タイからの長期研修員 日本音響学会より学生優秀発表賞を受賞!【研修員受入事業】

2016年5月17日

今年の3月、日本音響学会より学生優秀発表賞を受賞したタイの女性研修員にインタビューを実施しました。

本音響学会より学生優秀発表賞を受賞

(左)チタノン・ナチャナンさんと(右)恩師である及川教授

チタノン・ナチャナンさんの第一印象は、普段、大学院の工学部で難しい研究をしているとは思えないほど、可愛らしく、元気な女性でした。タイのモンクット王工科大学ラートクラバン校で情報工学を学び、2013年9月にJICAのシード・ネット・プログラム(注)の長期研修員として、早稲田大学大学院の基幹理工学研究科に迎えられました。現在は表現工学の分野で博士号を取得するため、恩師である及川教授のもと、日々研究に勤しんでいます。
(注)「アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)」の略称。ASEAN諸国の人材育成への協力を目指し、工学系高等教育による人材育成事業として、ASEAN10カ国の工学系トップ大学19校を対象とし、その教育・研究能力の向上を目的としている。

彼女は2015年9月に発表した「シュリーレン法を用いた音場の可視化における時空間フィルタの評価」という研究論文で、今年の3月10日、日本音響学会より学生優秀発表賞を受賞しました。この研究により、普段目に見えない音が光の屈折を利用した特殊な装置を利用することにより肉眼で観測することが可能になり、音の持つさまざまな性質を調べることができます。

例えば、音が伝わる方角や反響の仕方などを知ることにより、コンサートホールやスタジアムなどで、より効果的な音響システムを構築することが可能となります。ナチャナンさんの母国タイでは、日本のような大型コンサートホールや会議施設などが少なく、音響技術もまだそれほど高くはありません。今後、タイが経済成長していく過程で、より質の高い音響技術の需要が増えることを考えると、ナチャナンさんの研究はタイ経済に大きく貢献できるものだと考えられます。

日本では三味線の虜に

三味線を演奏するナチャナンさん

ナチャナンさんが今回、日本で「音」にまつわる研究をしようと思ったきっかけは、在籍していたモンクット王工科大学ラートクラバン校の恩師からの推薦があったそうです。同大学に「音楽とマルチメディア工学部」という新しい学部を設立するので、そこで講師として教壇に立ってもらいたい、というオファーでした。

もともと音楽に大変興味があり、幼少のころから歌や楽器を弾くことが大好きだったため、この研究を始めたのは自然の流れだったのかもしれません。JICAが主催した留学生交流イベントで初めて三味線と出会って以来、虜になってしまったと彼女は話します。三味線の音色の素晴らしさだけでなく、三味線を習うことによって日本の文化や風習まで学ぶことができるのがとても楽しいそうです。日本で三味線に出会ったことで、日本舞踊の舞台を見学したり、また自ら奏者として舞台に立ったりと、日本での生活を満喫している様子が活き活きと伝わってきたのが大変印象的でした。

帰国後は講師として活躍

早稲田大学大学院の研究室にて

日本で最も印象的なことをうかがうと、真っ先に「日本人の優しさ」だと答えてくれました。同じ研究室の及川教授をはじめ、研究生の方々のサポートやJICAスタッフの優しさが大きな支えとなっているようです。及川教授の恩師にあたる山崎教授は、以前、音響学会の会長だったこともあり、お会いする機会が幾度かあり、大変尊敬しているそうです。

また、来日前は不安だったという言葉の壁も、大学の研究生同士が時間をかけて教え合うことで、今ではスムーズに意思伝達ができるようになりました。

帰国後は、これまでの研究を活かし、まずはモンクット王工科大学ラートクラバン校で新しく設立される「音楽とマルチメディア工学部」で講師として教壇に立つことになります。タイでは未開拓なこの研究分野において、彼女がリーダーシップをとり、活躍できる場は広がるばかりです。


JICA東京 人間開発課 本郷 奈美・境 勝一郎