【研修レポート】空の安全をサポート JICA課題別研修「PBN飛行方式設計」

2018年11月29日

【画像】【航空分野のニーズと課題】
 日本の航空需要は、国際線・国内線とも増加傾向にあり、これに対応するため安全且つ効率的な運航を将来に渡り確保する航空交通システムの構築が必須となっています。また、近年の燃料費高騰の背景や騒音、CO2削減等の環境問題への取り組みも期待される中、航空機の騒音に配慮し、排出を軽減する運航を実現する必要があります。
 広域航法(RNAV:Area Navigation)等の新技術を活用した飛行方式の導入は、この様な安全且つ効率的な運航を実現させるための切り札と言っても過言ではありません。

【JICAの研修での取り組み】
この様な状況のもと、JICAでは、様々な支援を実施しておりますが 、日本において知識や技術を深める技術研修としましては、2011年度から、国土交通省航空局のご協力を得て、「飛行方式(RNAV)経路設計」を開始しました。その後、随時内容の見直しを行い、2014年には研修名を「高性能・高効率な飛行方式の設計」に改め、更に2017年度からは「PBN 飛行方式設計」として実施し、現在に至っています。



2011から2018年度までに、14ヵ国 合計71名が参加しています。2018年度の本研修の定員は10名で、航空交通や管制業務を所掌する機関の職員を対象に実施しております。本研修は毎年実施しており、研修期間は約5週間 (2018年度実績6月6日から7月14日)です。
【研修の目標と成果、内容】
冒頭に記載したような課題は、途上国も例外ではありません。今後も増大することが予測される航空需要に応え、安全を確保するために、空港から出発又は到着する航空機に対して、近年各国で導入されている新たな技術(航空機に搭載した飛行管理コンピュータとGPS等の衛星を組み合わせた航法)を使用した柔軟な飛行経路を使用した新航空管制経路が不可欠となっています。 
また、この飛行方式の設計には、関連する基準や手法について精通する必要があり、その基準や手法の習得を目指し、本研修を実施しています。
このために、研修目標と成果(4点)を、以下の通り設定しています。




(研修目標)
参加研修員の各国に於いて、新航法に基づいた航空管制経路設計能力が普及され新航法に基づいた航空管制経路設計能力が習得されること。
最終的には、新航法に基づく飛行方式の検証区域の描画方法により当該区域にかかる、または地上障害物との安全間隔(最低降下高度、進入限界高度)等が算出できるか、研修中に実技を行うことで目標が達成出来たかどうかの確認を行っています。
(成果:4点)
① 日本の飛行経路設計における品質保証への取組みが理解される。
② 飛行経路設計の設計基準が理解される。
③ 飛行経路が設計できるようになる。
④ 飛行経路設計ソフトウェアの概要について理解する。



【研修の流れと活動】
研修では、先ずはJICA東京センター(JICA東京)にて概論や一般基準及び手法を学び、次に、仙台国際空港を題材に演習を行い、実際に自分達で現地調査をしてPBN飛行方式に基づいた設計を行います。研修の後半は設計した飛行方式がどの様なプロセスを経て採用・運用されるかを体系的に学ぶため航空局の関連施設も見学します。
 参加研修員には、自国の状況や課題を簡潔に説明するカントリーレポートを作成・提出し、研修開始時に発表していただきます。また、本分野の基礎知識に関する事前試験も行っています。研修の最後には、研修中の講義や現地調査・視察で得た知見・経験を踏まえて、帰国後に自国での課題にどのように取り組むか、今後の活動を計画したアクションプランを作成し、発表をしていただきます。
また、帰国後には、母国での所属部署及び関係機関において、研修の成果として、自身が作成したアクションプランや日本での経験を発表・共有して頂くこととしています。

【画像】【研修関係者の声】
・国土交通省(航空局)
経路短縮を実現し環境負荷も低減するPBNの導入は、航空の国際標準を決める国際民間航空機関(ICAO)の最重要項目です。導入には様々な取組が必要ですが、その中でもキーパーソンとなる飛行方式設計者の存在が不可欠で、途上国ではこうした人材が不足又は不在のため導入が進んでいない途上国がまだまだあります。
本研修では、設計のみならず飛行機を使った検証手法や設計された飛行方式を公示するプロセスなど、航空局が持つノウハウも教授し、PBN導入に必要な要素を体系的に学べる機会を提供することが出来ました。研修員には、研修で身につけた技術を使って自国のPBN導入に貢献して欲しいと思っています。そして、何時か地域の課題や方針を議論するICAO地域会議で、再会出来ることを願っています。

・2018年度研修受託機関(株式会社 NTTデータアイ)
本研修では、各国から集まった研修員が、講義や演習を通して、自国に戻ってから自身の力で飛行方式の設計ができるようになることを目標としています。加えて、設計業務の実施に必要なプロセスや手順の意味や重要性を理解し、更に我が国における設計作業の現場を視察・体感することで、自身の所属する組織にしっかりとした品質管理体制を構築出来る様になること、結果、参加対象国にて安全な飛行方式の設定が出来る様になることを目指しています。


そのため、其々の研修員が積極的に研修に参加すること、納得するまで議論・演習を行うことが重要であり、受託機関としては、講師及び研修員の間で活発なコミュニケーションがなされる様な環境作り、特に、研修員間の良好な関係作りが出来る様に工夫することを心掛けています。


これまで実施した研修では、毎年全ての研修員が一つのチームの様に仲良くなり、最後は全員でやり遂げた、という達成感と共に帰国していると感じています。文化や歴史的背景の全く違う各国からの研修員が、本研修の過程に於いて出来る限り実務に近い設計プロセスを共有しながら徐々に一つになっていくのを見るのは、受託機関として非常に嬉しい限りです。
我が国に於ける飛行方式に係る知識や経験をベースにして、全ての研修員の国で、より安全且つ効率的な飛行方式が設定されて行くことを期待しています。

・研修員の声(2017年度に参加ラフマット・ヤヌアール・ワシードさん、インドネシア)
私は、2014年からスラバヤ国際空港の管制官となり、飛行方式設計の業務にも携わってきました。この研修コースには、2017年6月に参加しましたが、研修はとても有益であり感銘を受けました。オートメーションツールを使用しての設計の仕方や、どの様により良い飛行方式を設計するのか更に深く考える機会を多々頂きました。現在、私は、ケディリや東ジャワの新空港、またスマランやパレンバン、スラバヤの既存の空港における飛行方式設計見直しなども行っていますが、研修で学んだ知識を活かし、またインドネシアの他の管制官に共有する等、現在の業務に役立てています。


【今後の取り組みの方向性】
・(JICA社会基盤・平和構築部より)
経済成長やLCC(Low Cost Carrier)の勢力拡大に伴い、世界の航空需要は年々拡大しています。国際航空運送協会(IATA) によれば、2017年の国際線および国内線をあわせた世界の航空旅客数が初めて40億人を突破したそうです。

開発途上国の社会経済の発展のために航空分野が果たす役割は大きく、航空需要も年々増加しています。然しながら、空港施設や管制機材等のインフラの未整備や老朽化、航空分野の人材不足、ノウハウの不足等の課題を抱えています。JICAは資金協力や技術協力を通じて、開発途上国の航空分野の安心・安全性の向上、効率的な発展のために協力を続けていきます。                  以上