おじいちゃんがくれた、夢の2カ月間 ‐すべての子どもたちに、教育の機会を‐

2018年9月3日

2017年12月23日、インドネシアのとある村で、4歳の男の子が短い生涯を閉じました。名前はアンディカ君。生まれたときから心臓疾患を抱えていました。そんなアンディカ君のおじいさんが、亡くなる直前に叶えてくれた夢があります。それは「幼稚園に通うこと」でした。

障害は治すもの?

アンディカ君は、生まれつきの心疾患により体の成長と運動機能の遅れがありました。両親は育児を放棄。彼の祖父であるロジさんが主な養育者となりました。ロジさんはかねてから、「孫を幼稚園に通わせたい」と願っていましたが、経済的な理由に加え、現地には障害のあるアンディカ君を受け入れてくれる幼稚園はありませんでした。インドネシアでは「障害=個人の問題」という意識が依然根強く、障害のある子どもの教育は分離し、障害を「治す」ためのリハビリや医療的ケアを受けるべきであるという考えが少なからず存在します。また、幼稚園での教育は、感覚や情操を育むための遊びの要素が少なく、学習的要素が強いため、障害のある子どもが参加しにくいのが現状です。そこで一般社団法人こども支援チェルクは、2017年よりJICA草の根技術協力事業を通じて、障害のあるなしに関わらず、すべての子どもたちが安心して楽しく学べる幼稚園の環境づくりに取り組んでいます。

地域の力で幼稚園に通えるように

右がアンディカ君。歩行は困難ですが、クラスメイトと仲良く遊んでいました。

アンディカ君のおじいさんのロジさん

草の根事業の中では、障害のある子どもも参加しやすい造形、音楽活動や、絵本の読み聞かせが出来る幼稚園教師を育成しました。その一方、地域社会に出向いて村人に向けた啓発活動や、障害のある子どもの家庭訪問も行っています。
ロジさんとこども支援チェルクのスタッフが出会ったのもこの家庭訪問がきっかけです。家庭訪問でアンディカ君の状況と、ロジさんの願いを聞いたスタッフは、アンディカ君が幼稚園に通えるようになるよう、村長や助産婦などに協力を依頼しました。そして地域ぐるみで幼稚園に交渉し、通園に必要な初期費用を村が負担、その後はロジさんが幼稚園の掃除をするという約束で入園が叶いました。夢だった幼稚園生活は2カ月という短い期間でしたが、アンディカ君は、クラスメイトと一緒に絵本の読み聞かせや工作、音楽などたくさんの活動を楽しみました。

大切なのは、「どんな子どもでも認めること」

障害を持つ子供の母親から聞き取りを行う松本氏(中央)。一人一人と丁寧に、言葉を交わします。

すべての人々に包括的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

日本で30年以上、幼稚園や特別支援学校での指導を行ってきたプロジェクトマネージャーの松本氏が、現地の幼稚園教師に繰り返し伝えていることがあるそうです。それは、「一日一つでも、それぞれの子供たちの良いところを褒める」ということだと言います。障害のあるなしに関わらず、誰でも得意、不得意なことがあるのは自然なこと。皆同じゴールを目指す必要はありません。異なるゴールでも、子供たちにとって達成の喜びは同じです。障害を一つの「個性」としてとらえ、その「個性」を周囲の人々が認め、子供たちの良いところを認めてあげる、そのような社会が、インドネシアだけでなく、日本でも求められているのではないでしょうか。

<報告者>市民参加協力第二課