インターンが見た!出前講座を通して見る世界

私たち、長田、広瀬は、9月と10月に行われた二つの国際協力出前講座に同行しました。生徒さんたちと一緒に講座を聴き、先生や講師の方への取材で見えてきたものとは何か。「インターンが見た」シリーズ待望の第二弾です!

2020年10月16日

インターンの取材

国際協力出前講座は、開発途上国の実情や日本との関係、国際協力の必要性について考える機会を提供することを目的として実施されています。今回私たちは、途上国での体験を基にした講義型の講座と、途上国の課題解決のために生徒たちがプロジェクトを企画する講座という二つの異なるタイプの出前講座にお邪魔しました。

<のぞき見!浦さんの出前講座>

9月14日、都立国際高等学校にて、浦輝大さんの国際協力出前講座に同行しました。私たちが同行したのは全4回講義中の2回目で、(1)人を幸せにする国際協力、(2)JICAとは?という二つのテーマに沿って、講義が行われました。

浦さんは、Xリーグのアメフト選手として活躍した後、2007年~2009年までバヌアツに体育教師として青年海外協力隊に参加、現在はJICA青年海外協力隊事務局で「スポーツと開発」の担当として勤務されています。浦さんのバヌアツでの経験をもとに、日本とバヌアツの異なる価値観や、JICAが行う国際協力の意味、現地の人の生活を踏まえた包括的な支援の大切さなどを生徒たちにお話しされました。

~インターンの気づき~幸せってなんだろう?~
今回、出前講座に参加しているのは、自らの進路に向き合う高校3年生の生徒たち。担当の先生によると、『浦さんの出前講座を聞いて心が整理され、進路の悩みがすっと落ちた』生徒もいたということでした。
出前講座を通して異なる価値観や新しい考え方、その先に見えてくる人たちと出会うことが、生徒たちに変容のきっかけをもたらす場面を垣間見たような気がしました。

浦さんのお話の中で特に印象的だったのは、こちらの価値観で途上国の生活を「かわいそう」と決めつけるのではなく、現地の人々の価値観を知り、彼らにとっての「幸せ」に寄り添った国際協力をすることが大切であるということでした。
例えば、現地の人が毎朝一時間かけて水を汲みに行くと聞くと、私たちは「大変そう」と思うかもしれませんが、現地の人からすれば満員電車に一時間ゆられて出勤する方がよほど苦痛だと思うかもしれません。
さらに、浦さんが生徒たちに「自分たちにとっての幸せとは何か」と問いかけた時に、様々な意見がでました。そのことから、同じ教室にいる自分たちの中でも、多様な幸せがあるということを、実感したと思います。

このように、他者に対する想像力の解像度をあげるということは日本国内の身近な課題を考えるときにも重要だと思います。だからこそ、高校生たちが出前講座を通して世界を知ることに意義があるのではないでしょうか。

<のぞき見!松山さんの出前講座> 

アドバイスをする松山さん

10月5日には、東京都立成瀬高等学校にて行われた出前講座に同行しました。講師は青年海外協力隊員としてルワンダで活動されていた松山匡延さんです。松山さんは、協力隊の理数科教師としてルワンダの高校に赴任され、現在は国際開発コンサルティング会社を設立されて活動されています。

成瀬高校では、探究の時間を使って、全20回のPBL授業(Project Based Learning:課題解決型学習:自ら問題を発見・解決する能力を養うための学習)を行っています。そのうち3回を出前講座として松山さんが助言や講評を行っており、私たちは2回目に参加しました。

今回の講座では、1回目7月末の講座で聞いた松山さんのルワンダでのお話をもとに、「高校生である私たちがルワンダの同世代の人たちに協力できることは何だろう」というテーマで8つのグループに分かれて、それぞれが個性豊かなプロジェクトを企画し、発表しました。質疑応答の時間には、それぞれの企画について教員や生徒、松山さんから鋭い質問やアドバイスが飛び交いました。今後は、今回発表した中から選ばれたプロジェクトを実行に移していくそうです。

生徒たち考案のロゴ
この蜂がアフリカ大陸を抱えているロゴは、校長先生の”Be a Bumblebee!”(マルハナバチのように限界を感じず、何も恐れず成長しよう)という生徒や卒業生への想いから着想を得て、生徒たちが考案したものとのこと。
今年から本格的に始まった総合的な探究の7つのプログラムにあわせて一つ一つデザインしたそうです。かわいい!

~インターンの気づき~私たちができること/やりたいことってなんだろう?~
生徒の皆さんの企画は、ルワンダの問題分析をしっかり行ったうえで自分たちにできることを様々な観点から検討されており、発表を聞いていてとても興味深かったです。中でも、自分たちの勉強法を紹介する動画を作る、メディア等を利用してルワンダの魅力を発信する、など感性の豊かな高校生ならではの企画がとても印象的でした。「私たちにだからこそできること」を考えることは、自分たち自身を見つめなおすきっかけにもなるのではないかと思い、とても素敵な授業だと感じました。また、実際にルワンダを見てきた松山さんからお話やアドバイスをもらうことで、よりリアルで深い企画になるのではないかと思います。

今回は、授業を通して生徒と先生方、講師の互いのやり取りの中で変容のなかで生まれ、このプロジェクトが作られていっている印象が強く残っています。今年から始まった授業であり、先生たちも手探りの中、一つの課題に対して、先生・生徒・講師、皆が考えながら、そして相互作用の中で自身も企画も変容させていることが伝わってきました。

どのようなプロジェクトが実践されていくのか、私たちもとても楽しみです!

生徒のプレゼンテーションの様子

これら二つの国際協力出前講座で共通して見えてきたのは、相手の置かれている立場や環境、価値観を考えることの大切さです。ついつい持ってしまう先入観やイメージのその先に、リアルな一人一人の姿があるということを、出前講座を通して知ることが出来ました。

報告者 : JICA東京 市民参加協力第一課 インターン 長田のっこ、広瀬奈美