【研修レポート】防災 世界の国家気象機関職員の業務能力向上と連携強化に向けて

2019年3月29日

【気象・防災分野の課題とJICAの取組み】

気象庁の講義

<異常気象・自然災害は生活の身近なところに>
近年、日本でも身近な場面で様々な異常気象やそれに由来する自然災害が頻発しており、私たちの生活への影響が増す中、防災の重要性がますます高まっています。世界においても同様に、自然災害による経済被害は年々増加する傾向にあり、開発や貧困削減を進めるうえで阻害要因となっています。

<JICAの取組みと連携>
このような状況下、第3回国連防災世界会議(2015年3月)および国連サミット(同年9月)においても、防災対策の重要性が認識され、いまや地球規模で取り組むべき重要課題となっています。JICAは、日本の災害経験を踏まえ、災害が発生する前の予防段階における防災への支援を重視し、ハードとソフトのバランスのとれた災害発生前の対策や、災害発生後の復興においては「より良い復興(Build Back Better)」を目指し、防災協力を実施しています。

<JICA東京で研修プログラムを実施>
当センターでは、防災分野の課題の一つである気象観測・予警報能力強化に取り組むため、気象庁の協力のもと、途上国の国家気象機関職員を対象に、気象業務能力向上のための研修を45年以上にわたって実施しています。
2018年度は、バングラデシュ、フィジー、パキスタン、フィリピン、スリランカ、タイの6か国6名が参加し、約10週間(2018年9月26日来日~12月8日帰国)の研修を実施しました。

【JICA研修の学びと意義】

つくば視察

北海道放送(HBC)

海洋気象観測船の視察

<研修での幅広い学びと経験>
  研修では、観測・予報、気象衛星業務等に必要な講義のほか、数値予報(NWP)データ・衛星画像解析やガイダンスにかかる実習・演習、管区気象台・気象研究所等への見学・視察も実施し、より実用的な知識・技術を習得できるよう、網羅的なプログラムを提供しています。
特に、管区気象台視察では、地域の気象特性に応じた気象業務とその役割について実際に見て学んだほか、民間気象会社の一つでもあるテレビ局・北海道放送(HBC)見学では、官民の役割・連携を学ぶ機会となり、研修参加者からも高い評価を得ました。
研修の最後には、各参加者が研修の成果としてアクションプランを作成し、日本での学びをいかに自国の組織・業務へ活かすことができるか、具体的な活動計画を発表します。

<なぜ日本で研修を実施するのか>
日本において本研修を実施する大きな強みは、先進的な技術・システム、質の高い講師陣のほか、気象庁との連携・人的交流を強化することです。実際に、日本の気象衛星ひまわりの観測データが、周辺各国の気象業務において広く活用されている例のように、本分野のようなグローバル課題に対しては、全世界の気象・防災関連機関の連携・協働が非常に重要です。過去の本研修参加者たちの多くは、その後も各国気象業務や国際連携の活動の中で、続けて気象庁との連携を強め、活躍しています。

【研修関係者の声】

アクションプラン発表

<2018年度 スリランカ研修参加者(Mr. Wickramanayaka Karunaratna)>
-研修で学んだこと-
この研修は、数値予報(NWP)、衛星、気候システム、地球温暖化、レーダー技術等、気象業務に必要なあらゆる側面を網羅しており、講義・実習・視察を通して、気象庁の現業・実務についてより深く知り、体験することができました。
特に、NWPモデルのシステムエラーを減らすためのガイダンス活用、衛星気象・画像解析等は、自国担当部署がより精緻な気象予報業務を行うため、実務の向上に大いに役立っています。
-帰国後の活用と貢献-
帰国後、本研修で得た知識・経験は自国の関連部署・スタッフにも広く共有しており、その学び・経験は、私個人だけでなく、自国気象機関の能力強化のために、大変有益で価値あるものとなっています。

<気象庁(実施機関)>
-大気に国境はない!-
大気に国境はありません。地球上の広範囲にわたり影響を及ぼす気象災害、地球温暖化問題への対策を進めるためには国際協力が欠かせません。このため、気象庁では世界気象機関(WMO)等の国際機関における活動や、JICA等と連携した開発途上国への技術支援を実施しています。
-研修の意義と成果-
その中で、本研修は気象業務に直結する実践的な知識・技術を習得するための長期間かつ包括的な研修です。本研修は45年以上の長い歴史があり、その研修OBには母国で気象局の幹部になっている人もいます。また、国際会議や我が国からの技術支援活動等で出会う機会も多く、その際は本研修の必要性・重要性とともに感謝の意が寄せられます。
各国気象業務の発展のため引き続き、JICAや関係者と緊密な連携のもと継続的に実施していきます。

【今後の研修の方向性】

閉講式

<途上国のニーズに合わせた協力を>
気象分野における技術・システムは、将来的にはAIの活用も検討されているなど、日々進化しています。ただ、日本の最新技術を伝えるだけではなく、途上国のニーズ・現状にも照らしながら、より効果的なプログラムを検討し、本研修の更なる向上を図っていく必要があります。引き続き、気象庁との継続した協力関係のもと、開発途上国の気象・防災分野の能力向上・発展のために協力を続けていきたいと思います。

JICA東京 経済基盤開発・環境課