ラオスの母子保健向上に向けて−日本の母子保健サービスを参考に

茨城県職員・水戸市保健所職員と研修員との意見交換

開発途上国のなかでも特に開発が遅れた国のひとつ、ラオス人民民主共和国は東南アジアの内陸国です。人口はおよそ600万人。近年めざましい経済成長が続くこの国は、「極度の貧困と飢餓の撲滅」や「初等教育の完全普及」などのミレニアム開発目標(MDGs)を達成して低開発途上国から脱け出すことを目指しています。しかし、特に地方部では教育や衛生などの社会サービスを受けられない人も多く、保健や教育の分野において開発目標の達成が危ぶまれている中、特に注目されるのが母子保健です。

水戸市保健センターの母親学級での講義「妊娠中の栄養」で使用していた教材(食品マグネット)を見て、「この教材をラオスにほしい!」と絶賛。

ラオスの妊産婦死亡率は10万人に470人(日本では5人)、乳幼児死亡率は1,000人に54人(日本では3人)*と、改善されつつあるとはいえ東南アジアの国の中でも特に高い数値を示し、その改善が急務です。しかし、地域住民の健康衛生に対する認識は低く、道路などインフラの未整備や地域間格差、文化的障壁などもあいまって、多くの住民が十分な母子保健サービスを受けていません。
このような状況を改善するために、JICAはラオス国保健省と協力してより多くの住民が母子保健サービスを受けるようになることを目指した「母子保健統合サービス強化プロジェクト」を実施しています。今年1月には、そのプロジェクトの関係者を日本に招き、日本の保健行政、特に母子保健に関する行政サービスの概略を紹介し、ラオスの戦略計画の具体的な方向性、実施状況を改善することを目的に研修を行いました。

母親学級での教材のひとつ、妊婦体験ベストを着る研修員。妊娠中の重さを体感することができます。

ラオス国保健省から来日した研修員は10名。国立国際医療研究センター国際保健医療協力局(関連リンクを参照)と協働し、日本の保健医療システムや母子保健行政についての講義をはじめ、病院や助産所の見学、さらに茨木県水戸市の保健所、保健センターを訪問し、県の母子保健政策の取り組みを知るための視察を盛り込んだ、約2週間の研修を行いました。

研修員からは、「妊娠届や出生届による情報管理、妊婦さんの健診、健康管理など、現場を見てよく理解することができた」、「また日本に来て、ラオスの母子保健に役に立つことを学びたい」などの感想をいただきました。新しく目にすることも多く、視察先などでは積極的に実習に参加し、質問や意見交換をする場面が多くありました。

このような教材の現物を見て触れることを通じ、水戸市で実施している母子保健事業についての理解が深まったようです。

国が発展していくためには、安全で適切な出産、育児のための保健サービスを通して、妊婦さんと赤ちゃんの命を守っていくことはとても大切なことです。ラオスの他にも、世界にはまだ日本のような母子保健サービスが整っていない国がたくさんあります。どの国に生を受けても、母子の保健が豊かに保たれるような世界が実現される日が来ることを心から願います。

JICA東京 人間開発課 高野亜希子 (2013年1月)


*出典:2012 WHO世界保健統計