「子どものセーフガーディング」がモンゴルで根付づいていくために 1

     〜ウランバートル市の子ども保護専門家チーム〜

2017年6月19日

意見交換会に集まった子ども保護専門家チームのメンバー
(C)Save the Children

草の根技術協力案件「モンゴルにおける要保護児童支援制度の改善及び強化支援事業」が始まってもうすぐ2年になります。そこで、2回に分けて、実施団体である公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンから進捗状況をご報告いたします。

これまでの成果

バヤンズルフ地区第27ホローの子ども保護専門家チーム
(C)Save the Children

 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンではウランバートル市にある152のホロー(ウランバートル市の末端行政単位、約1万人前後の人口)のうち、6つのホローにおいて、法律で設置が義務付けられている「子ども保護専門家チーム(以下、専門家チーム)」の能力向上をサポートしています。具体的には、専門家チームのメンバーであるホローのソーシャル・ワーカー、医療ソーシャルワーカー、警察官等が、子ども虐待やネグレクトといった問題に対して、個々の職種に応じてどのように取り組むべきかを明確化し、対応マニュアルを作成・導入しています。子どもの保護の問題報告用のフォーマットも整備し、専門家チームが扱っている実際のケースに対して、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのソーシャル・ワーカーがアドバイスも行っています。
 この2年間で大きく変わったのは、専門家チームの各人が、自らのやるべきことを整理して、把握できたことにより、自信を持って業務に従事していることです。また、ケース・マネジメント 用にフォーマットを整備したことで、専門家チームの関係者間でケース情報の管理と共有がスムーズになり、業務を進めやすくなった、という声も聞かれました。
 2017年3月には、事業対象地の全6ホローの専門家チーム・メンバーが一堂に集まり、経験を共有するセッションが開催されました。「私のチームではこのような点を工夫をしている」といった報告がなされ、お互いの学び合いを深めている様子がうかがえました。また、ホローのリーダーが自ら参加し、発表してくれることもありました。参加者からは「継続的に学びを深めていきたい」、「次回はうちのホローで開催させてほしい」という声も聞かれ、子どもの保護の課題解決に取り組んでいる姿が確認されました。

山積する課題

ソンギルノハイルハン地区第2ホローの子ども保護専門家チーム。医者が参加している。
(C)Save the Children

 このような好ましい状況がある一方で、多くの課題が未解決です。まず、専門家チームの運営にとって不可欠な財政的な手当てがなされておらず、活動は今のところすべてメンバーが自腹でまかなっている状況です。業務で使用する電話代や保護対象の子どもを病院に連れて行く交通費、ドメスティック・バイオレンス等を要因として緊急に引っ越しせざるを得ず暖房や食料費が十分にない家庭へのサポート等、専門家チームのメンバーや他の行政関係者が寄付をしてまかなったそうです。とはいえ、昨年モンゴル国会で可決された「子ども保護法」の実施に伴い、近日中にはじめてウランバール市の専門家チームに財政面での支援がなされる予定で、状況が改善することが期待されます。
 しかし、何より大きな課題は、子どもの虐待やネグレクトを引き起こす要因への対応ができていないということです。関係者の聞き取りから、以前から指摘されていた4つの要因が特に深刻だと再確認できました。

1. 経済的な問題
経済的に厳しい世帯では、心理的な余裕もなく、親が子どもに適切な養育をできていないことがあります。親や養育者が長時間働かざるを得ず、子どもがネグレクトの状況におかれたり、家で子どもが一人で過ごしている際にやけどをしてしまったりというケースが聞かれます。

2.配偶者間を中心とした近親者間の暴力
いわゆる「ドメスティック・バイオレンス」がモンゴルでは深刻化しており、今年の2月には対策法も制定されました。しかしながら、取り組みはまだまだ不十分です。今後、子ども保護専門家チームにドメスティック・バイオレンスへの取り組みが業務として課されることになります。

3.アルコール依存
親や養育者のアルコールの問題は深刻です。すべての子ども保護専門家チームから今後取り組むべき課題としてあげられました。各専門家チームに「今抱えているケースのうち最も深刻なケースを教えてほしい」と聞き取りをしたところ、回答すべてに何らかの形でアルコール依存の問題が関わっていました。

4.障害
子どものネグレクトに障害は大きく関わっています。親や養育者が障害のある子どもにどのように接してよいかわからないため、何もなされず、そのままにされてしまう、という現実があります。障害の早期発見や早期療育が強く求められるところです。また、地域社会の障害のある人に対する理解が必ずしも十分でないことも、大きな懸念点です。

モンゴルの子どもを取り巻く課題はさまざまです。今後はこういった点も考慮して、事業を実施していければと考えています。



公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 
海外事業部 
紺野誠二