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【研修レポート】持続可能な開発プロジェクトの実施のために:課題別研修「開発事業における環境社会配慮実務」コース(2018年度)

2018年12月17日

開発途上国において開発事業に携わる環境社会配慮担当者や環境審査機関の担当者の「JICA環境社会配慮ガイドライン」(以下「ガイドライン」)への理解促進や実務能力向上を目的として、課題別研修「開発事業における環境社会配慮実務」コースを2017年度から3年間採択しており、この度、2年目の研修が実施されました。

社会・経済の発展に貢献するための開発事業を行う際、大気汚染や水質汚濁、生物多様性保全等の環境問題に加えて、非自発的住民移転や先住民族の権利の侵害など社会への望ましくない影響が発生する可能性があります。持続可能な開発の実現のためには、そういった問題の回避や最小化のために必要なコストを、開発コストの中に組み入れる取り組み(環境社会配慮)が必要です。

環境社会配慮について理解を深める

カンボジア研修員によるプレゼンテーション

世界銀行によるプレゼンテーション

スコーピング演習グループワーク

このコースでは、事業実施機関、環境審査機関及び融資機関の環境社会配慮に関わる職員に対して、世界銀行の環境・社会フレームワーク担当部署とJICAの審査部より、開発事業における環境社会配慮に対するそれぞれの理念や手順とともに、事例を用いた環境影響評価、生態系配慮、社会配慮及びモニタリング等の技術的手法などの講義とディスカッションが行われました。



また、研修員は、自分がこれまで経験した実際のプロジェクトの成功事例や失敗事例を発表するとともに、ガイドラインの環境チェックリストを用いた環境社会配慮確認の演習や、実際のプロジェクトを教材にしたスコーピングのグループワーク、アクティブラーニングの手法を取り入れた住民参加の講義や現場視察などに参加し、環境社会配慮に関わる手順をより具体的に体験しました。



講義、演習及び視察においては、講師と研修員、研修員同士が活発に意見交換できるインタラクティブな形をとることに最大限に配慮し、質疑時間を十分に設けました。また、ファシリテートにより議論を深め、展開できるよう工夫しました。研修開始後の3日間は、時差の影響に配慮し、アイスブレイクや研修員からの各国の環境社会配慮制度の課題や実際の開発事業のケーススタディについてのプレゼンテーションに十分な時間を掛けることで研修員同士の相互理解を深め、その後の活発な議論を引き出すことができました。

日本での視察から学ぶこと

北千葉道路建設事業に係る印旛沼のヨシ原造成現場の視察

クリーンプラザふじみ視察

有明水再生センターの視察

このコースでは、開発途上国において実施されているインフラ整備事業が日本においてどのように実施されたのかを理解すること、具体的には環境影響の予測、実際の環境保全対策と事業実施における住民参加や社会配慮を体感することも重要な目的のひとつとしています。



本研修では千葉県北部の道路整備事業及び東京都の廃棄物処理場や下水処理場、東京電力の川崎火力発電所における環境保全対策の視察を行いました。
千葉県北千葉道路建設事務所においては、北千葉道路建設事業における環境影響評価とヨシ原の造成について詳細な説明と活発な意見交換の後、道路と鉄道の一体整備や印旛沼のヨシ原造成現場を視察し理解を深めました。また、ふじみ衛生組合クリーンプラザふじみでは、周辺住民に配慮したゴミ処理施設として、ダイオキシンの発生を抑制する最新式ストーカ炉及び廃熱や焼却残渣の有効利用についての知識を得るとともに、プロジェクトの全段階を通じた住民参加についても学ぶ機会となりました。



有明水再生センターにおいては、下水の再生処理過程や汚水を分解する微生物についての説明を受けた後、テニスコートなどスポーツ施設の地下にある浄化設備を見学しました。汚れを分解する方法としてA₂O法(嫌気−無酸素−好気法)や生物膜ろ過法等の高度な処理方式の採用により汚水がきれいな水へと再生される工程と汚泥がレンガ他の建設材料へとリサイクルされることなどを視察を通じて学びながら、下水処理場の仕組みや環境保全への取り組みについて見識を深めました。

環境モニタリングについて実習を通して理解を深める

東京港野鳥公園での生態系調査実習①(植物)

東京港野鳥公園での生態系調査実習②(鳥類)

横浜市都筑区せせらぎの池での水質調査実習

ラボでの水質試料の分析実習

環境モニタリングの手法への理解を深めるため、生態系調査と水質調査の演習も行いました。

東京港野鳥公園では、生態系調査(植物及び鳥類)手法を学びました。また、横浜市内においては、大気汚染並びに騒音の測定機器を実際に使いながらその操作方法の説明を受けた後、近傍の公園の池で研修員が実際に流入水、池の水、流出水を採取し、その後、その試料を用いて窒素やリン、溶存酸素をラボで分析する方法の実習を行いました。

アクションプランの発表と今後への期待

スリランカ研修員によるアクションプランの発表

プログラムの最後に、研修参加者が本研修で学んだことを自身の組織等で共有するための行動計画とともに、自国の環境社会配慮実務における質の向上を図るための課題と取組みを示すアクションプランを発表しました。各国の課題分析をベースに、日本で得た知見や経験を反映して、個人や組織、省庁間などの階層や、短期・長期といったタイムスケジュールも加味した具体性のある計画が作成されており、その実現が期待されます。

コースに参加して(研修員からのコメント)

閉講式

このコースに参加した研修員から、以下のような感想が寄せられました。

開発事業のマイナスの影響を緩和してプラスの影響を増大させるのに、環境社会配慮を適切に実施することが重要であることが分かった。

・グループ討論や全体討論を通じて緩和措置について実習する貴重な機会を得ることができ、より明確に理解できた。

・開発事業の環境影響評価書を審査する際に使用するJICAのガイドラインについて、非常に多くを学んだ。帰国後、事業について議論する際に、役に立つコメントができると思う。

・研修を通じて、事業の実施前及び実施中、実施後に環境社会配慮を行う必要性を学ぶことができた。環境社会配慮の手続によって事業の環境社会影響を明らかにして、マイナスの影響を回避、最小化、緩和、相殺し、プラスの影響を増大させるための行動を取ることができる。

・それぞれの国に戻ったら、研修で学んだことをすぐに活用できると思う。自分の技術力が向上したので、学んだことを同僚や現場の担当者と共有して、持続可能な開発の達成に向けて環境社会配慮をもっと上手に実施できるだろう。



[研修受託機関:いであ株式会社]