日本から世界を考える~インターンが見た教師海外研修~

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今年度は教師海外研修の海外研修を行うことができませんでした。そのため、日本国内で国際協力・多文化共生を考える研修を実施しました。

2020年9月24日

8月30日、これから実践する授業を検討する研修をインターンが密着取材しました。

長田のっこ
上智大学総合人間科学部教育学科3年

広瀬奈美
慶応義塾大学法学部政治学科

はじめまして!JICA東京市民参加協力第一課にてインターンをさせていただいております広瀬奈美、長田のっこと申します。
私たちはインターン生としてJICA東京市民参加協力第一課が行う教師海外研修をはじめとした開発教育支援事業に携わらせていただいています。
今回は、私たちが参加した教師海外研修(代替国内研修)についての報告をさせていただきます。

イチニツイテ。日本における国際協力に目を向けて

JICA東京での集合写真

鶴見での研修

JICA東京の教師海外研修に参加された教員の皆さんは、7月からオンラインでのセッションや国内視察を重ねてきました。
オンライン研修では、アカデミックな講義や過年度参加者による授業体験のほか、ザンビアやパラグアイに関連する実践について知りました。後半は国内視察を行い、鶴見地区での多文化共生、遺構荒浜小学校(オンライン)での震災復興、丸森町での草の根技術協力などについて知りました。

ヨウイ。授業研究

これまでのオンラインセッション、国内視察を踏まえて、先生方には授業案を作成していただきました。そして、8月30日(日)には先生方がそれぞれ作成した授業案シートを持ち寄りJICA東京に集まりました。新潟から参加された先生方はオンラインでの参加になりました。

印象に残った一枚の共有

「印象に残った一枚」の共有
最初に、先生方が研修の中でそれぞれが最も印象に残った写真や画像を共有しました。その中で特に心に残っているのが、東京都立大島海洋国際高等学校の陣野俊彦先生の撮った写真です。陣野先生は鶴見駅にある時計の下に書かれた、「みなさんお元気で」という言葉を切り取っていました。日本で労働していた朝鮮の人々が帰るときに残した言葉ですが、この言葉と今日本で生じているヘイトスピーチの矛盾を感じたということ、そして差別を止められるような教育ができているのかという先生の言葉が印象的でした。

また、千葉県立市川工業高等学校の菅原唯先生と八丈町立三根小学校の大平要先生は、お二方とも鶴見地区で撮った避難案内の写真を印象に残った一枚として選び、避難案内の表記に漢字が多く使用されていてわかりにくいため外国にバックグラウンドを持つ人にもわかりやすいものにした方が良いのではという指摘をされていました。普段何気なく見過ごしてしまうものからも、多文化共生の課題が浮かび上がってくるということがとても印象的でした。

授業案の検討中

埼玉県立鳩ヶ谷高等学校
吉田大佑先生の授業資料

授業実践案シートを活用した授業案の検討
研修を通して考えた授業案をグループ内で説明し、先生方同士で意見交換を行いました。世界史のテーマごとに学んで思ったことを詩にしていく授業や、UNIQLOの「届けよう 服の力プロジェクト」と合わせて難民問題を自分ごととして学んでいく授業など、興味深い授業案がたくさんありました。

カリキュラムや教科書などの決められた枠の中で授業をつくることの難しさや葛藤を抱えながらも、児童・生徒の様子を思い浮かべながら非常に楽しそうに議論を重ねる先生方の様子からは、先生方の熱い思いを感じました。一つひとつの授業がここまで手間と時間をかけてつくられているということや、先生方の経験と知識の豊かさにとても驚きました。

オンラインでの授業案検討

午後の授業案検討

授業実践案シートを活用した授業案の検討②
午後には校種や教科、授業案のテーマが異なる先生方で構成した新しいグループが組まれ、もう1度授業案について検討しました。先生方の専門や学校のバックグラウンドが異なるからこそ生まれる新しい角度からの指摘やアドバイスなどが飛び交い、非常に深く濃い議論がなされました。この、異なるバックグラウンドをもつ先生方がひとつになって議論を深めるということは、教師海外研修のとても大きな魅力のひとつだと感じました。多様な先生方が集まるからこそ、より良い授業実践につながるのはもちろん、先生自身も想像していなかったような面白い授業が生まれる可能性があるのではないでしょうか。

インターンとして教師海外研修に参加して
今年度の教師海外研修は新型コロナウイルスの影響で国内での代替研修となりましたが、国内だからこそ、今だからこそ生まれる学びがあり、今回の代替国内研修には大きな意義があると感じました。自分たちの身近な町、すぐ近くにも多文化共生の課題があることや、世界や地域の人々と協力し合いながら活動している実践があるということを、児童・生徒たちに伝えていく非常に良い機会であり、先生方にとっても非常に充実した研修であったと思います。
さらに、今年度は教師海外研修のOB・OG教員の皆さんも参加されたことで、先生同士の間により豊かなつながりが生まれました。
この研修で得たことが、これからの社会を担っていく子どもたちに対してはもちろん、先生方や市民のみなさんまで、これからどんどんつながり、広がっていくことがとても楽しみです。

ドン!いざ、授業実践

これまでの研修を通して作った指導案をもとに、それぞれの学校で先生方は授業実践を行っていきます。私たちも実際に見学するのが楽しみです!
1月には、実践報告会が行われ、それぞれの授業実践について共有します。最後に、3月には総括研修が行われる予定です。

報告者
JICA東京 市民参加協力第一課 インターン 広瀬奈美、長田のっこ