妊産婦と子どもの健康改善を目指して 〜仏語圏アフリカの挑戦〜

「妊産婦の健康改善」研修ワークショップ、研修員同士で各国における母子保健課題を整理

2014年12月15〜17日、セネガルの首都ダカールにて、仏語圏アフリカを対象とした“「母子ケアの改善」経験共有セミナー”が開催されました。セミナーには、2003年から実施している「妊産婦の健康改善」研修に参加した帰国研修員も参加し、帰国後の活動・各国でのGood Practiceが報告されました。

“継続ケア”を知っていますか?

“根拠に基づく医療(EBM)”を実践する湘南鎌倉総合病院の視察

継続ケアとは、妊娠・出産・子育てという各時期を一続きと捉え、その流れの中で、家庭・コミュニティ・保健施設が連携しながら母子保健サービスを提供するという考え方であり、妊産婦・新生児・乳幼児死亡率の改善に向け、世界で種々の取り組みが実施されている。日本では、「母子手帳」を代表するように、戦後間もない時期から母子の継続ケアに取り組んできました。
「妊産婦の健康改善」研修は、日本の最先端の継続ケアにおける医療サービスを始め、医療施設や人材が不足している地方において継続した母子保健サービスを提供するための行政・医療施設・コミュニティの連携について学ぶことを目的とした研修です。2003年から開始され、帰国生は100名にのぼります。

セネガルでの積極的な取り組み〜PRESSMNモデル〜

PRESSMNモデル病院であるセネガル・ガスパールカマラ病院、施設内に来院者向けのポスターが貼られている

研修対象国であるセネガルでも妊産婦・新生児死亡率が高く、日本はこの研修を含め、母子保健分野での協力を実施してきました。中でも、「タンバクンダ州及びケドゥグ州母子保健サービス改善プロジェクト(PRESSMN)」(2009〜2011年)では、「継続ケア」の概念を基礎とし、人間的なお産、そして科学的根拠に基づく妊産婦・新生児ケアを目指す「PRESSMNモデル」が形成され、その実践に向けたマニュアルや、コミュニケーションツールが策定されました。同プロジェクトのフェーズ2(2012〜2017年)では、このモデル普及により、保健医療施設で質の高いサービスを受けられる妊産婦・新生児の数が増加し、妊産婦・新生児死亡率が低減することを狙っており、セネガル保健省を中心にPRESSMNモデルの全国普及・拡大が進められています。
この、セネガルにおけるプロジェクトと「妊産婦の健康改善」研修との連携事例・教訓をセネガルに留めず他の仏語圏アフリカ諸国を共有し、そして他国の母子保健サービスから学ぶという目的にて、“「母子ケアの改善」経験共有セミナー”を開催しました。セミナーはプロジェクト・研修実施にご協力頂いている国立国際医療研究センター(※1)と共催し、セネガルの首都ダカールの会場には120名を超える関係者が出席する大規模な会となりました。

日本の学びを活かす帰国研修員の活動

「母子ケアの改善」経験共有セミナーにて発表するベナン帰国研修員

セミナーに参加した、コンゴ民主共和国/ブルンジ/ベナン/マダガスカル/ブルキナファソの帰国研修員からは、各国の母子保健政策の現状、研修終了後に自国で行った取り組みが紹介されました。日本とは異なる環境の中で限られたリソースを駆使しながら、どの帰国研修員もそれぞれの立場において、より良い母子保健サービス提供に向け真摯に取り組んでいます。セミナーの3日間を通し、参加者間での活発なディスカッションが行われ、国を跨いだネットワーク形成に向けた話し合いも行われました。

母と子の健康を願って

紀南病院への視察、真剣な眼差しで説明を聞く研修員

研修対象国は、フランス語を公用・準公用語とする「サブ・サハラアフリカ」に属し、妊産婦・新生児・小児の死亡率が世界で最も高い地域です。また、アフリカ地域では、保健に関連したミレニアム開発目標(MDGs)、特に妊産婦死亡率の改善の遅れが報告されていますが、母と子の健康を願い、自国の母子保健サービスの改善に向けた取り組みは、一歩ずつではありながら前に進み始めています。
研修員は、各国で母子保健政策の策定に携わる行政官、つまり新たな命のスタートに携わる代表者です。より効果的な、そしてインパクトの大きい妊産婦の健康改善に向けた取り組みを目指し、JICA、そして各国の挑戦は続きます。

JICA東京 人間開発課 木内真理恵 (2014年)