【研修レポート】コースリーダーとして世界の人材育成を -歴史ある結核研修が育成した日本人人材-

2019年1月24日

研修タイトル:「UHC時代の結核検査マネージメント強化-世界的脅威の疾患対策への応用-」
研修期間:2018年10月14日から2018年12月7日
参加国:アフガニスタン、カンボジア、ケニア、リベリア、ミャンマー、フィリピン、タイ

現在結核は感染症の中で死因の第一位となっており、世界では毎年多くの方が亡くなっています。昨年9月の国連総会ハイレベル会合では結核が取り上げられ、世界的な関心が集まっています。

JICAが結核研究所の協力のもと実施している検査技師向けの結核研修は1975年に開始し、これまで60ヵ国から354人が修了しています。この研修には日本人の若手専門家も参加しており、育成された研修修了生がコースリーダーとして研修を率いているという特徴があります。今回は研修に参加し、その後コースリーダーとして11年間活躍している松本宏子氏に本研修に関わることになったきっかけや今年の研修の様子について伺いました。

青年海外協力隊帰国後、結核ラボコースに参加

松本氏は、青年海外協力隊(平成4年度2隊次・西サモア・臨床検査技師)の派遣前研修で結核研究所と関わりを持ち、帰国挨拶に行ったことがきっかけで研修に参加することになりました。

本研修は結核検査室の指導者養成コースであるため、指導者に必要な能力を養うために教授法、問題分析、ワークショップが多く含まれています。松本氏は当時コースリーダーだった藤木明子氏の元で質の高い結核菌検査技術を学んだだけでなく、指導者に必要な技術を学んだことがその後のキャリアに活きていると振り返られました。

当時を振り返り「講義が終わった後にマレーシアからの研修員と話し合いながら、藤木先生が当時開発していた塗抹検査の評価法や外部精度評価(EQA)を確立するお手伝いをしたことは良い思い出です。」と語られています。

結核ラボコースのコースリーダーに

コースリーダーの松本氏

その後松本氏はイギリスにて感染症対策を学び、藤木コースリーダーの後任としてコースリーダーとなり今年11年目となります。

研修運営で心掛けていることを伺ってみると、以下4点をあげていただきました。

1. 実習を中心に、実践的なHands onの研修になるようにしていること。
2. ワークショップ形式を多く取り入れ、参加型セッションに重きをおいていること。
3. 帰国研修員をファシリテーターとして招聘することで、研修員のモチベーションを上げたクラスづくりを目指していること。
4. 参加する研修員達の経験や各国の検査室の状況を共有する機会を増やし、協創の機会をできるだけ多く作っていること。

実際、参加する研修員からは毎年「私も経験を積んで将来ファシリテーターとして戻ってきたい」という声が聞かれ、研修中だけでなく帰国後のモチベーションアップになっている様子がうかがえます。本コースはまた、1人1人に寄り添った丁寧な指導についても研修員から評価が高いのですが、松本氏にコースリーダーとしてのやりがいもたずねてみると、

「研修員が目を輝かせて新しいことを学んでいると自分が感じられた瞬間や、帰国後に各国の結核検査の分野で活躍している姿を直に見るときです。自分が専門家として各国へ行ったとき、行く先々で帰国研修員が研修で学んだことを活かして活躍しており、一緒に働けることは非常にうれしいことです。」と語って下さいました。

2018年度の研修を振り返って

実験室での研修

2018年度閉講式

【2018年度の研修を振り返って】

7か国から8名が参加した2018年度の研修を振り返ってもらいました。

「今年度は優秀な研修員が多く、質問も的を射たものが多く出され、活発なクラスづくりができました。そのためいつもより学びが深いように感じられましたし、今まで以上に私自身も教えられました。また、新しい試みとして、1.実習のプロセス評価と2.効果的なスピーチ(3分間スピーチ)を導入しました。1.プロセス評価は、実技・技術の評価を実習の結果だけではなく、技術そのものを評価できるようにと考えました。研修員にも評価するポイントを説明しましたので、どこが手順において重要なのかが明確となり、彼らの技術向上につながりました。2.効果的なスピーチについては、研修員が自分のアクションプランを効果的に上長等にアピールできるようにすることを目的としています。スピーチの対象者を研修員たちに選んでもらいましたが、彼らが選んだのは自国のJICA所長でした。一番恥ずかしが屋で自信なさそうな研修員がとても上手にスピーチでアピールでき、やってよかったなと思いました。」

今後へ向けて、「JICAや研修協力機関であるWHO、その他の人たちの意見を聞きながら、他の研修からも学び、よりよい研修を形作っていきたいと考えています。また、結核検査分野で活躍できる人材をより多く養成して仲間を増やし、今以上に世界的な問題である結核の制圧に貢献したいと思います。」と抱負を語って下さいました。

熱い思いを持ったコースリーダーに率いられた本研修が今後も世界の結核制圧に寄与することを期待しています。

<報告者>JICA東京人間開発・計画調整課