「アフリカ地域 障害者のエンパワメントを通じた自立生活促進」の研修員がTICAD Ⅶサイドイベントに登壇しました。

去る8月30日にJICA横浜で「障害とアフリカ開発:地域社会への包摂に向けて」をテーマにしたTICADサイドイベントが行われ、帰国研修員の基調講演と来日中の研修員が登壇し、あらゆる障害を持つ人たちが地域で暮らすことへの重要性について発信しました。

2019年9月5日

【100名以上が一緒に考えたアフリカの障害者問題】

多くの来場者が聴講

障害者も含め「誰一人取り残されない」社会をアフリカで実現するにはどのようなことが必要なのでしょうか?
去る8月30日にJICA横浜にて実施されたTICADサイドイベントにおいて「誰一人取り残されない」社会を実現するにはアフリカでどのような取り組みが必要なのかについて考えました。当日は100名以上の来場者があり、大盛況でした。ここでは今回の研修の概要とイベント後半部分の基調講演、そして研修員を交えたパネルディスカッションについて紹介します。

【「アフリカ地域 障害者のエンパワメントを通じた自立生活促進」研修について】

9か国から10名の研修員

車椅子、クラッチ、視覚障害などの障害当事者研修員を対象に8月19日から9月12日まで行われています。
研修員は日本及びタイでの障害者の自立生活の制度及び発展の経緯について学び、自国でも障害を持つ人たちが自立した生活を送れるようになることをめざし研修を受けています。今年は、ベナン、エスワティニ、エジプト、マラウイ、ナイジェリア、セネガル、スーダン、南アフリカ、ジンバブエから10名の研修員が学びを深めています。

【サイドイベントで繋がった、帰国研修員と現研修員達とそれぞれの思い】

基調講演 ムッサ・チワウカ氏

パネルディスカッションで発表する研修員

サイドイベントでは2011年度の本研修の帰国研修員ムッサ・チワウカ氏(南部アフリカ障害連合事務局長)をマラウイから招聘し、基調講演をいただいた後、研修員3名(ナイジェリア、セネガル、ジンバブエ)がパネリストとして登壇し、パネルディスカッションを行いました。

ムッサ氏は、「誰も取り残されない社会」の実現には障害当事者の運動や人材育成などの機能強化も必要だが、行政と連携をしていくことが大切であると語りました。
また、すべての人が暮らしやすいインクルーシブな社会実現のためには、人々が多様性に価値を見出すことが大切であるとも述べています。全ての人が暮らしやすい社会を作るにはSDGs(持続可能な開発目標)が実現されるよう、障害当事者団体がきちんとモニタリングをし、行政に提言していくことが大切であると訴えました。

それに続いてナイジェリアのヘレンさん(女性省リハビリテーション部ソーシャルワーカー、視覚障害)が自己紹介を兼ねてナイジェリアの現状について発表を行いました。緑内障で失明したヘレンさんは現在ソーシャルワーカーとして働いています。ナイジェリアには適切な移動手段がなく、どこへでも安全に行くことができない、またできたとしてもその手段は限られていると話してくれました。
また、ナイジェリアの女性障害者たちは教育の機会が十分ではなく、家族では最下位として見られ、結婚など様々な問題を抱えている上に、虐待されている人たちもたくさんいるとのことでした。日本に来て驚いたのは重度の障害を持っている人たちが社会に出て暮らしているということだと発表してくれました。

次にセネガルのムッサさん(セネガル障害者連合事務局長、視覚障害)がセネガルの現状を報告してくれました。網膜色素変性症でほとんど目が見えていないムッサさんはコミュニティーの中でいろいろな経験をしてきたそうです。日常生活では障害者は同情される対象であったり、過保護にされたりと生活しづらい状況が続いたそうです。
また、視覚障害者への情報保障や移動などセネガルには多くの課題が残っていると話してくれました。それを変えていくのはやはり当事者の声であること、政府に自分たちのニーズを訴えることが必要であると発表しました。

最後はエスワティニのシッポさん(障害者団体連合所属団体長、下肢障害)からの発表でした。 シッポさん自身、結婚し自宅で家族とともに自立した生活を営んでいます。エスワティニの人口の20%は障害を持つ人であると語ってくれました。シッポさんの組織では市民が特に障害者であっても最大限の権利を享受できるように取り組みを続けているそうです。
その結果、障害部門が副総理府の下にできました。そして全国障害活動計画が策定され、障害当事者団体と政府が協力して障害者が地域で自立生活を営めるよう取り組んでいるとのことでした。しかし、このように活発に活動していてもエスワティニでは多くの重度障害者が地域から取り残されているという現状も発表してくれました。

【より重度な障害を抱える人たちへの思い】

思いを語る研修員

3人の研修員が共通に思いを寄せていたのは自分より重度な障害を持つ人についてでした。彼らは日本に来て初めて盲聾の人、家族以外の介助者に介助を受けながら生活する人、知的や精神に障害を持つ人等いろいろな重度障害者の生活を知りました。
自分たちの国でもより重度な障害者が地域で暮らせるようになることが重要だと3人は語りこのパネルディスカッションは終了しました。彼らがこの経験を自国に持ち帰り活躍することを期待しています。
研修は9月7日からタイに移り、まだまだ続きます。

事業・研修の概要

研修期間:2019年8月19日から9月7日
タイ在外補完研修:9月7日から9月12日
研修タイトル:アフリカ地域 障害者のエンパワメントを通じた自立生活促進
参加国:ベナン、エスワティニ、エジプト、マラウイ、ナイジェリア、セネガル、スーダン、南アフリカ、ジンバブエ
参加人数:10名
報告者:人間開発・計画調整課