我が国が誇る「ものづくり」の考え方をメキシコに〜「自動車部品サプライヤー向け技術研修」

メキシコの自動車部品メーカーへの技術協力「自動車産業基盤強化プロジェクト」

 メキシコには近年我が国の自動車メーカーが多数進出しており、自動車生産拠点としての重要性が益々高まっています。メキシコにおいて、日系企業のものづくりの考え方を浸透させ、将来的に製造現場の中心的な役割を担うことができる部品メーカーを育成することにより、メキシコ自動車産業のサプライチェーンを強化することが急務となっています。
 JICAの技術協力「自動車産業基盤強化プロジェクト」では、メキシコで特に多くの自動車関連企業が集中する地域を対象に、日系自動車メーカー部品メーカーと連携し、メキシコの自動車部品メーカーのカイゼン指導・ビジネスマッチング、州政府のサポート体制強化を支援しています。この技術協力の一環として、2015年6月29日から7月10日まで、協力相手先であるメキシコの自動車部品メーカー担当者13名及び州政府担当官2名が来日し、現場での品質管理や問題解決の仕組み、自治体による自動車産業振興施策の運用例等について学びました。

部品工場製造ラインの見学

自動車部品工場の製造ラインでカイゼンの現場を見学

富士重工(矢島工場)見学

 研修では、数多くの工場見学を行い、現場の実例を通じてカイゼンの促進過程を学ぶことに重点を置きました。7月1日に訪問した自動車部品を製造している上板塑性(かみいたそせい)株式会社では、実際の製造ラインを見学し、作業ミスを防止するポカヨケの事例や品質管理面での工夫、作業効率を上げるための措置などについて、実際の機材と手順を見学しながら理解を深めました。特に、全職員が毎月1つの改善提案を行う全員参加型によるカイゼン活動の取組みに対し、ぜひ自分の会社でも導入したいと感銘を受けていました。本研修では、同社以外にも、トヨタ自動車・富士重工などの大手企業から、比較的小規模な部品メーカーまで、計8社の製造現場を見学しました。

JETROとの共催セミナー「メキシコ自動車産業セミナー」

大盛況だったメキシコ自動車産業セミナーの様子

 メキシコに日系企業の進出が相次いでいることから、ジェトロは、日系自動車部品メーカーと現地部材メーカーの商談機会を創出するためのマッチング支援を実施してきており、JICAとJETROは、この研修の機会を捉え、「メキシコ自動車産業セミナー」を実施しました。当日は大盛況で、約150名の参加者があり、メキシコ自動車産業への期待・関心の高さがうかがえました。セミナーでは、JETROやメキシコに進出している日系企業より自動車産業の現状や課題点についての発表を行ったほか、研修員からも、プロジェクトの成果に関する発表を行いました。
 セミナ—終了後には、研修員とセミナー参加企業との名刺交換会などネットワーキングの機会も設けられました。当日の詳しい内容と資料については、以下のウエブページをご参照ください。

自治体による自動車産業振興策

 この研修には、メキシコで自動車関連企業が集中するグアナファト州(メキシコの中央高地に位置する州)の経済開発省の職員も参加し、自治体による自動車産業振興策を学びました。
 7月8日には、自動車産業を復興の牽引役と位置付ける宮城県の自動車産業振興室による講義が行われ、県内の自動車メーカー受注獲得に向けた商談会の開催、各生産者の人材育成支援や取引あっせんの実施など具体的な施策について講義を受け、各社の強み・課題を個別具体的に把握し、効果的な支援を展開することが重要である、というメッセージが伝えられました。特に州政府関係者からは、帰国後に実践可能な施策のヒントを得たと好評でした。

 研修終了後、研修員からは講義や視察のみならず、日常生活のあらゆる場面において、規律正しさ、チームワーク、整理整頓の徹底、細部へのこだわりなど、KAIZENを生み出すもととなった日本固有の文化を実感することができたとの声が多く聞かれ、まさに本邦研修ならではの成果を挙げることができました。
 日本が誇る「ものづくり」の精神と知識を身に着けた研修員たちが、メキシコでのカイゼン活動を牽引し、自社の業績の向上のみならず、メキシコ・日本の自動車産業のさらなる振興に向けて活躍してくれることを期待しています。
産業開発・公共政策課 天野 (2015年7月)