軍隊から分離したのが2000年のこと。その翌年から日本政府は誕生したばかりの警察の制度づくりを支援すべく、手始めに「国家警察長官政策アドバイザー」を警察庁から派遣したのに続き、2002年から現在にいたるまで、技術協力プロジェクト「市民警察活動促進プロジェクト」を行っています。このプロジェクトではブカシ警察署を「モデル警察署」として組織運営を強化し、現場警察活動と鑑識機能強化に関する技術を移転しています。ブカシというのは首都ジャカルタの東に位置する人口約200万人の郊外ベッドタウンです。

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福岡県福岡市東区八田警部交番を訪ねて、日本のお巡りさんの一日を視察。

これまで、プロジェクトの枠の中でインドネシア警察に日本の警察官38名をJICA専門家として派遣する一方、日本の警察で研修を受けたインドネシア警察官の数も200名弱に上ります。また、無償資金協力により設置されたものを含めて、ブカシ警察署管内に14箇所の交番が設置されました。交番の現地名称は「警察・市民パートナーシップセンター」と、新しいシステムを導入するにあたって少しでも市民に親しまれるように工夫が凝らされています。これらの成果としてブカシ警察署内での警察官の意識改革が進み、市民の視線に立った警察づくりが進みつつあります。

次回のこのコーナーでは、写真でご覧いただいた、インドネシアから研修員として来日した警察官たちの見た日本の警察活動についてお知らせいたします。


JICA東京 井上達昭