【研修レポート】パレスチナ難民支援関係者が、首都圏と東北で日本の経験を学ぶ。

2019年1月9日

国別研修:住民参加と社会的包摂(パレスチナ)
研修期間:2018年12月3日~2018年12月14日
参加人数:7名

7名のパレスチナの自治政府職員らが首都圏・東北の被災地を訪問し、難民キャンプの生活改善のために日本のまちづくり手法を学びました。

小池百合子都知事に表敬訪問しました。

【画像】2018年12月3日から2週間の日程で、パレスチナから難民支援に関わる政府職員ら7名が来日し、日本における住民参加や社会的包摂の経験について学びました。

 パレスチナ難民支援は主に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)とパレスチナ解放機構(PLO)難民問題局(DoRA)が担っています。
国際協力機構(JICA)は2017年より「パレスチナ難民キャンプ改善プロジェクト」を開始し、日本人専門家を派遣して、難民キャンプ改善のために必要な、住民参加や社会的弱者の包摂等に関わる能力強化をDoRA職員に対して行っています。今回の7名の来日もプロジェクトによる技術支援の一環として日本の経験を学ぶものです。

12月5日には、元日本パレスチナ友好議連会長でもある小池百合子都知事に表敬訪問しました。知事からは、アラビア語を交えての歓迎に続き、ご自身のパレスチナ訪問経験の紹介や、日本の次世代育成の取組みを見てパレスチナの将来を担うこども・若者の育成に生かしてほしいこと、東北の被災地では大震災からの復興にむけて努力している人々の姿や、震災で親を亡くし傷ついた子供たちがどのように癒されているかを見てほしいことなどが伝えられました。最後には2020年の東京オリンピック・パラリンピックでのパレスチナ選手の活躍を祈念する、とのメッセージが贈られました。

 研修員を代表してヤセル難民キャンプ課題部長から、アラビア語の挨拶のサラームは「平和」の意味、自分たちはパレスチナの平和と自由のため闘っている、日本人の責任感の強さを尊敬している、JICAは難民キャンプの支援に協力してくれた最初の(二国間援助)機関で、JICAのおかげでキャンプの状況が良くなっているのを知事にもご覧いただきたい、等の返礼があり、なごやかに記念写真撮影がおこなわれました。

世田谷区烏山地区や松陰神社の商店街の住民参加のまちづくり、横浜市鶴見区の平安町の町内会活動を視察しました。

世田谷区烏山地区では住民と区がまちづくりを議論・実行していく「ネット・わぁ~く・ショップ」を19年も継続しています。
そこでは実際に住民の提案により改善された事例であるバス停や郵便ポストなどを視察しました。バス停は改善前には車いすの人の乗降ができるスペースがありませんでしたが、大学、行政、住民など関係者が連携し車いすの人も使えるバス停に生まれ変わりました。郵便ポストも車いすの人でも使いやすく投函口が低く改善されています。

 また、高齢者や障害者の方々の包摂が課題である難民キャンプでのレクリエーションの参考ということで、障害者スポーツのスポーツ吹き矢も地元の住民グループの方々のご指導の下、体験することができました。さらに、松陰神社通りのユニバーサルデザインの視察では、官民が連携して作り上げた段差の少ない商店街の事例について世田谷区職員から説明を受けました。研修員からは、行政官ではなく商店街の個人が自主的に通りの掃き掃除を実施していたことが印象的だったとのコメントがありました。

 平安町では、高齢者福祉等の町内会の活動や、町内会の支援によりできた小学校の防災マップ作り、下校時の児童見守り活動を視察しました。町内会と行政や学校との連携は、難民キャンプ内の住民組織と行政との連携強化が課題である研修員たちにも興味深かったようです。

東日本大震災の被災地、女川町、浪江町、いわき市を訪れました。

 女川町は、震災前から人口減少問題に直面していたところ東日本大震災で被災してしまいました。その後公民連携のもとに外部者も取り込み、復興の成果が見られる街の一つです。人口減少という問題は簡単には解決できませんが、どのように人口を増加させるかではなく、人口が減少していく中でどのようにその変化に適した町づくりを目指すのかについて考え、対策を立てまちづくりに生かしていることが特徴の町です。そこでは、NPOと行政のそれぞれの立場からその得意分野を生かした復興まちづくりの取り組みについて学びました。

 福島県の浪江町では震災と原発事故による避難住民への行政の支援や自助、共助の取り組みについて学びました。浪江町役場では、被災後すぐに役場を移転させ公共サービスの提供を継続させたこと、県内外の避難町民の絆をつなぐイベントの開催、住民同士が集まる場づくりのためのタブレット端末の配布などの取り組みを聞きました。浪江町からの避難住民が暮らしているいわき市にも訪れ、避難住民の自治会の共助の取り組みを学ぶことができました。研修員からも浪江町、いわき市のそれぞれの立場の話を聞けたことが大変良かったというコメントがありました。70年にもなる避難生活を続けるパレスチナ難民と被災地の避難住民の方々では避難の背景は異なりますが、意見交換を通じて難民キャンプの生活改善のヒントになったようです。

研修員7名はパレスチナに帰国後、今回日本で学んだ住民参加のまちづくり手法を、難民キャンプの生活改善に役立ててくれることでしょう。

<報告者>産業開発・公共政策課 門脇